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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

日曜日は5試合で24発!プレミアリーグ2023-24シーズンが未曽有のゴールラッシュとなった理由。

 日曜日のプレミアリーグ、凄かったですね。マンチェスター・シティとトッテナムの激闘は3-3ドロー。リヴァプールは残り10分で2-3から逆転し、10人になったチェルシーは3-2でブライトンを下しました。スタジアムに出かけて、5回もゴールシーンを目撃すれば、否応なくテンションが上がります。

5試合でトータル24ゴールという壮絶な1日について、「アスレティック」のマイケル・ベイリー記者は、「トッテナムとマン・シティとの爽快な一戦の最後に、ジャック・グリーリッシュが飛び出した瞬間、主審のサイモン・フーパーが(おそらく)誤ってアドバンテージを消してしまう笛を吹かなければ、25ゴールになっていたかもしれない」と振り返っています。

ベイリー記者によると、2023-24シーズンは未曽有のゴールラッシュで、プレミアリーグ創設以来最多となる1試合平均3.16ゴールという数字を叩き出しているそうです。ゴールの増加はここ数年のトレンドで、昨シーズンの2.85は史上2位。2021-22シーズンの2.82は、2018-19シーズンと並んで3位にランクインしています。

近年、ゴールが多いのはなぜなのか。過去最多だった前年を大きく引き離す今季のラッシュは、何が原因で実現しているのか。「ゴールが多いほど、よりよいフットボールといえるのか?」と問題提起した記者は、3つの理由を挙げています。ひとつめは、上位と下位の実力差。直近3シーズンの1位と20位の差は66ポイントで、10年前の3シーズン平均の58を大きく上回っています。

ビッグクラブと中小クラブの乖離をもたらしたのは、ペップ&クロップが推進した攻撃的なスタイルと、コロナウイルスによるパンデミックでしょう。スペイン人指揮官がエティハドに降臨した2016-17シーズンは2.8。プレミアリーグになってからの31年で、2.65以下が15回あったのですが、彼が最強チームを築いてからは1度もありません。

過去5シーズンで唯一、2.7を割った2020-21シーズンは、年明けにリヴァプールが絶不調に陥り、スールシャールが2位に食い込んだシーズンです。2人の名将が持ち込んだポゼッションサッカーとゲーゲンプレスが進化するなかで、分家のアルテタ、クレイジーなデ・ゼルビ、ファンキーなエメリといった新キャラが後を追い、とにかく攻めるリーグに仕上がったという流れです。

Are more Premier League goals than ever a good thing?(プレミアリーグで、これまで以上にゴールが増えるのはいいことなのか?)」と題された記事は、指揮官たちのコーチングスタイルや哲学の進化も原因のひとつと指摘しています。相手のプレッシングをしのぐためにGKからつなぐ戦術が主流となり、リスクとリターンの両方が高まったという話です。

「昨シーズン、ロベルト・デ・ゼルビがブライトンに来てから、プレミアリーグではこういう考え方が一歩進み、ポゼッションしながら積極的に相手のプレッシングを誘うようになった。ちなみにブライトンは、プレミアリーグの過去18試合でゴールと失点の両方を記録している。トップリーグでこの記録が最後に達成されたのは、1934-35シーズンである」

攻撃的なフットボールがメインストリームになる一方で、コロナウイルスの蔓延によって無観客試合が続いた時期に、マッチデイ収入の比率が高いクラブの財政が悪化しました。例えばエヴァートン、バーンリー、ウルヴス、レスター。インターナショナルクラスの選手に投資できないクラブが続出すれば、ハーフコートマッチが増えるのは避けられません。

そして今季は、レギュレーションの変更が対峙するクラブの均衡を崩す手助けをしています。アディショナルタイムが大幅に伸びれば、おのずと決定機の数も増えます。抗議や遅延行為に対するジャッジが厳しくなったため、22人で終わるゲームが減りました。レッドカードが30枚だった昨季に対して、2023-24シーズンは14節までで31枚を数えています。

プレイする時間が延長され、10人で戦う機会が増えれば、主力選手の疲労がより蓄積されて負傷のリスクが高まります。ファン・デ・フェンがいたら、トッテナムは直近3試合で7つも失点せずに済んだかもしれません。アリソンとロバートソンが元気だったら、得点力不足のフラムの3ゴールはなかったといい切ったら乱暴でしょうか。

日曜日のマック・アリスター、遠藤航、アーノルドのようなスーパーショットが増えるのは大歓迎ですが、負傷者だらけで守備力が落ちたチームが失点を連発するのを見ているのは楽しい時間ではありません。「アスレティック」の記者の問いに対する答えは、「ゴールラッシュの良し悪しは、増え方次第」でいかがでしょうか。

記事を読みながら調べ物をするなかで、おもしろいデータを見つけてしまったので、最後に紹介いたしましょう。2004年からの3シーズンの1試合あたり平均を見ると、2004-05シーズンは2,57、その後の2年は2.48と2.45(=プレミアリーグ史上最低)。つまり、「ジョゼ・モウリーニョが強いとリーグ全体が守備的になる」ということです。

チェルシー復帰後、優勝した2014-15シーズンも2.57と低水準。彼とアブラモヴィッチの蜜月が続いていたら、プレミアリーグは全く別な世界になっていたかもしれません。今回の記事も、フットボールのおもしろさは、必ずしも攻撃的な戦術とゴールだけではないとして、こんな言葉で結んでいます。

「ストイックな守備、コンパクトなフォーメーション、説得力のあるゴールレスドローの愛好家たちは不満を漏らしているかもしれない。ゴールがあまりにも安っぽくなれば、フットボールがその魅力の多くを失うことは否定できない。あるいは監督たちが最近の攻撃的なトレンドに順応し、守備優位の新たなサイクルに進化する可能性もある。ジョゼ・モウリーニョ2.0を見たくない人はいるのだろうか?」

「要するに、彼らがこの状況を続ける限りは、すべてのゴールを楽しもうというしかない」


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