偏愛的プレミアリーグ見聞録

モウリーニョ監督初年度のマンチェスター・ユナイテッドがプレミアリーグ6位とEFLカップ制覇だけで終われば、FAカップ優勝でシーズンを締めくくったファン・ハール監督に劣る微妙な着地となり、チャンピオンズリーグに出られないことが夏の補強に影響を及ぼしそうでした。やはり、ヨーロッパリーグを勝ちきってCL本大会のチケットを手に入れたのは、来季以降につながる大きな価値です。イギリスメディアは、マンチェスター・ユナイテッドが現在最も注目している2人のワールドクラスについて、来季はオールド・トラフォードでプレイするはずと報じています。ひとりは、アトレティコ・マドリードのストライカー、アントワーヌ・グリーズマン。そしてもうひとりは、スペインに帰ると噂されていたダヴィド・デ・ヘアです。

グリーズマンがアトレティコ・マドリードに退団を申し入れたと伝えたのは、イギリス紙「インディペンデント」とスペインの「アス」。10日前、フランスのテレビ番組にてマンチェスター・ユナイテッドに行く可能性を聞かれたフランス代表FWは、「充分ありえるね。可能性は6割だ」と、マドリードのサポーターたちを慌てさせるコメントを残しました。シメオネ監督が素晴らしい指導者であることは疑いがありませんが、何しろあの2強の国。グリーズマンにしてみれば、タイトル獲得が難しい第3のクラブに留まるより、モウリーニョ監督の下でプレミアリーグを制覇するプロジェクトのほうにより魅力を感じているのかもしれません。「インディペンデント」は、「Manchester United transfer target Antoine Griezmann tells Atletico Madrid he wants to leave」と題した記事で、ビセンテ・カルデロンのクラブがマドリードに留まるよう要請したにも関わらず、グリーズマンの意志は変わらなかったと伝えています。

アトレティコ・マドリードが設定した契約解除金は、8700万ポンド（約123億8000万円）。マンチェスター・ユナイテッドは既にキャッシュの準備を終えており、決定まで時間がかかったために出遅れた1年前のポール・ポグバ獲得の反省を活かして、6月中の契約締結をめざしているとのこと。アヤックスを破って勝ち取ったチャンピオンズリーグがなければ、バイエルン・ミュンヘンやアーセナルなど、グリーズマンに関心があると報じられているライバルクラブにイニシアティブを取られていたかもしれません。アトレティコ・マドリードのスポークスマンとグリーズマン本人は退団志願報道を否定しておりましたが、公式戦53試合26ゴールのストライカーは「自分の方向性はスポーティングアドバイザーと協議して決める」と含みを残しており、メディアの記事の迫力を打ち消すほどの強さはありません。

一方、ダヴィド・デ・ヘアの去就について報じているのは「スカイスポーツ」です。「Manchester United confident of keeping David de Gea amid Real Madrid interest（レアル・マドリードの関心のなかで、マンチェスター・ユナイテッドはデ・ヘア残留に自信）」という記事は、デ・ヘアがモウリーニョ監督のチームに幸せを感じており、チャンピオンズリーグに出場する現在のスカッドの一員でいたがっていると主張。絶対的守護神とマンチェスター・ユナイテッドの間には2年プラスオプションという契約が残っており、マーケット最終日にレアル・マドリードとの移籍話が破談になった2年前よりも強い立場にいることをクラブは自覚していると報じています。プレミアリーグでは、ロリスを擁するスパーズの次に少ない29失点。プロサッカー選手協会（PFA）のベストイレブンに選ばれたデ・ヘアがいなければ、最終ラインの整備にはもっと時間がかかっていたでしょう。

「インディペンデント」は、モウリーニョ監督のターゲットとして3人の名前を挙げています。バーンリーでブレイクしたCBマイケル・キーンの買い戻し、トリノで35試合26ゴールという出色の数字を残したアンドレア・ベロッティ、そしてグリーズマン。高額な移籍金は、ルーニーに払っていたサラリーが浮いた分をまわすのでしょうか。既に動いているマンチェスター・シティやリヴァプールと同様に、この夏のマンチェスター・ユナイテッドは早期に新戦力を押さえにいくようです。