偏愛的プレミアリーグ見聞録

ハリー・マグワイア＆カリドゥ・クリバリ。ハードマーカーがコンビを組んだら、来季プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドは優勝争いに顔を出せるのではないかと夢想していました。2019-20シーズンは29節を終えて30失点。リーグで4番めに失点が少ないチームではありますが、過去5シーズンのプレミアリーグ優勝チームの平均は30.2失点です。CBの強化によって失点を20台に抑え、ポグバの復帰とウインガーやプレーメイカーのレベルアップが実現すれば、リヴァプールの背中が見えてくるはずと考えていたのです。ところが…。

「Liverpool ‘jump ahead’ of Man Utd in Kalidou Koulibaly transfer race（リヴァプールは、カリドゥ・クリバリ争奪戦においてマンチェスター・ユナイテッドのひと足先にいる）」。イギリスメディア「ミラー」の最新記事は、クリバリ＆ファン・ダイクという鉄壁コンビが実現する可能性のほうが高いとレポートしています。デヤン・ロブレンに移籍の噂があり、マティプが負傷がちのチームがCBを獲りにくるとは思いませんでした。コロナウイルスの感染拡大によって、プレミアリーグのクラブは軒並み緊縮財政を強いられています。2シーズン連続でCLファイナルに進出した世界王者も慎重モードで、ティモ・ヴェルナー獲得に必要といわれる5200万ポンドの契約解除金を払うかどうかを検討しているものと思っていました。

なぜ、リヴァプールがマンチェスター・ユナイテッドに対して「jump ahead」となったのか。「ミラー」のガレス・ビクネル記者のレポートより、状況を整理してみましょう。ナポリのアウレリオ・デ・ラウレンティス会長は、妥当な価格のオファーがあれば、クリバリの移籍を容認すると伝えられていました。プレミアリーグに負けず劣らず、セリエAのクラブも懐事情は厳しく、4位アタランタに9ポイント引き離されているナポリは、CL出場権を失う可能性大。まとまったお金が手に入るワールドクラスを手離さざるをえない状況に陥っているようです。

長きにわたり、クリバリ獲得を目論んでいたマンチェスター・ユナイテッドに足りないのはCL出場権。残り9試合を戦ってみないと、TOP4に食い込めるかどうかわからないチームよりも、既に2020-21シーズンのチケットを持っているクラブのほうが交渉を優位に進められるというわけです。コロナウイルス蔓延の影響で、選手の市場価格は総じて下落しているようで、クリバリ獲得に必要な移籍金は4900万ポンド（約64億円）といわれています。「ESPN」のインタビューに応じたレッズOBのドン・ハッチソン氏は、これこそが最高の補強と絶賛しています。

「クリバリがリヴァプールでファン・ダイクとコンビを組んだら、タイトル獲得は間違いない。これ以上すごいパートナーシップはないだろう。プレミアリーグ以外で最高のCBはインテルのミラン・シュクリニアルだが、私の直感では彼はペップのマン・シティに加わるはずだ」「28歳というクリバリの年齢もいい。強く速く、リーダーシップもあるプレーヤーだ。クリバリ、ファン・ダイク、アリソンのトライアングルは、どんなチームも打ちのめす」

これらの話が記者の作文ではなく、事実だとすれば、マンチェスター・ユナイテッドの巻き返せるかどうかは「リヴァプールが、いつジャッジするか」にかかっています。プレミアリーグの再開前にヴェルナー獲得が決まり、即座にクリバリに集中する体制を取られたら打つ手なし。シーズン終了まで様子見が続き、マン・ユナイテッドがCL出場権を獲得できれば、情熱と資金力で上回ったほうが勝つのではないでしょうか。来季の趨勢を左右する大物の動向に注目です。（カリドゥ・クリバリ＆タクミ・ミナミノ　写真著作者/Werner100359）