偏愛的プレミアリーグ見聞録

プレミアリーグ2019-20シーズンが中断となってから、2ヵ月が経とうとしています。今季限りで契約が満了となる選手と、シーズン終了までのレンタル移籍でチームに加入した選手は、6月末までには現在のチームとの契約が切れてしまいます。ダヴィド・シルヴァやオリヴィエ・ジルーなどビッグネームの去就ももちろんですが、私が最も気にしているのは1月にやってきた2人の契約です。オディオン・イガロとパブロ・マリ。「子どもの頃からマンチェスター・ユナイテッドのファンだった」と公言しているイガロは、プレミアリーグでは未だノーゴールですが、公式戦8試合4ゴール1アシストは合格点。ガナーズでの初仕事が3月に行われたFAカップ4回戦のポーツマス戦と遅かったパブロ・マリは、プレミアリーグデビューとなったハマーズ戦でも的確な守備を披露し、2試合連続のクリーンシートを記録しています。

チームに対するロイヤリティが高い30歳のストライカーと、ビルドアップの安定感や的確なポジショニングが印象的なCBは、いずれもこのまま別れを告げたくないキャラクターです。「BBC」と「スカイスポーツ」によると、マンチェスター・ユナイテッドとイガロのレンタル契約は5月31日まで。プレミアリーグの再開は早くても6月中旬といわれており、クラブとしては2ヵ月の延長で攻撃のオプションをキープしておきたいところです。これに対して上海申華は、7月開幕予定の中国スーパーリーグに間に合うように、予定通りの切り上げを要請しているとのこと。「6月以降もイガロを使いたければ、2000万ポンド（約26億4000万円）以上を払って完全移籍に切り替えるべし」というのが彼らの主張です。

マンチェスター・ユナイテッドは、限られた時間のなかで、どんな結論を下すでしょうか。イガロが現在のペースで、あるいはそれ以上にゴールを決められるストライカーであると評価するならば、2000万ポンドは安いお買い物です。一方で、イガロを諦めて、もっと期待値の高い点取り屋を獲りにいくという判断もあるでしょう。彼のクラブに対する思いに心を動かされたサポーターとしては、「ぜひ契約しましょう」といいたいのですが、5月末までにジャッジをしなければならないという条件を呑めないといわれれば、「なるほど」のひとことでうなずくしかありません。

「可能であれば、シーズンを終えたい」。イガロを取り巻く複雑な状況をレポートした「BBC」が、ご本人の言葉を紹介しています。「フォームも調子もよかった。順調にゴールを重ねていたけど、1ヵ月以上もストップしてしまった。ベストを尽くしてきたし、またプレイできることを願っている。チームには良好な上昇気流があった。今はローンという形でここにいるので、このクラブにいられる時間がカットされるかもしれない」「クラブ、私自身、そしてすべてのフットボーラーは、好きなようにはならないということを幾度となく潜り抜けてきている。契約について考える前に、今どうするか、どうやってシーズンを終わらせるかに集中しないとね」。切ない言葉に触れると、イガロとともに素晴らしいゴールシーンと勝利を喜べる日が来てほしいという思いが募ります。

2016年にマンチェスター・シティと契約してから3つのクラブをローン移籍で渡り歩き、フラメンゴにも1年いなかったパブロ・マリについて、「ザ・サン」は「ゲームを追う旅人」と表現しています。「過去4年で5つのクラブに所属した。これもフットボーラーの人生だ。プレイしたい、よくなりたいと思ったら、毎年移籍するしかなかった」。自分らしくいられるクラブを求めていたレフティは、ノースロンドンこそが留まろうと思える場所だと語っています。「アーセナルで、自分自身を見つけることができた。とてもいい選択肢だったね。ここに残り、プレーヤーとしても人間としても成長したい。何年でもいたいよ」。アーセナルは、ニューフェイスのラブコールに応えられるのでしょうか。

「フットボールロンドン」は、「これまでの2つのゲームで、マリはアルテタがディフェンダーに求めていることをすべて遂行し、クリーンシートを達成している」「ウェストハムとポーツマスに対して、137本のパスのうち133を通した。成功率は92％で、ダヴィド・ルイスが得意とするチャンネルにたくさんのボールを集めた」と評価。アーセナルに補強資金がないからこそ、800万ポンドというバイアウト条項は手頃なオプションだと指摘しています。もっと、彼らを見ていたい！マンチェスター・ユナイテッドとアーセナルが、クラブへの愛情を隠さない新たなタレントたちを信じて、次のシーズンのリストにその名を書き加えてくれるよう願っています。