イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

エジル、ロシツキ、カソルラが動けない…アーセナルの新システム、4-1-4-1に異議あり!

大層なタイトルをつけてしまいましたが、心配性のプレミアリーグファンのささやかなおせっかいだと笑って読んでいただければ幸いです。テーマは、アーセナル。昨季はプレミアリーグ前半戦で首位に立ったガナーズの調子が上がりません。今週のチャンピオンズリーグでは、アウェイとはいえドルトムントに完敗。4倍以上のシュートを喰らうという一方的な負けゲームでした。この一戦では、ドルトムントのストロングポイントを抑える戦術がなかったことと、今季からトライし始めた4-1-4-1の新システムでエジルやラムジーが元気がないのが気になりました。新しい仕組みを創るためにはコストが必要。今のシステムも、試合を重ねていけば、それなりのクオリティに仕上がるのかもしれません。「信念の人」であり、頑固一徹オヤジのヴェンゲル監督は、おそらくこのまま走り続けるのでしょう。

アーセナルの試合内容が今ひとつであることと、ドビュッシーが負傷してバックアッパーが不足している状況を受けて、イギリスメディアがネタがないときにかます移籍ゴシップの世界でも、プレミアリーグ勢でいちばん名前が出るのは彼らのCBやセントラルMF候補のお話です。契約するクラブがないフリーの選手を狙えとCBジェペスの話題が出たこともあり、直近は、イギリス紙「メトロ」が、ロコモティフ・モスクワを退団したラサナ・ディアッラのアーセナル復帰の可能性を報じたりしています。

移籍関連は飛ばし記事も多いのですが、そうはいっても火のないところに煙は立たず、ガナーズが何らかのアクションを起こしているのは事実なのでしょう。「トップクラブでなくてもいいからプレミアリーグに復帰したかった」と語ってウエストハムに入団したソングなど、8月にもっといい選手を獲っておけばよかったのにと思いつつ、単純な駒不足は、フリーの選手獲得で解決するところもあるでしょう。しかし、ここで話題にしたいのは、「ほんとうに4-1-4-1がいいのだろうか」という、ひとつ手前のテーマについてです。結論から申し上げれば、私は「早く元の4-2-3-1に戻したほうがいいのではないか」と思っています。今のシステムがうまくいったとしても、未来が明るくみえないのです。

ヴェンゲル監督がシステムに手を入れようとしているのは、昨季のプレミアリーグ上位対決で崩壊した守備を大きな課題と捉えているからでしょう。4-1-4-1(あるいは4-3-3)に着目したのは、解説者として現地で多くのゲームを観たワールドカップで、アンカーを置いたチームが成功を収めていたのを目の当たりにしたからかもしれません。確かに、後ろを1枚増やせば、ミドルシュートやカウンターに対応しやすくなり、バイタルエリアをケアするCBの負担は減りそうです。しかしそれでも、このシステムは、アーセナルには不向きのように思えます。理由はふたつで、「アーセナルの今の顔ぶれは、4-1-4-1のための人員構成になっていない」「アンカーをおいて、前の枚数を減らしているのに、速攻やカウンターのクオリティを上げにいっているようにみえない」からです。

ひとつめでいちばん気になるのは、トップ下のない仕組みのなかでサイドに追いやられたエジルが窮屈そうにプレイしていること。前が3枚、中のMFが1枚のみとなる今までの仕組みであれば、中央に意図的にスペースを創りやすく、サイドの選手とトップ下の選手のポジションチェンジもスムーズですが、中央に2枚のセントラルMFが上がってくる今の形では、サイドの選手はプレイエリアをより限定されがちです。ここで求められるMFは、アレクシス・サンチェスやウォルコットのように、上下動や単独突破ができるサイドアタッカーと、ケディラやトニ・クロース、モドリッチのように守備の能力も高いインサイドハーフ。今のアーセナルは、アンカーにアルテタ、フラミニ、ディアビを置くと想定すれば、インサイドの候補はラムジー、ウィルシャー、チェンバレンぐらい。エジルとロシツキは完全にあぶれ、中への志向が高いカソルラもストロングポイントを発揮しづらくなります。

この状況のなかで、それでもアンカーがいる4-1-4-1のほうが守備が安定して強くなれるのだというならば、「エジルやロシツキにより守備をしてもらうようなチームづくりをする」か、「エジルやロシツキを放出してでもセントラルMFを強化する」ということになります。前者でいくとしても、ワールドクラスのパスセンスを持ったエジル、ロシツキ、カソルラを活かせるというプラスより、彼らの力を削いでしまうマイナスのほうが大きいように感じるのですが、いかがでしょうか。

そして、ふたつめのカウンターについては、先のドルトムント戦はどのみちアウェイで勝ち目は薄く、相手の戦術を逆手にとるカウンターを試す絶好の機会だったのではないかと思われますが、ヴェンゲル監督の戦術は変わらず、ポゼッション。より後ろに人数を増やしながらパスをまわせば、自陣でボールを失うリスクが格段に上がるのは自明ですが、残念ながら、実際のゲームは絵に描いたようにドルトムントのショートカウンターが炸裂する最悪の舞台となりました。クロップ監督に「永久保存版にしたい試合だった」などといわせてはいけません。

4-1-4-1を成功させるなら、縦への速いつなぎやロングボールでシンプルに決める戦術が必須ではないでしょうか。その意味では、今季チームに加入したウェルベック、アレクシス・サンチェス、ジョエル・キャンベルはいい顔ぶれです。ここまでの話をまとめると、「現在の選手たちのストロングポイントが発揮できるのは昨季までの4-2-3-1。守備の課題解決は、システム変更ではなく戦術の徹底に求めたほうがよい」「どうしても4-1-4-1を成功させるなら、エジルやロシツキ、カソルラをインサイドハーフで機能させられるようにして、カウンターを磨く必要があるのではないか」ということになります。

心配なのは、エジルとヴェンゲルさんの関係ですね。このままいくと、せっかく獲得したワールドクラスのゲームメーカーは、1年後にはプレミアリーグに別れを告げることになるのではないかと思います。この話を考えると、日本代表の4人のトップ下を思い出します。ストラカン監督の下、サイドからのゲームメイクに新境地を見出し、スコットランド最優秀選手まで獲得したセルチックの中村俊輔。3トップの右FWでの自分のプレイを開発し、フィリッポ・インザーギ監督に「選手の手本。彼の言葉をスクールで若い選手に聞かせたい」といわせるほどの信頼を得ている現在の本田圭祐。モイーズ監督にサイドに追いやられてノーゴールでシーズンを終え、プレミアリーグを去った後に「彼には信頼されていなかった」と語った元マンチェスター・ユナイテッドの香川真司。中に入るなとプレイエリアを限定され、ブランデッリ監督と袂を分かつ決断をしたパルマ・フィオレンティーナ時代の中田英寿。

いずれも不本意ながらサイドをまかされたトップ下ですが、エジルとヴェンゲル監督は、俊輔・圭祐になれるのか、香川真司や中田英寿のようにそれぞれの道へと分かれるのか。アーセナルは今、いろいろな意味で岐路に立っているのだと思います。どんなシステムにせよ、1ヵ月後のアーセナルが、エジルやロシツキの見事なパスからアレクシス・サンチェス、ウェルベック、ラムジーがゴールを量産する「強いアーセナル」となって、プレミアリーグで勝利を重ねていることを切に望みます。

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


“エジル、ロシツキ、カソルラが動けない…アーセナルの新システム、4-1-4-1に異議あり!” への4件のフィードバック

  1. プレミアリーグ大好き! より:

    ロシツキじゃなくてチャールカが付くからロシツキーだな
    2002年頃のチェコは4141で最高に面白いサッカーしてたんだけどなぁ41131みたいな感じだったけど

  2. サッカー小僧! より:

    ブログ主がマンUサポーターながら、プレミア全体をよく見ておられるこのブログ、
    ついこの前からですが、楽しく拝見させていただいています。

    自分は、グーナーですが、まったくもっておっしゃるとおりです。
    今のシステムでは、既存の選手が活かせていない、のは明白なんですが、
    監督が頑固な方であるのもわかっているので、システムを変える気もしない・・・、
    おそらく大半のグーナーが今の状況に歯がゆい思いをしている、と思います。

    自分は、選手が今まで培ってきたスタイルは変わらない、と思うので、
    やはり選手の特徴がマッチしていた昨シーズンのシステムに戻して、
    守備の負担を減らす方が無難だし、新しいシステムで選手が順応するのを
    待つより早い、と思います。
    ドルトムント戦の惨めな敗戦が、元に戻すキッカケになることを切に願っています。

  3. リバサポ より:

    アラゴネスのスペインも使ってましたね。お世辞にも機能しているとは言えませんでしたが。ただ、アンカーに超人セナとゲームをコントロールするシャビのおかげでなんとか弱点を隠せていましたが…
    やはりアンカー脇のスペースを使われやすい、このシステムだとフラミニひとりにかかる負担は尋常じゃないですし、アルテタだとそもそも守備力が…チェンバースあたりも適正がありそうですけど、後ろの枚数が…
    苦しいですね。

  4. makoto より:

    プレミアリーグ大好き!さん>
    おもしろかったですよね、チェコ。ブリュックナー監督の頃ですね。

    サッカー小僧!さん>
    ありがとうございます。昨日の試合では、適材適所が一歩進んで、少し光がみえてきましたね。

    リバサポさん>
    3センターのポジション取りと距離感など、機能させるのが難しいんですよね。2010年の日本代表のように、引いてカウンターと覚悟を決めてしまえば、まだ楽なのですが…。

コメントを残す