偏愛的プレミアリーグ見聞録

キックオフから10分、ウーデゴーアの浮き球がサカに通った瞬間、アーセナルの勝利が決まったといっても大げさではないでしょう。キレキレだった7番が柔らかいトラップで足元に落とすと、レキクが後ろからプッシュして倒してしまい、PK。ここから9分で4発という怒涛のゴールラッシュが始まりました。

毎年恒例のエミレーツカップ。プレミアリーグでTOP4をめざすアーセナルにとって、昨季ラ・リーガ4位のセヴィージャは、開幕前の仕上がりをシビアにチェックできる難敵だったはずです。ガブリエウ・ジェズスとジンチェンコは、初めてのホームゲーム。序盤から積極的に攻めていたガナーズの先制点は、8人が戻っていたセヴィージャに対して、7番と8番だけで仕掛けた速攻がきっかけでした。

GKブヌの逆を突くサカのPKが、ゴール左に決まって1-0。13分の2点めは、ガブリエウ・ジェズスの素晴らしいランによるファインゴールでした。ベン・ホワイトのサイドチェンジを左サイドで受けた9番は、前方に走り込んだジャカに縦のスルーパスを通すと、一気にゴール前にスプリント。フリーでボックス左に入ったセントラルMFのグラウンダーをGKが弾くと、こぼれ球が出る場所がわかっていたかのように、難なく左足でプッシュしました。

エミレーツで初ゴールをゲットしたジェズスは、2分後に完璧な一撃で勝負を決めました。リスタートのボールを左サイドで受けたのはマルティネッリ。カットインした11番は、ファーで裏を狙っていたジェズスを見逃しませんでした。ゴール前で足元に落ちる弾道は、彼の真骨頂。要求していた場所に最高のボールをもらったストライカーのスライディングボレーが、左のサイドネットに突き刺さりました。

とどめの4点めは19分。バックパスを受けたGKプヌが左足で蹴ったボールが、ボックス左に詰めたサカの足元に転がってしまいました。ダイレクトショットを触ったプヌが後ろに逸らし、4-0。大差がついてから、ようやく攻める時間を得たアウェイチームはフィニッシュの精度が低く、ラムズデールが慌てるシーンはありません。

40分のウーデゴーアのFKは、トーマスの頭にぴったりでしたが、ヘディングシュートはGKの正面。42分、ジャカとのワンツーから放ったジェズスのシュートはプヌがセーブし、リバウンドを制したウーデゴーアのボレーもGKが外に弾き出しました。

前半終了間際にマルティネッリがGKと1対1になったシーンは、ウーデゴーアが縦に出したスルーパスが生んだチャンス。11番のラストタッチが外に流れたためコースが狭まり、右足のシュートはプヌが体に当てました。

後半に入ってから、セットピースで危険なシーンがありましたが、開幕前に守り方をチェックできたのはポジティブなことです。61分にジェズスに通った速い縦パスは、さすがトーマス。ストライカーの右足シュートは、惜しくも左に切れていきました。68分にトーマスがゴール前に浮かしたボールをダイレクトで叩いたのは、グラニト・ジャカ。彼の高いポジションも、昨シーズンからの変化のひとつです。

77分にCKの混戦から左足で押し込んだのは、またもジェズス。エミレーツの初戦で達成したハットトリックは、グーナーの心をつかんだのではないでしょうか。88分、こぼれ球を拾ったジャカがドリブルで上がり、カウンターが発動。2対1に持ち込んだマルティネッリは無理に打たず、フリーだったエンケティアに決めさせました。

途中出場のエンケティアは、非公開だったブレントフォード戦を含む4試合連続ゴールで、プレシーズン7発。ジェエスも7ゴールを決めており、左右からのスプリントが目立ったサカとマルティネッリも上々の仕上がりです。

決定的なパスを連発したウーデゴーアの柔らかい表情と、オーバーヘッドまで披露したジャカの攻め上がりが印象的だった一戦。ハイプレスと直線的なアタックを身上とするアルテタボールは、プレミアリーグ5位だった昨季よりも鋭さを増しています。クリスタル・パレスとのロンドンダービーでも、新エースのゴールシーンを見られるのではないでしょうか。楽しみですね！