イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

「ヴェンゲル退任」は、プレミアリーグが欧州で復活に向かう潮目となるのか?

プレミアリーグは、90分間ずっと100%の力を出さないと負けてしまう。スペインなら、下位チームとのゲームでは前半にリードを奪い、後半は力をセーブする戦いができる。つまり選手は休めるということ」「イングランドでは年末年始に4~5試合戦うけど、僕らは試合がない。プレミアリーグのクラブは休みがないために、その後燃え尽きてしまう。スペインもイタリアもドイツも、ウインターブレイクがあるよね」。ガレス・ベイルが、ワールドクラスの選手が揃うプレミアリーグ勢が、なぜチャンピオンズリーグで勝てないかを問われて返したコメントです。テレビ放映権料の高騰によって下位クラブのスカッドが充実し、欧州全体のレベルの底上げもあって、「抜ける試合」がなくなったプレミアリーグのトップクラブにとって、今までは乗り越えてきたタイトなスケジュールが大きなビハインドとなっているのは間違いないでしょう。

2000年代の前半以降、プレミアリーグがわが世の春を謳歌していた頃は、ヴェンゲル監督のパスサッカーや外国人選手の青田買いにはフロンティアのアドバンテージが残っており、サー・アレックス・ファーガソンの下にはイングランドの黄金世代が揃っていました。リーグのレベルは、トップクラブが決めるものです。アーセナルやマンチェスター・ユナイテッドと切磋琢磨していたリヴァプールとチェルシーは、欧州でも当然のように上位に進出していました。フットボールの戦術が現在ほど緻密でなく、闘将と呼ばれるような選手のリーダーシップがより幅を利かし、イングランド流の当たりの強さを大陸の各国が嫌がっていた時代。つまり、ずいぶん昔のお話です。

一世を風靡したポゼッションサッカーブームが落ち着き、機能的なプレスから手数をかけずにゴール前に殺到するチームが増えてから、欧州の強豪はワールドクラスのストライカーと攻守兼備のセントラルMFに投資するようになりました。レアル・マドリードはBBC、バルセロナはMSN。イタリアではどこにも負けていなかったユヴェントスは、欧州を見据えてイグアインを獲得。イブラヒモヴィッチがカバーニを脇に追いやっていた頃は国内で無敵だったパリ・サンジェルマンは、絶対的エースを失いカバーニとルーカス・モウラしか点を取れなくなった今季は、モナコの後塵を拝しています。バルサに4-0で圧勝する快挙を果たした彼らは、ドラクスラーやディ・マリアの狂い咲きでもなければ、ファイナル進出は難しいのではないでしょうか。ファルカオ、ジェルマン、ムバッペ、カリージョ、レマルが揃い、どこからでもゴールを奪えるモナコのほうに、より可能性を感じるぐらいです。

ストライカーとクオリティの高いセントラルMFを揃える欧州の強豪に対して、プレミアリーグのクラブにはつい昨年までポゼッションサッカーの名残が色濃くあり、クロップ監督を除けばどこも基本は4-5-1でした。2列めの選手に重きが置かれ、複数のワールドクラスを前線に揃えるチームは未だ少数派。ルーニーを勘定に入れていいならマンチェスター・ユナイテッドが該当するぐらいです。下位クラブのしぶとさとタイトなスケジュールを抱えるリーグこそ、ひとりで何とかできてしまう選手が数多くのゴールを奪って「休み」を創り、よりフレッシュな状態で欧州に向かわなくてはならないにもかかわらず。クロップ、コンテ、ペップ、ポチェッティーノなど、最近やってきた監督たちには大いに期待しておりますが、彼らのチームづくりは発展途上。バルサやマドリード勢を追いつめられるようになるには、数年先を見据えた戦術の熟成とスカッドの整備に加えて、多少なりともスケジュールや対戦相手において幸運が必要になるのではないかと思われます。

こんなことをつらつら考えたのは、先ほどヴェンゲル監督の4-3-3を見たからです。前線から執拗にプレスをかけ、敵陣で奪い、少ない手数でゴールを奪うサッカー。やろうとしていたことは、いくつかの欧州の強豪が見せる速攻主体のサッカーに近かったのですが、パススピードの遅さと最終ラインの機能性にもの足りなさを感じました。アッレグリ監督がアーセナルと合意したと報じられていますが、ヴェンゲル監督は今季限りでプレミアリーグを去るのでしょうか。われわれの前には、3つの世界の可能性があるようです。ひとつは、「ヴェンゲル退任が潮目であったかのように、プレミアリーグのサッカーが変わる」。あるいは「留任したヴェンゲル監督自身が変わる」。最も可能性が低そうなのは「来季も今までと変わらないヴェンゲル監督のアーセナル」。アーセナルがタイトルを獲るために着手すべきは、ジャカ、カソルラ、ウィルシャーがより機能的に動く中盤へのシフト、アレクシス・サンチェスとエジルの引き留め、ワールドクラスのストライカーとサイドアタッカーの補強、最終ラインの守備戦術でしょう。

クラブは、どう判断するでしょうか。ヴェンゲルで変わるか、ヴェンゲルが変わるか、ヴェンゲルを代えるか。ベテラン指揮官のファンゆえの心情として、クラブがヴェンゲル監督に引き続き指揮を託し、今日の最初の50分を次のシーズンにつなげていただければと願っておりますが、ユーヴェの監督がプレミアリーグに行きたいといっているのであれば、そのチャンスを手繰り寄せることこそが早期にチームをリニューアルする最良の機会とも思います。ヴェンゲル監督と彼自身が創ったスカッドの可能性と限界をみた一戦の後、新監督招聘論になびきかけている自分に戸惑いを覚えながら、春になればおのずと答えが出る問いに対して悶々と考え込むのであります。何だか、せつないです。

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“「ヴェンゲル退任」は、プレミアリーグが欧州で復活に向かう潮目となるのか?” への7件のフィードバック

  1. 麦茶 より:

    ファンである自身としては、「あと一年ヴェンゲルを見てみたい」と言い続けてきました。まわりのファンもそんな感じでした。
    ですが、そのトーンも年々弱まってるのも事実です。
    明確に「アーセナルのために退任」を願う人もいます。
    それはそれで、ファンとして正しい姿勢なのだとも思います。
    言い訳をすると、CLで負けるのは理由がたつと思うんですよ、「スケジュールがタイトだし〜」とか「けが人が多くて〜」とか。

    個人的に悔しいのは「ふらりとやってきたイタリア人に今までのプレミアを否定されて優勝されそう」なことです。「そんなサッカーはもう通じないんですよ」と突きつけられたかのような。
    (コンテさん自身に恨みはないです。むしろ、熱くていい監督なのだろうなと思ってます。)

    それをサッカーの進化であるとか革命であるとか、盛者必衰であると言えばそれまでなんですけど。
    ただ、やっぱり悔しいじゃないですか。
    このまま退場だなんて。

    長年ファンをやっている方を尊敬します。
    こうやって、強いときも弱いときも、浮かれたり歯ぎしりをしながら、ずっとファンでいるのでしょうね。

    —–
    更新ご苦労様です。

    残忍な結果ですよね。私は今朝の試合に関してはただ勝てればそれで満足でした。既に
    2試合を通じての結果は決していたと言わざるを得ない状況でしたからね。そして前半に
    少しだけですが夢を見れました。私はそれで満足です。残念ですがこれがアーセナルの限界なのでしょう。それを受け入れないといけないと改めて思いました。

    私は現時点ですらクラブがベンゲルに辞任を迫ることはないと確信しています。過去の
    輝かしい功績を考えればベンゲルを見限ることは無理だと思うからです。しかしながらベンゲルがどう思うかは別でしょう。私はベンゲルが自らの意思でアーセナルを去ると
    以前から思っています。今季の成績に関わらずそうなると予想しています。

    そしてアーセナルがクラブとして変化を望むならばベンゲルの辞任が不可避でしょう。仮にベンゲルが留任すればアーセナルのスタイルは絶対に変わりません。慰留したのにスタイルの変化を迫ることは出来ないでしょう。それこそベンゲルへの無礼に当たると
    私は思いますよ。それはモウリーニョやベップに自らのスタイルを変えろとクラブ側が
    要求するのと同じではないでしょうか?

    だからこそアーセナルが下さざるを得ない決断は監督交代だと思いますね。そしてその決断はもう下っているのではないでしょうか?私は既にベンゲルが辞任の意向を伝えていると思うからです。

    —–
    最も可能性が高そうなのは「来季も今までと変わらないヴェンゲル監督のアーセナル」。
    次が「ヴェンゲル退任が潮目であったかのように、プレミアリーグのサッカーが変わる」。
    最も低いのが「留任したヴェンゲル監督自身が変わる」です。
    ヴェンゲルが考えを変える人ならば、このような状況になっていないからです。

    —–
    せつない……それに尽きますね。
    自分も長年ガナサポをやっていますが、色んな浮き沈みはあれ、
    理想主義のヴェンゲルのサッカーに魅せられていた一人ですので
    最後、とは決まっていませんが、一部のサポから激しい非難を受けて辞めていく姿には
    やるせない気持ちで一杯です。ハッキリいってサッカーに対する興味さえ失いかけています。

    ただ、ヴェンゲル自身が今季は最も成熟していると言い切ったチームが
    相も変わらずどころか近年稀に見る惨状で崩れていくのを見ると
    もはや熱狂的なヴェンゲル信者の私のようなものでさえフォローする言葉がありません。
    願わくばこのチームの底力を最後に見せてヴェンゲルとは笑顔でお別れしたいです。

  2. magichat より:

    個人的には、「あと1年」がベストな選択だと考えます。「あと1年」と公にアナウンスした上で、という条件付きですが。

    アナウンスすることで、選手のモチベーションを高める効果を見込んで、また引き継ぎの為の十分な時間を確保するため。来シーズンもタイトルなしでも、主力が退団したとしても。

    痛みを伴わない改革はあり得ないことは重々承知ですが、クラブ史上最大の功労者には、それなりの花道が必要です。

  3. 朱大砲 より:

    私も田仲さんと同じ意見。
    なぜベンゲルが変わるはずとブログ主様が考えたのかいまいちわかりませんね。
    もしも新しいサッカーを志向するならすでにそのタイミングは何度もあったはず。
    なにもこの2−10が最初で最大の惨敗なわけではないのですから。

    そしてベンゲル退陣が潮目であったかのように…はクエスチョンですね。
    アーセナルが最先端でリーグを引っ張っていたのはもう十年以上前の話。
    彼がプレミアリーグにもたらしている影響はもはやごくわずかなものでしかありません。アーセナルの戦術を真似しているクラブなどあるでしょうか?

    と、否定的なことを書いてきましたが唯一ベンゲルにチャンスがあるとするなら、今季はまだシティ、スパーズ、ユナイテッドとの試合を残していることです。
    ここでまた惨敗を繰り返すか、新たな可能性を示すかで続投か否かが決まってくるでしょう。私のようなベンゲル退陣派すらを納得させるには最低でも3つのうち2勝は必要です。シティに勝ってFAカップ制覇もできればなお良しですね。
    1勝2敗、あるいはそれ以下、または四位を取り逃がすとなると当然退陣してもらうべきでしょう。

  4. 60361 より:

    ベンゲル退陣派の方々へ

    ベンゲルの後任には誰が適任ですか?そしてその根拠は?

    実現するかは別として、候補もいないのに、ただ辞めろ辞めろと無責任に吠えているわけではないですよね?

  5. 60361 より:

    ベンゲル退陣派の方々へ

    ベンゲルの後任には誰が適任ですか?そしてその根拠は?

    実現するかは別として、候補もいないのに、ただ辞めろ辞めろと無責任に吠えているわけではないですよね?

  6. 朱大砲 より:

    ある程度可能性がある範囲でベストな選択肢はやはりアッレグリじゃないでしょうかね。もう少し現実味を求めるならローラン・ブランあたりでどうでしょう。
    どちらもベンゲルと同じ三度のリーグ制覇を成し遂げ、ビッククラブ、CLでの経験も十分。
    監督としての能力で見たときにも決してベンゲルに見劣りしません。
    もちろん長期政権のあとは難しいので必ず成功するとは限りませんが。

    続投派こそいったいどんなプランがあるのでしょう。
    ベンゲルにあと五年ほど続けてもらいますか?その間にタイトルはどのくらい取れそうですか?

  7. ガナユ より:

    ヴェンゲル続投派の多くは、現実的にはヴェンゲルよりタイトルを取れそうな監督がいる事は分かっていても、アーセナルの大恩人のヴェンゲルにのんとか一花持たせてやりたいって気持ちが強いんじゃないですかね。

    アーセナルにとってヴェンゲルは監督以上の存在である事は確かですから。追い出すような辞め方は見たくないですね..

    あとファギー辞めたあとのマンUの苦戦ぶりを見ると慎重になる気持ちもわかります。

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