偏愛的プレミアリーグ見聞録

「マンチェスター・シティとアーセナルは2頭の大きな馬。われわれはジャンプの仕方を学び、ミルクが必要な仔馬だ」「マンチェスター・シティはイギリスの高級車・ジャガーだ。ジャガーに仮免のプレートを付けて走るなんてできないだろう？ 」 。プレミアリーグに復帰した昨季から、何かと比喩が多いモウリーニョ監督。初年度は、自らのチームが発展途上であり、プレミアリーグで優勝をめざせるレベルには至っていないことをアピールする発言が多かったのですが、今季のコメントはより野心的です。チャンピオンズリーグのグループステージが終わった後、「スカイスポーツ」のインタビューに応えたチェルシー指揮官が今回選んだ「例え素材」はサメでした。はい。海にいるサメです。

「われわれは今、チャンピオンズリーグ優勝を夢見ることができる。昨季も結果を出し、今季は異次元のレベルでプレイできているからね。サメたちがわれわれにそれを許すのか、見てみようじゃないか。この海には何匹かのサメがいるよ。…本当のチャンピオンズリーグが今、スタートした。バルセロナ、レアル・マドリード、アトレティコ・マドリード、バイエルン、ドルトムントがいる。マンチェスター・シティ、アーセナル、チェルシー、パリ・サンジェルマン、みんなここに立っている。昨シーズンは準決勝を戦ったが、トップ4のレベルではなかった。今季のわれわれに何ができるか、見てみよう」

今季は、より攻撃的なチームにモデルチェンジしたチェルシー。プレミアリーグで34ゴールは、僅差でマンチェスター・シティをかわしてトップ。チャンピオンズリーグのグループステージ17ゴールも、参加32チーム中1位です。バイエルン・ミュンヘンやバルセロナに比べて相手関係が楽だったのは確かですが、アウェイのシャルケ04戦を0-5と圧勝した破壊力は、スペインやドイツのクラブにとっても脅威でしょう。

ゴールが奪えなかった昨季のフェルナンド・トーレスの悩みは、ジエゴ・コスタで一発解消。彼が不在でも、エトーより頼りになるドログバが穴を埋めてくれます。このうえロイク・レミーがいて、シュールレやサラーも前で使えるチェルシーのFW陣は、世界仕様の大砲3台体制となったマンチェスター・ユナイテッドのサポーターからみても、うらやましくなるほどの充実ぶり。苦しい試合でも勝ち切れるようになった今季のモウリーニョ監督が、昨季とは比べものにならないほど自信を持ってこの大会に臨んでいるのは間違いありません。決勝トーナメントの初戦の相手については、こんなコメントを残しています。

「われわれと当たる可能性があるのは5チームで、それを決めるのは抽選だ。（昨季戦った）パリ・サンジェルマンはサポーターが運命を感じる相手だろう。すべてのチームが難しい相手だ。レヴァークーゼンは典型的なドイツのチームだし、バーゼルは何度かチェルシーに勝っている」

単純な引き算をすると、「強いパリと粘り強いドイツと相性が悪いバーゼルを避けて、シャフタル・ドネツクかユヴェントスとやりたいな」というお話になりますが、胸中はどうなのでしょうか。いちサッカーファンとして、パリとチェルシーのリターンマッチを観たい気持ちが半分、3チームとも上位に進出してほしいプレミアリーグファンとして、パリはスペインとつぶし合ってくれという願望が半分…。

最後に。モウリーニョ監督の、この言葉にはまったく同感です。

「プレミアリーグのビッグクラブが生き残ってうれしいよ。私は、リヴァプールのグループステージ突破も望んでいた。イングランドのチームがこの大会で残り続けることは、プレミアリーグにとっていいことだからね」

UEFAランキングのポイントを上げて、プレミアリーグ勢が有利に戦える環境を作ってほしいという実利もさることながら、私がいちばん感じているのは「その国のトップクラブの水準が、リーグ全体のレベルに影響を与える」ということです。昨季プレミアリーグを制覇したマンチェスター・シティと今季首位のチェルシーにどんどん強くなっていただいて、それを追いかけるアーセナル、マンチェスター・ユナイテッド、リヴァプールが必死に食らいつく、となれば、プレミアリーグのサッカーはさらにおもしろくなると思います。

モウリーニョ監督、がんばってください。本ブログは毎年、決勝トーナメントの初戦の組み合わせが決まったタイミングでチャンピオンズリーグの優勝予想をしており、地味ながらバイエルン、レアル・マドリードと2年連続で的中させているのですが、今季はチェルシーを推そうか推すまいか、悩んでいるところです。アンチェロッティさんのチーム、モドリッチがいなくても強いからなぁ…。