偏愛的プレミアリーグ見聞録

「プレミアリーグに復帰したアントニオ・コンテは、トッテナムで得意の3バックを導入。マンチェスター・ユナイテッド、ブレントフォード、ウルヴズ、ニューカッスルもこのフォーメーションを採用しており、ひとつの潮流となっている」

イギリスメディア「スカイスポーツ」のピーター・スミス記者は、3バックで戦うクラブの名前をいくつか挙げた後、「このシステムが最も巧妙に機能しているのは、コンテが以前に所属していたクラブであるチェルシー」と指摘しています。2021年1月にトーマス・トゥヘルが就任した後、シーズンのラスト30試合でクリーンシートが19回！堅守に生まれ変わったチームは、プレミアリーグ19試合で25ゴールしか決められなかった攻撃が課題だったのですが、新シーズンは7試合24ゴールと明確に改善しています。

チェルシーの得点力UPについて、プレミアリーグに復帰したロメウ・ルカクの手柄というのは早計でしょう。アーセナル戦とアストン・ヴィラ戦で決めたストライカーは、その後はゴールシーンに絡んでおらず、真価を発揮するのはこれからです。スミス記者のレポートは、アタックに厚みを加えている2人のキーマンをリスペクトしています。

「Reece James and Ben Chilwell starring as Thomas Tuchel’s wing-back system helps Chelsea shine at both ends（リース・ジェームズとベン・チルウェルは、トーマス・トゥヘルのウイングバックシステムによってチェルシーの両サイドで輝いている）」。

プレミアリーグ8試合4ゴール3アシストのリース・ジェームズは、チームのトップスコアラー。キーパス15本もブルーズではNo.1です。逆サイドのベン・チルウェルは、直近のプレミアリーグとイングランド代表の5試合で4ゴール。彼らがいかに重要な存在かは、トゥヘル監督の言葉を聞けば容易に想像できます。

「われわれはウイングバックに多大な要求をする。彼らは守るべき時には守り、敵陣のボックスに入ったら攻撃しなければならない。体力的に、かなりきつい。彼らが必要な理由をできるだけ簡単にいおう。ワイドポジションに誰もいなければ、ハーフスペースでは危険な存在になれず、ハーフポジションに選手がいなければ、ワイドポジションで危険な存在になれないからだ」

アタッカーが外に張ったらボックスへ。カットインしたら、その外へ。ハドソン＝オドイ、ツィエク、プリシッチ、カイ・ハヴェルツ、メイソン・マウントらとの連携の精度が高ければ、チェルシーはファイナルサードのあらゆるスペースを押さえることができ、シュートシーンを創れるという発想です。

記事によると、今季プレミアリーグで450分以上プレイしたDFのなかで、ボックス内のボールタッチが最も多いのは26回のリース・ジェームズで、23回のチルウェルは2位だそうです。週末のプレミアリーグで彼らと戦うレスターと、来週のマンチェスター・ユナイテッドは、スプリントをさぼらないウイングバックに要注意です。