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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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ベテランの移籍と負傷者続出で選択肢なし…フランク・ランパードの初陣に思うこと。

ウィロックとネルソンを先発させたエメリ監督を直前に観ていたこともあり、フランク・ランパード監督がプレミアリーグの初陣にタミー・アブラハムとメイソン・マウントを起用したことに驚きはありませんでした。ベンチにいたのはプリシッチ、ジルー、ケネディ。彼らよりも若い2人のほうが、チームにフィットしていると判断したのでしょう。58分にプレミアリーグデビューを果たしたアメリカ代表と、2‐0とされてから登場した昨季EL得点王の出来を見た方は、新指揮官の初スタメンが若手抜擢の一択だったことに異論はないのではないでしょうか。チェルシーのレジェンドは、誰が選んでもさほど変わらない11人と妥当な戦術でビッグ6とのシックスポインターに臨み、4‐0で惨敗したのだと思います。

試合を観たクリス・サットンが、こんな言葉で指揮官の置かれている状況を表現していました。「チェルシーのボスは、地獄のような仕事のひとつだ」。元祖SASは「オリンピックのロウイング決勝をディンギーで競うようなもの」とかぶせておりましたが、スポーツをスポーツで例えることの是非はともかく、「あまりにも手駒が貧弱だった」といいたかったのでしょう。補強禁止のペナルティを喰らったクラブの苦しい台所事情について、整理してみましょう。

昨季プレミアリーグで16ゴール15アシストのエデン・アザールという大エースがレアル・マドリードに移籍。プレミアリーグやチャンピオンズリーグの勝ち方を知るガリー・ケーヒルとダヴィド・ルイスという精神的支柱も失いました。ランパード監督の眼鏡に叶わなかったドリンクウォーターはバーンリーに去り、イーサン・アンパドゥはRBライプツィヒに貸し出されています。ロフタス=チークとカラム・ハドソン=オドイの2大成長株は、アキレス腱を痛めて長期離脱。左ひざ手術のリュディガーと、コパアメリカでハムストリングを痛めたウィリアンも開幕に間に合いません。エンゴロ・カンテはトップフォームではなく、中盤センターはジョルジーニョとコヴァチッチしか選べない状態でした。

満身創痍で乗り込んだオールド・トラフォードでの一戦は、スコアは最悪でしたがスタッツは悪くありません。シュート数は11対18、オンターゲットは5対7、ポゼッション率は46対54、パス成功率は80%対84%とすべてホームチームを上回っています。ゴールポストに思い切りぶち当てたタミー・アブラハムとエメルソンのシュートが、どちらかだけでも決まっていれば、ランパード監督の新チームは快勝スタートだったかもしれません。タミー・アブラハムは気合いが入っており、中盤を仕切ったロス・バークリーはしばしばマン・ユナイテッドの中盤を混乱させていました。メイソン・マウントは、もっと積極的にシュートを打ってもいいのではないかと思われましたが、セントラルMFとCBの間に入るプレイは効果的でした。

ぎりぎりのメンバーをうまく動かし、見せ場を作っていたチームの問題は、ラシュフォードやポグバ、マルシアルに翻弄された最終ラインでした。ズマは判断力とポジショニングに難があり、数的不利に陥りがちだったアスピリクエタはいつもの冷静さを欠いていました。後半だけでカウンターから3発。2‐1なら「次戦に期待」と明るく締められたのですが、選手の精神的なダメージとサポーターの疑心暗鬼を喚起するショッキングな負け方でした。

しかしながら、この結果について、私はクリス・サットンと同様に悲観していません。「リュディガーやカンテが復帰し、クリスティアン・プリシッチがチーム戦術になじむまでは判断を下すべきではない」。守備の要が戻り、ハドソン=オドイの切れ味、ウィリアンの運動量、ロフタス=チークのパスワークといった強力な武器を使えるようになれば、チェルシーはプレミアリーグのTOP4争いに食い込んでくるはずです。

最大の懸念は、スタンフォード・ブリッジに集まるサポーターとドライなオーナーの忍耐力ではないでしょうか。「ランパードには時間が必要だが、ここにいるのはマネージャーに時間を与えないオーナーだ。チェルシーが8位、9位…あるいは10位になったら、来季はランパードはいない(クリス・サットン)」。16年で15人が解任・辞任となっているクラブは、若手育成と結果を両立させようとしている指揮官にどこまでチャンスを与えるでしょうか。せめて主力と成長株が全員揃うまでは、多少の取りこぼしには目をつぶってあげてほしい…。タミー・アブラハム、メイソン・マウント、ハドソン=オドイのブレイクに期待している私としては、手練れの暫定監督がベテラン重視の安全策でEL出場権確保を狙うチェルシーを見ないですむことを願うばかりです。レスター戦、楽しみにしてます!

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“ベテランの移籍と負傷者続出で選択肢なし…フランク・ランパードの初陣に思うこと。” への2件のフィードバック

  1. n より:

    そうですよね。せっかく契約延長した若手という希望があるのですから、前半で出遅れても後半伸びて光が見えさえすれば、順位は2015-16超えの10位以内であれば、、。

  2. B より:

    スタッツで勝負するわけではないのも、負けは負けなのも分かっています。ボコボコと言われるスコアなのも。しかし、それでも『希望はあった』と言いたいのです。
    90分間見ていれば明らかにユナイテッドを上回っていた時間帯もありましたし、17-18シーズンの3月にエティハドで見た試合より絶望感はありませんでした。

    …とはいえ攻撃的チームにしたいかと思えばサッリをあっさり変えた(サッリの事情もありますが)クラブなので、若手主体に変えたいかと思えばまたあっさり変えてきそうなこの流れに憂鬱感を禁じ得ません。

    負けが許されないのクラブなのでしょうがちょっと前に10位も取っていることですし笑、数年は我慢をするつもりで、もういい加減一貫性のない在り方をどうにかしてほしいところですが…!

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