2021.07.13 ユーロ2020
4バックも最後のギャンブルも空回り…ユーロ2020決勝、ガレス・サウスゲートの采配を振り返る。
トリッピアーのクロスが逆サイドに上がり、ルーク・ショーが完璧なボレーでニアを撃ち抜いたときは、フットボールの母国がついに欧州を制するのだと思いました。ユーロ2020決勝、イングランドVSイタリア。ガレス・サウスゲートのチームは、セミファイナルまでの6試合のうち、5試合をクリーンシートで終えています。ピックフォードが左に寄りすぎ、ダムズゴーに強烈なFKを決められたのが唯一の失点で、勝負強いイタリアといえどもゼロに終わる可能性は低くないと考えていたのです。
何としてもほしかった先制ゴールをあっさり手に入れたイングランドは、2点めを決めるより、リードを手離したくないという気持ちが強くなったようです。3-4-2-1だったはずの布陣は5-4-1、ときに5-5。カットしたボールをセーフティに蹴り出すシーンを繰り返し見せられていると、残り5分にタイムスリップしたような感覚に襲われます。前半の戦い方が生んだ最大のマイナス要素は、「ヤツらは余裕がない。押せば、ベタ引きしてくれる。カウンターは怖くない」と悟られてしまったことでしょう。
ルーク・ショーのゴール以外にシュートがなかったイングランドは、それでも1-0をキープしてハーフタイムを迎えました。残り45分を守り切れば、トロフィーを抱きしめることができます。フェデリコ・キエーザのミドルやインモービレのボレーに肝を冷やしたものの、デュエルで負けないカイル・ウォーカーとシュートコースを空けないジョン・ストーンズは、安心して見ていられました。昨季プレミアリーグを堅守で制した彼らの存在が、ひたすら引いてクロスを跳ね返すという戦術を有力な選択肢にしたともいえます。
後半の攻防は、見応えがありました。目の前の課題を解決するべく、必死の交代策を繰り出すリアリストだったマンチーニに対して、サウスゲートは用意してきた作戦をどこで使うかを見極めているように見えました。一方的に攻めるイタリア、67分についに同点。右からのCKがニアに入ると、途中出場のクリスタンテが頭で後ろに流します。ジョン・ストーンズが目の前でバウンドしたボールをクリアすれば終わりだったのですが、冷静なCBはキエリーニと絡んで転倒してしまいました。
イーブンの競り合いに勝ったヴェラッティがヘッドでプッシュ。ピックフォードが弾けなかったボールがポストに当たると、跳ね返るコースを読んでいたかのように走り込んできたボヌッチが、左足で蹴り込みました。サウスゲート監督が失敗したのは70分。幸運に救われたのは82分。トリッピアーをサカという4バックシフトは、左にまわって脅威になっていたフェデリコ・キエーザにスペースを与える暴挙だったと思います。
4-2-3-1から、74分にデクラン・ライスをヘンダーソンに代えて4-1-4-1。目の前で起こっていることよりも、自らの青写真にこだわっていたように見えた指揮官は、フェデリコ・キエーザの負傷というアクシデントに助けられました。85分にベルナルデスキが入ると、イングランドはボールを持てるようになりました。勝負するなら、このタイミングだったのではないでしょうか。カードは一択。攻撃の際には機能していなかったメイソン・マウントをグリーリッシュ!しかし指揮官はカードを温存し、6分の追加タイムも攻めきれずに終わりました。
リスクをとって勝ちにいくよりも、負けないことを選んだ監督は、終了直前に危険な賭けに出ました。イタリアのCKなのに、カイル・ウォーカーとヘンダーソンを下げてラシュフォードとジェイドン・サンチョ。ここで代えなければ笛が鳴ってしまい、彼らをPKで使えなくなるかもしれないと考えたのでしょう。何とか切り抜け、彼らにPKを蹴らせることには成功したのですが、彼らがPKを失敗してしまいました。11メートルからのキックミスまで、指揮官の責任とするのは酷ですが、もう少し早い時間からウェンブリーの空気に慣らしてあげていれば、違う結果もあったかもしれません。
守備は素晴らしかったイングランドは、ゴールを奪うためのオプションに乏しいチームでもありました。サウスゲート監督のチームづくりは、少数精鋭でプレミアリーグを戦い抜くウルヴスのようでした。明確に役割を与えられていたのは、この日のスタメンとグリーリッシュ、サカ、ヘンダーソン、タイロン・ミングスのみ。15人で戦うチームでは、思い切った戦術で状況を打開することはできず、チェンジかステイかの二択となるシーンで、大半がステイでした。
16人めと17人めが外して敗れたPK戦に、チームの限界を感じました。サウスゲートらしく勝ち、サウスゲートらしく敗れたユーロ2020…ワールドカップでトロフィーを手に入れたければ、23人で戦えるチームに変わらなければなりません。(ガレス・サウスゲート 写真著作者/Антон Зайцев)
何としてもほしかった先制ゴールをあっさり手に入れたイングランドは、2点めを決めるより、リードを手離したくないという気持ちが強くなったようです。3-4-2-1だったはずの布陣は5-4-1、ときに5-5。カットしたボールをセーフティに蹴り出すシーンを繰り返し見せられていると、残り5分にタイムスリップしたような感覚に襲われます。前半の戦い方が生んだ最大のマイナス要素は、「ヤツらは余裕がない。押せば、ベタ引きしてくれる。カウンターは怖くない」と悟られてしまったことでしょう。
ルーク・ショーのゴール以外にシュートがなかったイングランドは、それでも1-0をキープしてハーフタイムを迎えました。残り45分を守り切れば、トロフィーを抱きしめることができます。フェデリコ・キエーザのミドルやインモービレのボレーに肝を冷やしたものの、デュエルで負けないカイル・ウォーカーとシュートコースを空けないジョン・ストーンズは、安心して見ていられました。昨季プレミアリーグを堅守で制した彼らの存在が、ひたすら引いてクロスを跳ね返すという戦術を有力な選択肢にしたともいえます。
後半の攻防は、見応えがありました。目の前の課題を解決するべく、必死の交代策を繰り出すリアリストだったマンチーニに対して、サウスゲートは用意してきた作戦をどこで使うかを見極めているように見えました。一方的に攻めるイタリア、67分についに同点。右からのCKがニアに入ると、途中出場のクリスタンテが頭で後ろに流します。ジョン・ストーンズが目の前でバウンドしたボールをクリアすれば終わりだったのですが、冷静なCBはキエリーニと絡んで転倒してしまいました。
イーブンの競り合いに勝ったヴェラッティがヘッドでプッシュ。ピックフォードが弾けなかったボールがポストに当たると、跳ね返るコースを読んでいたかのように走り込んできたボヌッチが、左足で蹴り込みました。サウスゲート監督が失敗したのは70分。幸運に救われたのは82分。トリッピアーをサカという4バックシフトは、左にまわって脅威になっていたフェデリコ・キエーザにスペースを与える暴挙だったと思います。
4-2-3-1から、74分にデクラン・ライスをヘンダーソンに代えて4-1-4-1。目の前で起こっていることよりも、自らの青写真にこだわっていたように見えた指揮官は、フェデリコ・キエーザの負傷というアクシデントに助けられました。85分にベルナルデスキが入ると、イングランドはボールを持てるようになりました。勝負するなら、このタイミングだったのではないでしょうか。カードは一択。攻撃の際には機能していなかったメイソン・マウントをグリーリッシュ!しかし指揮官はカードを温存し、6分の追加タイムも攻めきれずに終わりました。
リスクをとって勝ちにいくよりも、負けないことを選んだ監督は、終了直前に危険な賭けに出ました。イタリアのCKなのに、カイル・ウォーカーとヘンダーソンを下げてラシュフォードとジェイドン・サンチョ。ここで代えなければ笛が鳴ってしまい、彼らをPKで使えなくなるかもしれないと考えたのでしょう。何とか切り抜け、彼らにPKを蹴らせることには成功したのですが、彼らがPKを失敗してしまいました。11メートルからのキックミスまで、指揮官の責任とするのは酷ですが、もう少し早い時間からウェンブリーの空気に慣らしてあげていれば、違う結果もあったかもしれません。
守備は素晴らしかったイングランドは、ゴールを奪うためのオプションに乏しいチームでもありました。サウスゲート監督のチームづくりは、少数精鋭でプレミアリーグを戦い抜くウルヴスのようでした。明確に役割を与えられていたのは、この日のスタメンとグリーリッシュ、サカ、ヘンダーソン、タイロン・ミングスのみ。15人で戦うチームでは、思い切った戦術で状況を打開することはできず、チェンジかステイかの二択となるシーンで、大半がステイでした。
16人めと17人めが外して敗れたPK戦に、チームの限界を感じました。サウスゲートらしく勝ち、サウスゲートらしく敗れたユーロ2020…ワールドカップでトロフィーを手に入れたければ、23人で戦えるチームに変わらなければなりません。(ガレス・サウスゲート 写真著作者/Антон Зайцев)
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正直、イングランドがゴールを決めたとき勝つんだなと思いました。
しかし、余裕を持って球回しをし出すと、マコトさんの仰る通りデンマーク戦の延長後半の様な戦いを観ているようで、これは良くないぞと思ってました。
ライスが必死にボールを前に運んでも前線とくにケインとは合わなかったな。選手たちの気持ちや方向性が定まっていない感じがした。
1点リードのまま2点目をしっかり取りに行ってれば、たとえ同点にされても勢いや体力、控えの層など有利だったはず。
PK戦直前のイタリアの元気の良さに比べイングランドの選手達は虚ろで、悲しいかな監督の消極的な采配が優勝を逃した原因だと思ったよ。
それに比べマンチーニは出す手立ては全て打ち、故障者以外は先手先手で交代カードを切って控えも含めて選手に100%の力を発揮させたのではないかな。充実したそして楽しんだ勝利だね。