偏愛的プレミアリーグ見聞録

2023-24シーズンのカラバオカップの決勝は、2年前と同じカードとなりそうな雲行きです。セミファイナルのホーム＆アウェイは、ミドルズブラVSチェルシー、リヴァプールVSフラムとなりました。プレミアリーグで10位に沈むポチェッティーノ監督にとっては、スパーズで成しえなかった戴冠のチャンス。アーセナルと首位を争うクロップ監督が勝てば、マージーサイドで獲得する8つめのタイトルです。

2022年2月のウェンブリーで、11-10のPK戦という死闘を繰り広げた両者は、対照的な勝ち方でベスト4進出を果たしました。ニューカッスルをスタンフォード・ブリッジに迎えたチェルシーは、16分にミスを連発して失点を喫してしまいます。右からのクロスを逆サイドで拾ったコルウィルがカイセドにミスパス。センターサークルの脇で拾ったのはカラム・ウィルソンです。

ドリブルで単独突破を図るストライカーに、チアゴ・シウヴァとバディアシルが対応。コンビで奪って終わりかと思いきや、39歳のベテランは出した足がボールに触れずに抜かれ、体を入れてキープしたバディアシルは体勢を崩して奪われてしまいました。GKペトロヴィッチは何もできず。ビハインドを背負ったチェルシーは、攻め立てながらも決められず、90分を消費しました。

右サイドのマロ・グストがクロスを入れたのは92分。トリッピアーの仕事はクリアするだけでしたが、頭に当てたボールをムドリクにさらわれ、右隅に決められてしまいました。エヴァートン戦で、3つのミスがすべて失点につながったSBは、ショックを引きずっているのでしょうか。PK戦でも左に外してしまい、全員が決めたブルーズが敗戦寸前だったゲームを拾っています。

片やリヴァプールは、今季公式戦で11勝1分のアンフィールドで、ウェストハムに5-1の圧勝。サラー、アーノルド、コナテ、ルイス・ディアスがベンチスタートだったホームチームは、悠々と主導権を握って攻め続け、28分に先制しました。自陣ボックスでカットしたマヴロパノスのパスを受けたベンラーマが速攻を仕掛けようとすると、素早い出足で奪ったのはクアンサーでした。

ボックス右手前にいたショボスライにパスが通り、右足の美しいミドルが左のサイドネットに突き刺さりました。前半はシュート数11対0でレッズが優勢ながら、スコアは1-0。追加点が決まったのは56分でした。左のカーティス・ジョーンズが外にいたダルウィン・ヌニェスに預け、ボックスでリターンをもらうと、中央にいるのはショボスライだけです。

アレオラは、グラウンダーが中に入るはずと油断していたのでしょうか。シュート以外にないとジャッジした17番は、冷静にGKの股間を抜きました。3点めは71分、中央から攻め上がったコナテが左のガクポへ。マヴロパノスを中に誘って股間を狙った一撃は、左隅にまっすぐ決まる完璧な弾道でした。

77分に、ボックス左でクアンサーをかわしたボーウェンが右足のシュートをファーに収めて3-1。今季のボーウェンは、公式戦の12発のうち8つがアウェイです。3-1となった82分、自陣でカットしたこぼれ球をアーノルドがダイレクトで前線に送り、抜け出したサラーが左足で流し込んで勝負あり。84分に左から中央に持ち込んで決めたカーティス・ジョーンズは、この日2発めです。

5試合連続でスタメンの遠藤航は、ファン・ダイクの信頼を得てボールに絡む頻度が高まっており、エリオットが前を向けるパスを供給するなど、チャンスクリエイト4回を記録して60分に退いています。パスの強弱とタックルの精度という課題はあるものの、ヘンダーソンとファビーニョを失ったチームに貢献しているといっていいのではないでしょうか。

1月になれば、ジョッタ、ロバートソン、チアゴ、マック・アリスターが戻ってきます。精度が高いクロスを入れられるレフトバックの復帰で、ダルウィン・ヌニェスがゴールの感触を思い出してくれればと期待しています。フラムにはプレミアリーグで4-3の逆転勝ちと苦戦していますが、ホーム＆アウェイなら負けないでしょう。「リヴァプール2.0」は、順調に進化しています。