高級紙と専門メディアは高評価、大衆紙は課題を指摘…惜しかった!バイエルン戦の香川真司
高かったのは、スカイスポーツの7点と、高級紙テレグラフの8点。スカイスポーツは、ルーニーとGKデ・ヘアにも同じ7点をつけており、香川真司を含む3人をチーム最高としています。同様に、テレグラフも3人が8点の評価。こちらはウェルベック、ビディッチと並んで、という採点でした。キックミスなどで2回のフリーのチャンスを不意にしたルーニーや、トマス・ミュラーとロッベンをストップできずに2点を許す直接的な「担当者」となったヴィディッチが高得点というあたり、彼らの評価は少し怪しいですね。
こちらもプレミアリーグ昨季王者ではありながらも、「相手はチャンピオンズリーグ昨季優勝のバイエルン・ミュンヘン。圧倒的に格上との対戦にもかかわらず大健闘!」と、元々の期待値が低いからこその高評価、というニュアンスが見て取れます。テレグラフなどは、「キレのいいパスと俊敏な動きで今季最高のパフォーマンス」とまでいっており、劣勢のなかで、いくつかのチャンスを演出したことをプラスに受け取っているようです。
一方で、大衆紙は軒並み、平均点評価かつ辛口コメントでした。デイリー・メール、ミラー、デイリー・スターはすべて6点。「全力を尽くしたが彼本来の出来ではない」(デイリー・マール)、「攻撃参加はほとんど見られなかった」(ミラー)、「定位置確保アピールには不十分。チャンスはロングシュート1本と右からのドリブルで上げたクロスのみ」(デイリー・メール)と、香川真司が創ったチャンスが少なかったと指摘しています。シュート数25対6、パス成功数540対295と圧倒的に押された試合だったので、フラットに評価すれば、彼らの言い分も妥当でしょう。
地元紙のマンチェスター・イブニング・ニュースは、「マンチェスター・ユナイテッドの攻撃陣のなかでは脅威となったひとり」としながら、「オフサイドとなったバレンシアのゴールシーンではビルドアップで美しいプレイを披露。しかし一方では75分に速攻から3対2の状況を作ったとき、クロスをボアテングに当たてしまい、その直後にロッベンに決められて1-3となった。そういった決定力が彼我の微妙な差だった」と論評しています。
まとめるとすれば、「格上相手に途中までよくやった、という見方をすれば、香川真司もよくやったひとりとして高評価。バイエルンに圧倒的に押されたじゃん、という視点に立てば、アタックの機会が少なすぎたと不満評価」といったところでしょうか。
私が点数をつけるとすれば、大衆紙と同様の「6」(10点満点:平均点評価)。先発出場でプレイ時間も長かったこともあり、オールド・トラフォードでの初戦と比較すると昨日のほうが香川らしさは見せられたかと思います。とはいえ、ゴールにつながるプレイはできず、「運動量が多く、健闘したがヒーローになりそこねた」という見立てです。
香川真司がマンチェスター・ユナイテッドを救ったヒーローになるチャンスは3回ありました。最初は8分。ルーニーがダンテと競り合い、中央で一瞬フリーになったとき、そのすぐ脇でガラ空きの「どフリー」だったのが香川真司でした。香川は「ルーニー、気づかないかな」と欲しそうな顔をして待っていましたが、あのシーンは、SASなら手を振って「早く出せ」とアピールしていたでしょうね。ここで決めていれば、バイエルン・ミュンヘンの焦りを引き出し、実際のゲームよりも多くのカウンターチャンスがあったことでしょう。
そして2回めは、17分、中央をドリブルで攻め上がった香川からルーニーにつなぎ、左からのクロスを決めたバレンシアがオフサイドを取られたシーン。これは、瞬間の判断でスッと上がってオフサイドをとったバイエルンDF陣の勝ちでしたが、いちばん外の選手はライン全体を見渡せるので、バレンシアにも工夫の余地はあったかもしれません。そして3本目は、マンチェスター・イブニング・ニュースが指摘している75分のプレイです。クロスが抜けていれば2-2の同点、実際はブロックされたために逆襲を喰らい、手薄な中央をロッベンに崩されて1-3と、まさに「天国と地獄」。失点を「香川真司が関与」などとするのは酷ですが、ここでもヒーローになれるチャンスを活かせなかったのは事実です。
残念な結果ではあったものの、香川真司本人にとっては、次につながる経験だったのではないでしょうか。非凡なパス能力とスピード、チャンスメイクの引き出しの多さはここでもアピールできたと思います。プレミアリーグはあと5試合しかありませんが、そのうちのいくつかのゲームは、「香川真司の活躍で勝った」という結果になるものと信じています。しかし、ゴールが遠いですね。最後にプレミアリーグで1~2点獲って、気分よくワールドカップに向かっていただきたいのですが…。
ちなみに、マンチェスター・ユナイテッドのモイーズ監督は、またもや残念な記録をいくつか残してしまったようです。「1995-96年シーズン以来となるチャンピンズリーグ欠場」「今季50種類めとなる先発メンバー(これだけやって、まだ固定できないようです…)」「ドイツ勢相手にクラブ史上初の3失点」。監督、次こそはいいほうの記録達成をお願いします。今の状況では、どんな記録が作れるのかちょっと思いつきませんが。あ、「クラブ史上初めてのヨーロッパリーグ、ストレートイン」とかどうでしょう?うーん…。(アントニオ・バレンシア 写真著作者/Julia Novikova)
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