イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

アーノルドのクロス、カウンター…数字でよくわかる「リヴァプールのゴール欠乏症、5つの要因」

プレミアリーグの直近5試合で3分2敗、わずか1ゴール。17位のバーンリーに68試合ホーム無敗という偉大な記録を止められたリヴァプールは、首位マンチェスター・ユナイテッドに6ポイント差の4位という苦しいポジションに後退してしまいました。1ポイント差のトッテナムは1試合消化が少なく、2ポイントしかギャップがないエヴァートンとは2試合差。5ポイントの開きがあるアストン・ヴィラも2試合少なく、消化試合数が揃えば7位に転落する可能性があります。

クリスタル・パレスに0-7で大勝した後の、まさかの停滞。守備陣は3失点しか喫しておらず、異変が起こっているのは攻撃であるのは明らかです。スタッツをチェックしてみると、最初に目につくのはショットコンヴァージョン。複数のレポートでレッズの不振を分析している「スカイスポーツ」によると、クリスマス以降はシュート89本で1ゴールしか決めておらず、ショットコンバージョンは1.1%という悲惨な数字となっています。TOPのレスターは15.0%、19位のニューカッスルでも2.9%で、ぶっちぎりの最下位。シーズン通算ではリーグ7位の9.0%で、この5試合がいかに厳しかったかがよくわかります。

それぞれの試合の主要スタッツから見て取れるのは、ボールを持たされて苦戦していることです。全試合で、ポゼッションは65%以上。プレミアリーグNo.1の60.8%を誇るチームではありますが、70%以上が3つもあるのはいいこととはいえません。どのチームも自陣に引いてサラーとマネのカットインを警戒し、カウンターやセットピースから1発を狙ってきています。高さがないリヴァプールはクロスを跳ね返され続け、ミドルレンジからの強引なシュートが増加。14節までは1試合あたり6.8本だったオンターゲットは3.2本と激減しました。

【直近5試合のシュート・オンターゲット・ポゼッション】
プレミアリーグ15節/WBA         17/2/79%
プレミアリーグ16節/ニューカッスル   11/4/74%
プレミアリーグ17節/サウサンプトン   17/1/67%
プレミアリーグ19節/マン・ユナイテッド 17/3/66%
プレミアリーグ18節/バーンリー     27/6/72%

苦しいハーフコートマッチを強いられているとはいえ、昨季のリヴァプールもこういった接戦を確実に勝ち切ってきました。ここへきてポイントを落とすようになったのは、なぜでしょうか。考えられる要因は、5つあります。「フィルミーノを中心としたプレス&ショートカウンターの減少」「ファビーニョとヘンダーソンの最終ライン起用」「ファン・ダイクのリタイア」「アーノルドの不調」「サラーの守備」です。

レッズの武器のひとつとして、敵陣で奪取したボールをシンプルにつなぐショートカウンターがあったのですが、最近はフィルミーノのパフォーマンスが明らかに落ちており、速攻で仕留めるシーンが減りました。2019-20シーズンは、カウンターからリーグTOPの10発を決めていたのですが、今季の前半戦は3発に留まっています。開幕当初はハイラインで、時折ラインの裏に通されるパスはファン・ダイクが悠々と処理していたのですが、今は奪うエリアが後ろに下がっており、カットしたボールを前に送ったときは相手の守備ラインが出来上がっています。

ファビーニョがCBに下がったのも、前で奪えなくなった理由のひとつでしょう。中盤にはチアゴ・アルカンタラが入りましたが、今はまだフィット感を高めている最中です。「チアゴの堅実なカバーより、ファビーニョのアグレッシブなインターセプト」「チアゴのトリッキーな高速パスより、ヘンダーソンのホスピタリティ溢れるフィード」がほしいシーンが目立っています。

ショートカウンターが難しければ、サイドからのアタックでこじ開けたいのですが、昨季は素晴らしかったアーノルドのピンポイントクロスが入らなくなってしまいました。2019-20シーズンにプレミアリーグのDFとして史上最多の13アシストを記録したSBは、2アシストしか決めていません。1試合あたり10.9本は8本に減り、成功率も21%から19%に落ちています。

原因のひとつとして、劣勢になると攻撃一辺倒となるサラーの存在があると見ています。13ゴールを挙げているレフティーは、未だインターセプトゼロ。ウインガーの背後を突かれるシーンが増えれば、アーノルドは対応に追われ、思い切りよく攻め上がる回数が減ってしまいます。ヘンダーソンが右のインサイドにいてくれるときは、サラーやアーノルドが多少やんちゃでもいいのですが…。

昨季プレミアリーグで5ゴールをゲットしたファン・ダイクの不在は、セットピースからのゴールが減っただけでなく、SBやウイングにピタリと届くロングフィードの減少にもつながっています。CBのアクシデントによってファビーニョとヘンダーソンが最終ラインに下がり、中盤のプレスが弱くなったためにアーノルドへの要求が複雑化し、孤立しがちになったウインガーが焦ってミドルを連発。勝っているうちは気にならなかった小さな綻びが、ノーゴールの連続によって心理的な負担となり失敗を繰り返す「負の連鎖」にはまってしまっているように感じられます。

こんなとき、最もよく聞く良薬について、ミケル・アルテタが教えてくれました。「とにかくゴールを決め、そして勝つこと」。強かったときの自分たちを思い出し、今まで貫いてきた戦い方を徹底するだけです。FAカップのマンチェスター・ユナイテッド戦は、開き直って戦うには絶好の舞台なのではないでしょうか。リヴァプールは、今でも優勝候補です。昨季は、いや、1ヵ月前までは間違いなく最強だったのですから。


おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


コメントを残す