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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

とにかく明るいクロップ監督が、プレミアリーグ初戦で見せた「リヴァプール・3つの変化」

「難しい試合になることはわかっていた。素晴らしいスタートで、彼ら(=トッテナム)を少し驚かせた。最初の20分間はいろいろいいものを見せてもらった。多くのフルスロットルな瞬間があったけど、問題はマイボールのときだ。冷静さを欠き、少しナーバスになってしまい技術を生かせなかった」
「チームの成長には安定感が必要だ。ミニョレは素晴らしいプレイを披露してくれた。われわれはもっとよくなる。いいサッカーを見せられる。3日しかなく、改善の余地は多いけど今のところは満足している」

クロップ監督は、自らのプレミアリーグデビュー戦について、ポジティブな評価をしました。準備期間はたった3日間だったにも関わらず、ロジャース監督時代と比べて選手もサポーターにも、いくつか明確な変化が見て取れました。まず、目に留まったのは、クロップ監督が試合後に「カッコいい」と表現したアウェイサポーターです。ドイツ国旗、「信じてる!」「ユルゲンのレッズ」などのメッセージが入った赤いバナー。ホワイト・ハート・レーンに乗り込んだレッズサポーターは、われわれの想像を超える期待感と信頼感をもって、新しい指揮官を迎えたのです。最初の会見のメッセージ「懐疑心を信頼に変えたい」に、いち早く応えたスタンドの雰囲気は、クロップ監督にとって心強かったでしょう。

ピッチからは、3つの変化が感じられました。「走る」「つなぐ」「速く縦へ」。ドルトムント時代にクロップ監督と6年をともにしたグロスクロイツは、プレミアリーグ初戦の前日、リヴァプールの選手たちを脅していました。「1試合に120キロは走らされる。それがクロップの最低ラインだ」。10人が全員12キロ走るという驚異的な数字です。今季のプレミアリーグでいちばん走るチームと評価されているトッテナムは、トータルの走行距離で相手チームに負けたことがなかったそうですが、115キロ弱という結構な距離を走りきった彼らは、はじめて運動量で下回ることになりました。

ロジャース体制で最長だったのは、プレミアリーグ6節のノリッジ戦の112キロでしたが、クロップ監督の初陣は116キロ。走るレッズの象徴だったのが、「クロップ監督のポーズは演技ではない。まっすぐな人なのだろう。ラスト10分で僕らがへばっていても、タッチラインの外から彼がエネルギーを送ってくれると、まだやれるという気持ちになるよ」と語ったジェームズ・ミルナーです。ピッチに入るやいなや、短いスパンでアップダウンを繰り返していたジョーダン・アイブの動きからも、今までとは違うテンションが感じられました。

「走る」の次に印象的だったのが「つなぐ」です。リヴァプールが自陣でボールをロストするシーンが多かったのは、速い判断でボールをつなぐ姿勢を貫いていたからです。いつものアグレッシブさが鳴りを潜め、自信がなさそうなプレイに終始していたシュクルテルは、頭のなかがパンパンだったのではないでしょうか。マイボールになると、多少苦しい姿勢でも、レッズの選手たちはイーブンの勝負にならないパスを選択していました。守備の選手というイメージが強いルーカスが、球を散らす重要な役割を担っていたのもクロップ監督のスタイルなのでしょう。

前線に速くつなぐサッカーをするためには、真ん中からボールを供給するギュンドアンと、最後方から長いボールを正確にフィードできるフンメルスの役目ができる選手が必要なのだと思われます。中盤ではヘンダーソン、エムレ・ジャン、ルーカス、最終ラインではママドゥ・サコがこなれてくれば、レッズの攻撃は相当速くなるのではないでしょうか。トッテナム戦で「速く縦へ」を最も意識していたのは、今までよりもパススピードが確実に上がっていたサコでした。

最初の3日で確かな変化を見せたクロップレッズに、負傷者が帰ってくればおもしろいことになりそうです。適応力が高いスタリッジは問題なし。ポストプレーができて、アストン・ヴィラ時代はアグボンラホルやヴァイマンとのカウンターが冴えていたベンテケは大暴れするのではないでしょうか。「クロスをヘッドで決める選手」というイメージを持っている方も多いようですが、私はオールラウンダーと見ており、マンチェスター・ユナイテッド戦の見事なバイシクルが彼の技術の高さを証明しています。球離れのいいサッカーになれば、指揮官の評価が高いフィルミーノも活きるでしょう。ヘンダーソンには前後左右をつなぐハブとしての働きを期待できます。

いろいろ考えると、やはり悩ましいのはCBです。ジョー・ゴメスのリタイアは激痛で、デヤン・ロブレンは期待よりも不安が先に立ってしまいます。このポジションだけは、1月までは、安全第一の守り方でいくしかないかもしれません。トッテナム戦では、ナサニエル・クラインが高い位置を取ると、逆サイドのアルベルト・モレノが自重して中に絞り、両サイドの裏が同時に空くことがないように配慮していました。CBにも、裏を取られないようなポジショニングを徹底できれば、ひどい結果にはならないでしょう。

何かと楽しみなリヴァプールですが、いちばんいいのは指揮官が明るく、絵になることです。スパーズ戦の終盤、エムレ・ジャンのミドルシュートがわずかに外れた瞬間、大きなアクションで拍手を送ってチームを鼓舞していたクロップ監督は、サポーターに負けず劣らずカッコいい指揮官でした。ヨーロッパリーグのルビン・カザン戦をしっかり勝ちきり、次節のセインツ戦では、気持ちいいサッカーでプレミアリーグ初勝利を飾っていただければと期待しています。

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“とにかく明るいクロップ監督が、プレミアリーグ初戦で見せた「リヴァプール・3つの変化」” への6件のフィードバック

  1. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    ユナイテッドファンにも関わらず、このようなポジティブな内容を書いていただきありがとうございます。
    確かにクロップが来て間もないですが、スパーズ戦は気持ちも入ってましたし、とにかく走りプレスは全てではありませんが効いてましたね。
    怪我人が多いですが、間もなく帰ってくる選手もいるのでこれからでしょうね。
    次のホーム初陣ELルビンカザン戦が楽しみです。

  2. nyonsuke より:

    更新お疲れ様です。
    リバプールのみならずプレミア全体がクロップ監督に沸いていますね。
    主様のおっしゃるとおり、「走る」「つなぐ」「速く縦へ」はロジャース体制より強化され、クロップ監督の意図がはっきりとわかるいい試合でした。
    私がすごいと思ったのは、未完ながらもクロップの意思が3日ほどの練習で試合に表れたことです。
    前半途中までとはいえスパーズほどのチームを圧倒し、あまつさえ負けなかったのはクロップ監督の非凡さを垣間見ることができました。
    また、今まで不安定だったディフェンスも選手の距離感が改善され、ボールを奪取する位置が明確にされていたと思います。
    ますますクロップ監督には期待してしまいますが、レッズファンとして長い目で応援していきたいです。

  3. より:

    更新ごくろうさまです。

    かなり注目された試合だったと思いますが、クロップ監督は見事に変化を見せましたね。
    前半の前半だけでしたが、良いプレッシングでボールを奪ったりミスを誘ったり。
    結果的にはミニョレ様様でしたが、希望が持てました。

    後半責められましたが、なんでしょう、ベンチのクロップが映ると何か楽しい気分で観ることができました。

    怪我人が戻ってきてフィルミーノがフィットすれば年明けからはもっと楽しくなりそうな予感がしますね。
    次がセインツというのはちょっと不安ですが・・・。

  4. queen より:

    更新ありがとうございます。
    クロップの走るサッカーについて私が感じるのは、調子が悪い時やばてたときのプレーの仕方に鍵があるのではと思います。長いシーズン、必ず調子のよくないときや疲弊するときはあるもので、そういうときに省エネかつリスクマネジメントも考慮した「いい意味での手の抜き方」もチームに注入できれば、クロップのチームはもう一皮むけるかなと考えます。
    ともあれ、まずしばらくは彼らしいパワフルなサッカーを楽しみたいと思っています。

  5. パチ より:

    Mackiさん>
    最初の20分はワクワクしましたね。試合のなかでチェンジオブペースができればなおよしです。クロップ監督は「走り続けろ」なのかもしれませんが。

    nyonsukeさん>
    ナサニエル・クラインとアルベルト・モレノのバランスの取らせ方が秀逸でした。ハリー・ケインとヌジエには危ないシーンを創られましたが、サイドで頑張れたのはクロップさんのリスクヘッジあってこそだと思いました。

    ご さん>
    ベンチのクロップさん、かっこよかったですねー。スタンフォードブリッジのチャンピオンズリーグで、1点追い上げる体制に入っているときの「動的モウリーニョ」もかっこいいのですが、いい勝負です。

    queenさん>
    若手を登用して国内カップをターンオーバーで切り抜ける、といった工夫がないと、年明けにへばりそうですね。クロップ監督の「冬休みの宿題」、いや、「冬休みなしをどうするかという宿題」です。

    —–
    前回コメントした時に返事として、

    >前はベンテケが機能するのではないかと思います。中盤は、エムレ・ジャンとヘンダーソンではダメですかね?

    といただいたんですが、前は選手が戻ってくれば大丈夫だと思うんですが、自分の中でヘンダーソンは「運動量があってフリーランニングで前線に飛び出すのが上手い選手」というイメージになっていてパサーというイメージがないのですが、パスもジェラード並みに上手くなりそうですか?

    個人的に今一番リバプールのボランチに欲しいのは全盛期のジェラードで、「速く縦へ」を実行するための長短のパスに前線と絡んで飛び出していく馬力、といった能力が備わった選手がいたら面白そうだなと。

  6. makoto より:

    パチさん>
    パチさんのイメージもわかります。一方で、ヘンダーソンは、ハーフラインを過ぎたあたりから最前線にピタリと合わせるパスを結構出していて、パサーとしてもなかなかだと見ていました。ウィルシャー同様、いろいろなことができるので、楽しみな反面、使い方に悩む選手ですね。

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