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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

ルイス・ディアスとダルウィン・ヌニェスが早めたリヴァプールの最強3トップの終焉。

アフリカネーションズカップがなければ、リヴァプールはいくつのトロフィーを抱えてシーズンを終えていたでしょうか。FAカップとカラバオカップを制したものの、マンチェスター・シティと最後まで競り合ったプレミアリーグは、1ポイント足りずに2位フィニッシュ。レアル・マドリードとのリベンジマッチとなったチャンピオンズリーグは、ヴィニシウスの1発で終わりました。

国内カップをダブルで獲得したものの、3つのファイナルでは330分ノーゴール。前人未踏の4冠に最後まで迫りながら、ビッグタイトルに届かなかった理由のひとつは、モー・サラーの失速でしょう。プレミアリーグの前半戦で19試合15ゴール10アシストのエースは、アフリカから帰ってきた後は14試合7ゴール4アシスト。マン・シティ、アーセナル、トッテナムとのゲームはすべてゴールレスで、チェルシーとのFAカップ&カラバオカップも決められずに終えています。

チャンピオンズリーグを振り返ると、ミラン、ポルト、アトレティコ・マドリードと難敵揃いだったグループステージで6戦7発。インテル、ベンフィカ、ビジャレアルとクジ運に恵まれたノックアウトラウンドは、7戦1発2アシストと明らかにペースダウンしています。レアル・マドリードとのラストマッチで放った9本のうち、ひとつでもゴールラインを越えていたら…。フットボールの歴史に「2021-22シーズンのレッズは最強だった」と記されていたはずです。

プレミアリーグとCLで、リヴァプールが優勝争いの常連となったのは、サラーが入団した2017年からです。最初の3シーズンは、サラー、フィルミーノ、マネの最強3トップから誰かが抜けたときの戦い方が課題でしたが、3人とも長期離脱はなく、あっさり乗り切ってしまいました。2020年1月に南野拓実が加わり、9月にはディオゴ・ジョッタが合流。2021-22シーズンは、フィルミーノの欠場が増えてもクオリティが落ちないチームに進化しました。

あまりにも凄かったサラーのペースが落ちたとはいえ、年明けからの公式戦35試合を28勝5分2敗で駆け抜けたチームが欧州屈指の強者だったのは間違いありません。次のシーズンも、このまま走り続けられればよかったのですが…。クロップ監督は、左サイドにフィットしたルイス・ディアスと高額サラリーを要求するサラー&マネを重ね合わせて、全員30代になったフロントスリーの世代交代を意識し始めたのではないでしょうか。

サラーの週給は20万ポンド、新契約に求めていた額は週給30万ポンド(約4970万円)といわれています。リヴァプールは、残り1年となったエースと合意する前に、ダルウィン・ヌニェスに6400万ポンド(約106億円)を投じました。アドオンを入れると8500万ポンドを超えるビッグディールですが、マネを3500万ポンドで売れればOKと判断したのでしょう。

ベンフィカから来たストライカーの週給は14万ポンド。ルイス・ディアスによってマネを諦めることができたクラブは、「サラーがいなくても勝てるチーム」をめざしているように見えます。22歳のエース候補がゴールを量産したら、サラーが歩み寄らない限り、契約延長交渉は止まるのではないでしょうか。

「アスレチック」で特派員を務めるデヴィッド・オーンステインさんは、「リヴァプールのダルウィン・ヌニェス獲得は、彼らの賃金体系を尊重したものであり、モハメド・サラーとの新契約が実現しなかった理由を説明するものだ」と解説しています。レッズに残ってほしいという気持ちは変わらないのですが、高額サラリーを得てからのオーバメヤンやエジルを嘆いた者として、クラブのジャッジを批判することはできません。

3690万ポンドという激安の移籍金でアンフィールドにやってきたレフティは、リヴァプールの黄金時代を築いたレジェンドとして6年で去る。後を継いだダルウィン・ヌニェス、ルイス・ディアス、ディオゴ・ジョッタが、新たな歴史を創る…フットボールの歴史には、こう記されるのでしょう。

「ユルゲン・クロップとモー・サラーは最高の出会いであった。リヴァプールにとっては最高のコストパフォーマンスでもあった」と。


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