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「スカイスポーツ」がクロップVSロジャースを徹底分析!SAS時代と今のリヴァプールはどう違う?

プレミアリーグ昇格初年度の昨季から堅守だったワトフォードを、6-1で粉砕したリヴァプールを見て、気の早いイギリスメディアがこの話題を持ち出すだろうと思っていました。SAS(スアレス・アンド・スタリッジ)の大暴れで優勝寸前だった2013-14シーズンと今季のレッズは、どちらが強いのか。取り上げたのは、データ分析系のコンテンツが充実している「スカイスポーツ」です。「How Jurgen Klopp’s Liverpool compare to Brendan Rodgers’ Premier League runners-up(ユルゲン・クロップのリヴァプールを、プレミアリーグ準優勝のブレンダン・ロジャースのチームと比べてみる)」 と題された記事では、11節終了時点の勝ち点と順位、攻撃、走力、守備について総合的に比較しています。紹介されている数字について、まずは11月上旬までの戦績を見てみましょう。

2013-14シーズンの11節はアーセナルに次ぐ2位、今季は勝ち点1差で首位。2つのシーズンを比べてみると、スアレスとスタリッジの2トップ、ジェラード、スターリング、ヘンダーソンが中盤にいた2013-14シーズンは、さほど目立ったスタートを切っていないのがわかります。彼らが牙を剥いたのは、2014年のニューイヤーズデイからでした。4月末までの4ヵ月弱を14勝2分という驚異的なペースで過ごし、4ゴール以上が6試合という類まれなる爆発力でライバルクラブを怖れさせました。最終的なゴール数は101。50失点は気になるものの、得失点差51はチャンピオンにふさわしい数字でしたが、上には上がいました。優勝は、102ゴール37失点という秀逸な記録を残したマンチェスター・シティ。ジェラードのスリップ、3-0から追いつかれたクリスタル・パレス戦と悪夢の2週間を過ごしたロジャース監督のチームは、勝ち点2差でプレミアリーグ初制覇に届きませんでした。

【プレミアリーグ2016-17 11節終了順位】
リヴァプール 8勝2分1敗/得点30失点14、得失点差16 勝ち点26
チェルシー  8勝1分2敗/得点26失点9 、 得失点差17 勝ち点25
マン・シティ 7勝3分1敗/得点25失点10、得失点差15 勝ち点24
アーセナル  7勝3分1敗/得点24失点11、得失点差13 勝ち点24

【プレミアリーグ2013-14 11節終了順位】
アーセナル  8勝1分2敗/得点22失点10、得失点差12 勝ち点25
リヴァプール 7勝2分2敗/得点21失点10、得失点差11 勝ち点23
セインツ   6勝4分1敗/得点15失点10、得失点差 5 勝ち点22
チェルシー  6勝3分2敗/得点18失点10、得失点差 8 勝ち点21

一方の今季は、破壊力抜群のアタックで、堂々のトップ。フィルミーノ、コウチーニョ、マネが前線に揃ったクロップ監督の4-3-3について、「スカイスポーツ」は「流動的な前線の3枚と偽9番」と表現しています。サディオ・マネが6ゴール、フィルミーノ5ゴール、コウチーニョ5ゴールに加えて、ミルナーがPKだけで4ゴールを重ねているのも3トップの素晴らしさを物語っています。11試合30ゴールは、38試合に換算すると103.6ゴール。現在のペースが落ちなければ、3年前に足りなかった勝ち点3は埋められるはずです。

記事で紹介されている攻撃面の数字を見ると、1試合あたりのゴール数は2.7で同等。シュート数はSAS時代のシーズン通算17.1に対して今季は19.1、オンターゲットは6.8に対して7.8と、よりアグレッシブになっているのが見て取れます。SASだけで過半の52ゴールを挙げていた3シーズン前に対して、フィニッシュが多彩になっているのもポジティブに捉えていいでしょう。「スカイスポーツ」は、「クロップ監督のほうが多くの選手がネットを揺らしており、キープレーヤーを負傷で失っても、彼ら自身でよりよい布陣を発見できるだろう」と分析しています。

さらに走行距離とスプリント数を見てみると、ロジャースとクロップの違いは顕著になります。SAS時代は1試合あたり107.7キロ、今季は116.4キロと「走るサッカー」にシフト。スプリント数は平均492.7から593.4とより顕著で、「フルスロットル」の機会が増しています。アグレッシブなサッカーを裏付けるここまでの数字はいいのですが、懸念はやはり守備力です。11試合14失点は、38試合にすると48.3で準優勝時より低いのですが、打たれたシュート数は1試合あたり8.1から12.6と1.5倍に増えています。セットプレーでの守備が不安定で、シュートレンジでコースを開けてしまうことが多い守備陣の整備が、クロップ監督の喫緊の課題です。

His comments echo the words of Rodgers at a similar stage of the 2013/14 season.(彼のコメントは、2013-14シーズンの同時期にロジャースが語った言葉をエコーさせている)」。イギリスメディアは、改善が必要と語った2人の指揮官をこう表現しながら、3年前の失敗に学ばなければならないと結んでいます。現在の最終ラインとGKを見ていると、スリップはともかく、ドワイト・ゲイルとデラニーに10分で3発喰らってドローに持ち込まれたあの試合を再現してしまう可能性は否めません。今季プレミアリーグでは、34節に因縁のクリスタル・パレス戦が待ち受けています。古巣対決に燃えるベンテケを封じてクリーンシートを達成し、トロフィーに手が届いたとき、ワトフォード戦で鳴り響いていたこのチャントを、レッズサポーターは初めて心から歌えるのではないでしょうか。

「If we still had Suarez, he’d be on the bench.(スアレスがまだいたとしても、ヤツはベンチだぜ!)」

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“「スカイスポーツ」がクロップVSロジャースを徹底分析!SAS時代と今のリヴァプールはどう違う?” への2件のフィードバック

  1. グッチ より:

    更新お疲れ様です。

    レッズ強し、これほど早くに内容と結果が結びつくとは思いませんでした。
    今季就任した大物監督チームの停滞を考えると返す返すもクロップ監督就任のタイミングと昨季の我慢が報われた気持ちです。
    SAS時代との違いはやはりキーマンと攻撃パターンが多彩であることでしょうか。
    あのときはスアレスがスーパーすぎたこと、スタリッジが追随したことが全てでそれ以外の戦術がありませんでした。
    しかし今季はとにかく得点者が多彩であることと、誰かが欠けても補えるプランがクロップ監督とチームにあると思います。
    あとはディフェンスですが、ワトフォード戦はそこまでひどくなくカリウスはビッグセーブありハイボールの処理も的確で落ち着いてきたと思います。
    またルーカスの渋いポジショニングも光っています。
    懸案の左SBはミルナー主軸のほうがバランスはいいので冬の市場では若いバックアッパーの獲得でいいと思えてきました。
    それよりはマネの穴を埋めるワイドのアタッカーの補充のほうが必要ではと思います。
    ミルナーを上げる、エジャリアやオジョの台頭、スタリッジとオリジの2トップとかもおもしろいですが。
    なんにせよ首位浮上と今の試合内容はワクワクがとまりません。
    ぜひ念願のPL初制覇!といきたいところです。
    あ、あとジェラードの去就気になりますね・・・。
    8番は空いています、コーチ兼任プレイヤーとしての復帰とか・・・、激熱です!

    —–
    更新お疲れ様です。
    攻撃面では現状文句はありません。メンバーの組み合わせも少しずつ試しながらやれるだけの層はあると思います。
    守備は前から行く以上オープンプレーでは狩るか決められるかだと思うのでとにかく後ろ髪引かれずに潰しに行くことが生命線です、「セットプレーでは無失点」ぐらいの目標で良いと思います。それも簡単では無いですが(苦笑)

  2. makoto より:

    nyonsukeさん>
    いいコンセプト、いいオフシーズン、いい補強だったのではないでしょうか。ジョー・ゴメスがプレイできるようになれば、最終ラインの選択肢が増えそうです。ルーカスは、地味ながらチームにいてほしい選手ですね。ジェラードが戻ってきたら、私も盛り上がります(笑)

    グッチさん>
    そうですね。クリーンシートを気にするあまり、引いた瞬間に攻撃が輝きを失いそうです。

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