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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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「スカイスポーツ」の評論家が分析する「上位キラーのリヴァプールが下位に取りこぼす理由」

日曜日のプレミアリーグ28節で、リヴァプールは8月に2-0で敗れたバーンリーと対戦します。本拠地ターフ・ムーアでは9勝2分3敗と滅法強いバーンリーは、アウェイではマンチェスター・ユナイテッドとハル・シティに引き分けただけの2分11敗と未勝利。アンフィールドのサポーターを味方につけたリヴァプールの圧倒的優位が予想されるなか、下位との対戦前というタイミングだからか「スカイスポーツ」がおもしろい分析をしています。題して「Liverpool v Burnley tactics: Danny Higginbotham on Liverpool’s issues(リヴァプールVSバーンリーの戦術:ダニー・ヒギンボサムが炙り出すリヴァプールの課題)」。レッズが下位にばかり取りこぼすのはなぜか?というお話です。

まずは、数字をおさらいしましょう。今季のリヴァプールは、上位5クラブとの直接対決では5勝4分と負け知らず。先制されたのは開幕のアーセナル戦と1月のチェルシー戦のみ。圧倒的な運動量をベースとした厳しいプレスで主導権を握って敵陣での奪取から速攻を繰り出し、先にゴールを奪って押し切る形を得意としています。範囲をプレミアリーグTOP10に広げても、やはり無敗。失敗といえるのは、アンフィールドでドローに終わったウェストハム戦ぐらいで、上半分だけなら3敗している首位チェルシーを上回っています。問題は、下です。敗れた相手は、バーンリー、ボーンマス、スウォンジー、ハル・シティ、レスター。ライバルの戦績を見ると、ボトム10に敗れたのは、レスターのジェイミー・ヴァーディにやられたマンチェスター・シティと、ワトフォードに足元をすくわれたアーセナル、マンチェスター・ユナイテッドだけ。リヴァプールが唯一、上位から召し上げた勝ち点を下位に気前よく振る舞っているのです。

ユルゲン・クロップ監督は、ドルトムント時代も「強きをくじき弱きを助ける」監督でした。ブンデスリーガで優勝した2010-11シーズンは10位以上には1敗で、11位以下に4敗。連覇を果たした翌シーズンも、上位1敗・下位2敗です。相手が中盤でガチンコ勝負を仕掛けてくれば、圧倒的な走力でこれをつぶして速攻でゴールを奪取。ドイツでの集大成ともいうべき試合が、香川真司とレヴァンドフスキでバイエルン・ミュンヘンを5-2とボコボコにした2012年のDFBポカールでした。一方、しっかり引いてカウンター狙いに徹するチームと対峙すると、脇の甘さを突かれて敗れるのもクロップサッカー。バーンリーのアンドレ・グレイやレスターのジェイミー・ヴァーディは、レッズの最終ラインの綻びを見逃しませんでした。

さて、ここまでデータに基づく「取りこぼしクロップ」の確認をさせていただきましたが、いよいよ分析に入ります。「スカイスポーツ」の戦術評論家、ダニー・ヒギンボサムさんに登場していただきましょう。「リヴァプールは、プレミアリーグのthe best counter-attacking teamである」。なるほど、結論から歯切れよくいい切っていただきました。ビッグクラブと相対するときは、守備から攻撃への速い切り替えがうまくはまるというわけです。「クロップのセットアップは、ボールを支配するのに適していない。高いポゼッションは何ももたらさない。最も低かったボール支配率は、(1-0で勝利した)マンチェスター・シティとのホームゲームで43.1%だった」。おっしゃるとおり、レッズは「ボールを支配せずにゲームを支配する」チームであり、ショートカウンターで勝負するチームです。

こう考えると、1試合あたりの平均走行距離11.4キロと「最も走るセンターフォワード(実は偽物)」のフィルミーノ、速く強いマネ、崩しのアイデアが多彩でミドルシュートという武器があるコウチーニョは、よくぞ揃えたと拍手を送りたくなるクロップスタイルのジャストフィットたちです。ハーフラインより前ならどこにでも出没するフィルミーノを見ていると、このチームではベンテケに明るい未来はなかったと納得します。攻守のハブになり、キラーパスも出せるララナ、ボックス・トゥ・ボックスという新しい働き方を見出したワイナルドゥムも、もはや欠かせません。これだけ強いチームが、なぜ下位に負けるのか。ダニー・ヒギンボサムさんは、こんな表現で取りこぼしの理由を説明しています。

「彼ら(下位クラブ)はこんなふうにいうだろう。”オッケー、リヴァプール、君たちは後ろにも横にも行けるよ。ただし僕らの裏には入れないけどね”」
「SBは前に行くけど、CBはボックスから出たがらない。不安を感じさせるポジションだ」
「相手のストライカーが、CBより速いことが多い。あなたがアンドレ・グレイなら、突入しようと思うだろう」

ボールを持てば持つほど、相手の裏を取るチャンスがなくなり、カウンターを喰らう可能性が高まってしまうという指摘です。読みがよくてスピードがあるCBを入れるか、前線でボールの出どころを抑える動きをタイトにしないと、この問題は残り続けるでしょう。さらにヒギンボサムさんは、リヴァプールのフォーメーション上の問題にも言及しています。

「トッテナムやチェルシーは、3バックか4バックかに関わらず、守備的なMFが2人いる。左右のサイドを攻められたとき、ひとりが外に出て対応することができる。リヴァプールはCBとMFひとりの3人しか中にいないので、左右にスペースがある」

これは4-3-3の絶対的な欠陥という話ではなく、サイドをどう守るかというテーマですね。アンカーに関しては、攻守ともに主将ヘンダーソンのセンスに支えられているところが大きいので、彼の不在時にどういうユニットがベターなのかを探り当てないといけません。「スカイスポーツ」のレポートに付け加えるとすれば、「引いた相手の崩し方」「タイトな1月の過ごし方」も、クロップ監督に付きつけられた課題ではないでしょうか。

前者は、スタリッジ、オリギ、ダニー・イングスから2人でもシーズンを通じて機能していれば問題はなかったのかもしれません。今季は、負傷が多いスタリッジが完全に停滞してしまい、オリギは好不調の波の激しさを克服できていません。私は、オリギはいずれブレイクするはずと期待しているのですが、コンスタントにゴールに絡める選手になるまでにはもう少し時間と経験が必要のようです。スタリッジが来季も残るのかどうかはわかりませんが、大物獲得には走らなそうなクロップ監督なら、速さとヘディングの強さを兼ね揃えたマイケル・アントニオやサロモン・ロンドンのような選手をオプションとしてキープしてもいいのではないかと思います。

一方、「EFLカップ勝っちゃって年明け大変問題」のほうは、ポチェッティーノ監督が得意な若手の台頭促進、プレミアリーグ6位ながらマンチェスター・ユナイテッドが負けずに戦えているように選手層をもう一段厚くすること、ペップのように引いてカウンターという「プランB」を仕込むことのどれを選ぶかでしょう。明快なコンセプトのまま、選手をダブつかせず、すべて勝ちに行くという美学をクロップ監督が捨てなければ、プレミアリーグ優勝の難易度は高いのではないかと思います。今のまま二冠、三冠を制覇するクロップサッカーを見たい気持ちもあるのですが…。存外、アルデルヴァイレルトのようなCBと、ジエゴ・コスタのようにカウンターが得意なゴール量産タイプをひとりずつ獲れば、あっさり解決してしまうのかもしれません。これ以上続けると、話が拡散しすぎて収まらなくなりそうです。ヒギンボサムさん、興味深いアナライズをありがとうございました。

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“「スカイスポーツ」の評論家が分析する「上位キラーのリヴァプールが下位に取りこぼす理由」” への3件のフィードバック

  1. K より:

    引いた相手でもホームだと崩しててリーグ最多得点なので、格下相手にも負けるのはご指摘の通りシステム的な守備が問題です

    04-05年バルセロナもマルケス、プジョル、エジミウソンの3人守備でモウリーニョにvulnerableと笑われてましたが、
    翌年は攻撃に関与してない側のSBがポジションを下げて4人で守ってカウンター守備が劇的に改善され2冠を得ました
    右SBのレギュラーがベレッチからCBも出来るオレゲールに変わったのもこの時期のはずです

    ミルナーの疲労で左サイドの守備が崩壊した事
    チャンが中盤に入って危ない位置でのボールロストが増えた事
    サイドと中盤に控えが全く居ないのでマネが抜けて攻撃力が落ちた事
    グラウンダーのパスサッカーに頼り切って荒れた芝だと全員下手になる事
    この4点に今年の失速は集約されていて、守備の問題解決が下位対策のほぼ全てです
    (セットプレーのキッカーはあと1人は欲しいですが)

    今年は年末から2月初旬にだけ試合が集中するのに1週間に1試合分のスカッドしか用意せず、予想通りこの時期に潰れちゃいましたが、
    当初からの目標である4位以上は怪我人が出なければ達成出来そうなのでSBのポジショニングは早く修正して欲しいです…
    SBの攻撃参加は殆ど点につながってないですから特に…

  2. nyonsuke より:

    更新お疲れ様です。

    とても今のレッズがよくわかるレポートでした 笑
    明解すぎてバーンリー戦が不安になります・・・
    引いた相手の崩しは、11月くらいまではできてましたね。
    私はこの調子なら今季は優勝争い!と思ったのですが、コウチ、ヘンドの離脱から歯車が狂い始めました。
    クリエイティブな選手がこの二人しかなく、また引いた相手には精密なパス回しと絶妙な動き出しで狭いスペースをこじ開ける必要があるので、選手のコンディションと要の選手離脱が痛かったと思います。
    しかし、この一年で伝家の宝刀は磨けたわけですし、昨年さんざん言われた筋肉系のトラブルも激減し、ヨーロッパがないもののPLでもクロップサッカーが通用することは証明できたかなと思います。
    あとは、ご指摘の下位への取りこぼし、過密日程の闘い方をどうするかを残りのシーズンで垣間見ることができればと思います。
    私は夢見がちですので、クロップ監督の美学を貫き通したうえでのタイトル(三冠!?)がみたいですね。
    であれば、今季4位以内のうえ、夏の補強が鍵を握るのではと思います。
    (Kさんの仰るとおり、ディフェンスはもう少しどうにかしてほしいです・・・)

  3. makoto より:

    Kさん>
    ミルナーが悪いというわけではないのですが、左に運動量豊富で守れるSBがほしいですね。インサイドMFとウイングの動き方など、連携の約束ごとでもある程度は解決できそうな気もします。

    nyonsukeさん>
    最後に書きましたが、最前線とCBは大物狙いに走ってもいいかもしれないと思いました。強いときの姿を見ると、完成形に近づいているワクワク感はあり、あとは「層」と「軸」かと。

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