イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

猛攻及ばず…リヴァプールの弱点が垣間見えたオールド・トラフォードの95分を振り返る。

ロバートソンが速いクロスを入れ、フィルミーノがスルーし、ララナがプッシュ。リヴァプールの同点ゴールは見事でした。さすが欧州王者、プレミアリーグ首位チーム。1-1となった後の猛攻に、彼我の底力の違いをまざまざと見せつけられ、最後のCKがファン・ダイクの頭に届かないのを確認するまで冷や汗が止まりませんでした。あの一撃が、あと10分早かったら、われわれはオールド・トラフォードでプレミアリーグ18連勝というレコード達成を許していたでしょう。「BBC」をはじめ、現地メディアの個人採点は軒並みマンチェスター・ユナイテッドのほうが高かったのですが、周到に準備されたスールシャール監督の3-4-1-2に対する驚きとリスペクトが多分に反映されていたのではないかと感じました。

ラシュフォードとダニエル・ジェームズを前線に並べ、アンドレアス・ペレイラに配球をまかせたマンチェスター・ユナイテッドは、無敗で快走するリヴァプールの強さと弱点を炙り出すという貴重な役割を果たしたのではないでしょうか。相手の態勢が整わないうちに速攻で崩すのがクロップサッカーの真骨頂。連動性の高いプレスと、奪われた直後の素早い囲い込みが徹底されているゲームは、無類の強さを発揮します。アンフィールドで負けないのは、自分たちのスタイルで戦い抜くというマインドセットができているからでしょう。得意のプレスがいつも機能していれば問題はないのですが、プレミアリーグの下位クラブとの対戦やCLのアウェイゲームでは、中盤が緩慢になり受けにまわる試合を時折見かけます。

オールド・トラフォードのゲームは、マン・ユナイテッドが気合い充分だったこともあり、最初の45分を慎重モードで戦ってしまいました。ラシュフォードとダニエル・ジェームズの狙いは、SBの背後のスペース。普段のレッズなら、前線と中盤の協業による囲い込みやパスコースを消す守り方で、ロバートソンやアーノルドが戻る時間を創るのですが、オリギが荒いトラップをさらわれた36分の失点シーンは、パスアンドゴーで縦に走ったSBの裏がガラ空きになりました。

クロップ監督は、リンデロフのファールを主張しておりましたが、楔が入った直後のコンマ数秒でマクトミネイがボールを奪取しており、複数に囲まれていた状況でオリギがプレー選択を誤ったというのが妥当な評価でしょう。ラシュフォードの位置をわかっていたマティプは、アーリークロスのタイミングを読み切れず、前でカットするかストライカーを潰すかの二択に答えを出せないまま、後ろに入られてしまいました。安全を確保しながら攻める態勢が出来上がっていないうちに縦パスを奪われたために、自陣にいた5人の選手は適切なポジションを取れず、2人にやられた痛恨のシーン。プレミアリーグ首位チームは、サラーとマネが得意とする形をトレースされ、ビハインドを背負って戦うことになりました。

アウェイ仕様のよそ行きサッカーで45分を過ごしてしまい、1-0という不本意なスコアでハーフタイムを迎えたクロップ監督は、ヘンダーソンを右サイドに張らせる4-4-2にシフト。サイドの人数を担保して、左右に流れてくるマン・ユナイテッドの2トップを止めたかったのでしょう。60分にオリギをチェンバレンに代えたのは、多分に守備的な意味合いもあったのではないかと思われます。スールシャール監督もまた、レッズのサイドアタックを警戒して5-4-1を選択。安全重視のホームチームを見て、速攻の脅威が薄れたと判断したレッズの指揮官は、攻撃時に機能しなかったヘンダーソンを諦め、ララナを投入します。引いた相手を攻めあぐんだレッズは、80分を過ぎても同点に追いつけずにいました。

82分に、クロップ監督がワイナルドゥムをナビ・ケイタに代えたとき、私は落胆しました。攻撃的な選手を入れたかったという趣旨はわかるのですが、マン・シティやバルサが相手なら、今季プレミアリーグ初登場の8番ではなく、修羅場の経験豊富なミルナーを選んでいたのではないでしょうか。「もう攻められないでしょう、1-0で終わりたいのでしょう」と見透かされている…。ドイツ人指揮官が選んだ3枚めの交代カードの4分後に、ララナの同点ゴールがネットを揺らしました。プレミアリーグ17連勝のチームが、3ポイントをめざして怒涛の猛攻を仕掛けている最中には、こんなことを考えていました。最後に切りたかったカードは、ナビ・ケイタでもミルナーでもなく、シャキリだったのではないか…。

レッズの最大の弱点は、引いた相手を崩す術が乏しいことです。「相手の態勢が整わないうちに速攻で崩す」チームは、後方に引いて態勢をキープし続けられると、「前線にストロングヘッダーがいない二次元フットボール」「労働者タイプ揃いの中盤は意外性を創出できない」といったウィークポイントが露呈します。唯一シャキリだけが、狭いスペースを走るスルーパスやピンポイントの浮き球という武器を持っているのですが、ふくらはぎとかかとを痛めたレフティはこの試合に間に合いませんでした。

パスコースを切る暇を与えられずにSBの裏を突かれ、自陣にこもる5バックを崩すのに時間がかかり、猛攻モードに入ったときに最もいてほしかった絶品パサーはトップフォームにあらず…。普通のチームなら、これらを弱点とまでいうのは大げさですが、マンチェスター・シティとプレミアリーグの頂点を争うクラブであれば、課題を解決するためのアプローチを明確にしておくべきでしょう。

80年代のカテナチオを思い出させるスールシャール戦術には、未来への希望は感じられなかったのですが、現在の手駒で成し得るレッズ対策としては90点(オールド・トラフォードで後半の早い時間から引いたのはマイナス10点…)だったと思います。クロップ監督と選手たちは、今後も昨季のようにドローを増やしてしまうのか、ゴール前に停まったバスをひっくり返す技を磨き上げるのか。エキサイティングな一戦とはいえませんが、リヴァプールがプレミアリーグ制覇に辿り着けるかを占ううえでは味わい深いゲームでした。

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“猛攻及ばず…リヴァプールの弱点が垣間見えたオールド・トラフォードの95分を振り返る。” への13件のフィードバック

  1. jpjtw より:

    ユナイテッド誉めますね~笑
    これで満足してるようなら、ウッドワードと同じですよ。エヴァートン・ユナイテッドの誕生ですね。

  2. レン より:

    オリジのは残念ながら明確なファウルです。
    なのでその抗議で全体的に一歩ずつ遅れました。
    ただ両サイド裏のスペースが弱点なのは正しいかなと思いますね。両センターバックとどちらかのインサイドハーフのカバーが早いのでラッシュフォードみたいな抜群のスピードを持つ選手以外ではやられないのですが笑
    シティなんかと比べれば引いた相手には苦労しているように見えますが、変態チームを除けば引いた相手を崩せている方だと思いますよ。
    押し込めれば両サイドバックが自由になるのでね。

  3. golazo より:

    初めてコメントさせて頂きます。
    いつも楽しく読ませてもらっています。
    ユナイテッドサポなのでラッシュフォードが決めた時には心から雄叫びを上げましたが、でもやはりリバプール相手にOTでバス停をするユナイテッドに虚しさを感じています。
    ここ数年が苦しい時期なのは百も承知ですが、あの90分を観てよくやったとユナイテッドを褒める気にはどうしてもなれないのです。
    ベッカムギグス時代のサイドアタック、ルーニーテベス時代の運動量と連動性は観てて楽しいものでした。
    昔のチームを美化してはいけないのでしょうが、今の攻撃の乏しさはただただ辛いです。

  4. Kリーグ大好き より:

    マコト氏はユナイテッド褒めてませんよ。満足もしてないです。マンU対レッズリポート記事読めばわかります。

  5. プレミアリーグ大好き! より:

    スールシャール監督は勝てる試合だったと満足げなコメントを出してましたが、ファンとしては失望しかありませんでした。

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  7. 和田ピコ太郎 より:

    やはりフロントスリーとイメージを共有できるレベルの選手を補強して欲しかった。ラッシュフォードのゴールの前のプレーがファールか否か意見が分かれていますが、僕が率直に思ったのはオリギに対する怒りです。フロントスリーとレギュラーを争う気のある選手が絶対やってはならない軽すぎるプレー、ミスでした。僕的には何度見てもあんなに大げさに倒れる接触があったようには見えませんでした。マネならボールをしっかりおさめて誰が見ても妥当なファールをもらったはずです。オリギはCL優勝の立役者ですが、プレミア制覇を目指すなら今の彼ではキビシイですね。ただ、ララーナの輝きは今後に期待を持てる収穫でした。ボス、ララーナ&シャキリの出番が増やしてください!

  8. プレミアリーグ大好き! より:

    どちらのファンでもないですが、オリギの接触はあんなに大げさに倒れるほどのものではなかったようにしか見えませんでした。ボールを奪われたのはトラップが大きくなったからで、遡ってゴールを取り消す程の接触ではなかった、妥当なジャッジだったと思います。
    すぐに審判を取り囲む選手や判定に不満を露わにするクロップ、試合後に審判や相手チームを批判するサポ、見ていてあまり気持ちの良いものではありませんね。
    ユナイテッドは良くない現状でやれるだけのことをやり切ったと思います。残念ながらあそこからもう一度攻撃に転じて勝ちきる力ははっきり言って無いでしょう。弱者(失礼)が弱者の戦術で勝ち点をもぎ取りに行く。それを強者が嘲る。それがなんと傲慢で醜い事か、現世界王者のファンには一度考えてみて頂きたいですね。

  9. プレミアリーグ大好き! より:

    オリギへのファウルの有無は審判によると思うので、無かったら無かったでしょうがないと思いますが、今回のアトキンソンのジャッジ基準ならファウルでしょうね。ユナイテッドにはあれくらいのチャージで笛吹いてましたから。
    ファビにイエローが出てヤングにイエローが出ないのも明らかにおかしかったですし。
    逆の立場だったら、すぐ笛吹いてるでしょうね。
    明らかに間違ったものに、不満を言うのはいけないことでしょうかね?

  10. プレミアリーグ大好き! より:

    ユナイテッドのサッカーは時代遅れでも何でもない!!
    カテナチオと捉えて言うのならアタランタが見せるカルチョサッカーの最先端のそれと同じ!!

    この試合のユナイテッドが見せたのはチームとしての戦術的な戦い。それが出来なくて後手を踏む事が増えて現場から退いたファーガソン。その時代の栄光に縋るだけの時代が終わって未来に希望が見えた試合だった!

    この試合でユナイテッドが見せた戦術的な戦いには
    モウリーニョのエッセンスも混じってるしファン・ハール時代の3バックのメソッドも引き継がれてる

    低迷期にチームとして選んできた事は間違いなく繋がってる!

    モイモイは知らない!(笑)

  11. プレミアリーグ大好き! より:

    アトキンソンは平常運転でしたね。
    いつも彼には一貫性がなく、見ていてフラストレーションが溜まります。
    完全にアフターで蹴られて接触も確実にあったのにノーファウル。
    VARで確認したのにも関わらず、やはりノーファウル。
    他の試合でも、VARで覆ることが少なく主審によってVARの結果が決まるのであれば、プレミアリーグでVARは意味を成さないと思います。
    レベルが低いレフェリーが多いですから。
    アトキンソンに、連勝記録更新を阻まれて怒りしかありません。

    —–
    これまでに判定の恩恵を受けて勝った試合も少なくなかったのに、逆の立場になったら愚痴るってのはちょっとね…

  12. プレミアリーグ大好き! より:

    オリギ、接触が有ったのとは逆の足を痛がっていたみたいですね。不思議なこともあるものです。
    トラップが大きくなってボールを掻っ攫われたのを誤魔化すためにダイブして大げさに演技したと考えると辻褄が合ってしまいますが、常に100%絶対正義のリバプールがそんな卑怯なことをするはずがないですしね。逆の足が痛くなるメカニズムを学会で研究してもらったらいかがでしょうか。
    因みにいつぞやのスパーズ戦でKOPが大騒ぎした”ラメラのダイブ”では、別角度ではしっかりとふくらはぎを蹴られている映像が有りました。
    ちゃんと蹴られた場所と痛がっている場所は一致していましたよ(笑)

  13. プレミアリーグ大好き! より:

    いつまでもネチネチ言ってるやつ多いな
    リバポとマンC以外のクソ雑魚チームのファン層なんかこんなもんか

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