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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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大型補強は、大型リスク。3つのクラブが遺した教訓を活かせず…フランク・ランパード解任!

「フランクとはいい人間関係を築いており、最大限の敬意を抱いている。そのため、クラブにとって非常に難しい決断だった。彼は誠実で、仕事に対する姿勢も素晴らしかったが、現状を見ると監督交代が最適な判断だと考えた。クラブを代表して、これまでチームを率いてくれたフランクに感謝の意を表し、今後の成功と発展を心より願う。この偉大なクラブにとって、彼は重要な存在であり、これからその思いはなくならない。クラブは、彼のスタンフォード・ブリッジへの帰還を、常に歓迎するだろう」(ロマン・アブラモヴィッチ)

就任から18ヵ月。チェルシーの公式サイトが、フランク・ランパード監督の解任を発表しました。ラストゲームは、2015年のジョゼ・モウリーニョと同じレスター戦。直近のプレミアリーグで2勝1分5敗も、ポルトガル人監督と全く同じです。ブレンダン・ロジャースのチームに打開策なきまま敗れた瞬間、若き指揮官の命運は決まっており、それからの数日は新監督との交渉と発表準備に費やされたのでしょう。

2003年にクラブを買収したアブラモヴィッチ氏が招聘した9人めの正式な監督は、ジョゼ・モウリーニョ、アントニオ・コンテ、カルロ・アンチェロッティに次ぐ長命でした。初年度も年末に2勝5敗と停滞し、1月にも1勝3分2敗という不振に陥ったのですが、補強禁止処分を喰らっているなかでの苦闘という解釈で許されたのでしょう。2億2000万ポンドを超える大型補強を敢行した今季は、プレミアリーグ制覇が継続の絶対条件。首位マンチェスター・ユナイテッドに11ポイント差という折り返しは、オーナーのなかにある合格ラインに届いていなかったようです。

ランパード解任の報を聞いて、3つのクラブを思い出しました。ガレス・ベイルの売却益で、ソルダード、パウリーニョ、シャドリ、カプェ、エリクセン、ラメラを買った2013-14シーズンのトッテナム。スアレス資金を得て、ララナ、リッキー・ランバート、バロテッリ、エムレ・カン、マルコヴィッチを獲得したリヴァプール。ルカク資金を惜しみなく投じ、ピックフォード、マイケル・キーン、クラーセン、ルーニー、シグルズソン、サンドロを一気にかき集めた2017-18シーズンのエヴァートン。前線にも後方にも新戦力をベタ貼りした拙速なモデルチェンジは、いずれも空中分解しています。

2013年の夏にスパーズにやってきたヴィラス・ボアスは、11月から雲行きが怪しくなり、2勝2分2敗と停滞した後、リヴァプールにホームで0-5と大敗してジ・エンド。翌シーズンのブレンダン・ロジャースは、プレミアリーグ12節までで4勝2分6敗という低空飛行を続け、終盤の失速もあって6位という冴えない着地となりました。リヴァプールは、次の夏にもミルナー、フィルミーノ、ベンテケ、ナサニエル・クライン、ダニー・イングスを連れてきてロジャースをフォアグラ状態にしてしまい、消化不良の指揮官は10節までもたずに解任の憂き目に遭っています。

2016-17シーズンを7位で終え、EL出場権を獲得していたロナルド・クーマンは、ダブついたスカッドをまとめきれず、2勝2分5敗という極度の不振に陥って終了。テコ入れしたはずの攻撃陣は、9試合で7ゴールしか決められませんでした。最後の失敗から、4年。アザール資金を手にしながら補強禁止処分で1年我慢し、モラタの売却益まで加わったアブラモヴィッチ砲は燃料充分。当時のリヴァプールやエヴァートンを1億ポンド以上も上回る危険な兵器を授け、半年以内に使いこなせという非情な課題設定は、ランパード監督を過去の名将たちと同じ結末に追い込んだだけでした。

大型補強は、大型リスク。チェルシーのオーナーにとって、フランク・ランパードは最も大事に思っていた人物のはずなのに、最も手厚い補強という最も難しい課題を背負わせ、1年半で潰してしまう格好となりました。プレミアリーグの歴史に学べばよかったのに…と結果論をつぶやきたくなりますが、チェルシーを優勝候補に推していた私にそれをいう資格はありません。アカデミー出身の選手を抜擢したランパードのチームの成長をもっと見たかった…今はとにかく残念です。

後任は、パリを離れたばかりのトーマス・トゥヘル監督のようです。無数の引き出しを備える戦術家は、難局を切り抜けることができるでしょうか。しかしまあ、CL準優勝監督を年内にぶった切るクラブの直後にアブラモヴィッチ王国とは、タフな方ですね…。


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