イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

ガットゥーゾの乱は1日で鎮圧…「BBC」の記者が語る「新監督が決まらないトッテナムの舞台裏」

Are Tottenham back to square one in managerial search?(トッテナムの監督探しは、振り出しに戻るのか?」。プレミアリーグの裏事情を知るキーマンにネットワークを持つ「BBC」のサイモン・ストーン記者が、刺激的なインサイドストーリーを配信しています。2021年4月19日にジョゼ・モウリーニョが解任されて以来、空位となっているスパーズの正監督の座は、本命の候補すらいない状態で放置されています。

実際のところ、何が起こっているのでしょうか?

「BBC」の記者は、これまでのプロセスを語る際に、こんな表現を用いています。「候補者のリストは尽きることなく、紆余曲折を繰り返している」。まずは記事に沿って、レヴィ会長とボードメンバーの足跡を辿ってみましょう。候補者をリストアップする最初のリサーチであっさり落ちたのは、バイエルン・ミュンヘンに行くことになったユリアン・ナーゲルスマンとレスターで大満足のブレンダン・ロジャース。エリック・テン・ハフに白羽の矢を立てると、アヤックスは1年の契約延長オプションを発動してディフェンスを固めました。

「問題は、その後に起こったことだった」。ここからは、サイモン節を楽しみながら事の次第を把握していただきましょう。「マウリシオ・ポチェッティーノの感動的な復帰は、パリ・サンジェルマンから励まされたわけではない」。フランスの強豪クラブは、スパーズの意向を知った瞬間、強引にシャッターを下ろしてしまいました。次の候補となったアントニオ・コンテについても、エキサイティングな言い回しで破綻の経緯を綴っています。

「トッテナムを見守る人々がクラブの交渉を擁護したのは、チェルシーとインテルのボスだったコンテがトロフィーを獲得できる監督なのは明らかであり、インテルを離れたばかりの有能な人物を無視するのは怠慢という理由だった」

「しかしながら、たった数回のミーティングで、コンテと一緒に仕事できないと気づいてしまった。ジョゼ・モウリーニョを超える厳しいスタイル…両者と仕事をしたことのある人物がそう述懐している」

このミーテイングには、その後スパーズのテクニカルディレクターに就任したファビオ・パラティチ氏も参加していたそうです。ここからの混乱は、セリエAをよく知る彼によってもたらされました。決定寸前までいっていたパウロ・フォンセカとの突然の決裂と、ジェンナーロ・ガットゥーゾの名を聞いたサポーターによる猛抗議…!

「フォンセカは先週、プレシーズンのトレーニングやフレンドリーマッチなどの詳細について、パラティチと話し合った。スカッドに合ったプレースタイルの考え方には、違いがあった。攻撃的なスタイルを好むフォンセカに対して、パラティチはより守備的なマインドのチームを希望していた。それでも木曜日の朝、元ローマのボスはトッテナムの指揮官就任における紳士協定を結んだと考えていたようだ」

「突如、ガットゥーゾが獲得できる状況になった。フィオレンティーナ就任から、たった23日で生じた溝。彼のエージェントであるホルヘ・メンデスの関与が揉める原因だったようだ。これを知ったパラティチはいきなり方向転換し、フォンセカは大いに困惑した」

メディアを通じて、指揮官候補の本命がミランのレジェンドに変わったという情報をキャッチすると、スパーズサポーターは一斉にリサーチ開始。彼はふさわしくないという主張がソーシャルメディアにUPされるまでに、2時間しかかかりませんでした。槍玉に挙げられたのは、過去のインタビュー記事です。元イタリア代表MFの同性婚や、サッカー界の女性問題についての過激な発言が掲載されたメディアのコピーがTwitterで拡散され、「#NoToGattuso」というハッシュタグがトレンド入りする騒動に発展しました。

この状況を把握して、すぐに動いたのは、ダニエル・レヴィ会長とのホットラインを持つトッテナム・ホットスパー・サポーターズトラストです。クラブが欧州スーパーリーグにエントリーした際に、経営トップに退任を要求した団体の直談判によって、ガットゥーゾの話はよくあるゴシップのごとく1日ももたずに消えていきました。パラティチさんは、話がまとまりそうな監督を放り出すほどファンだったようですが…。

そして、誰もいなくなりました。

いや、いなくなったのはあくまでも本命で、サイモンさんにいわせると「候補者のリストは尽きることなく」です。ロベルト・マルティネスとベルギーの契約は2022年までですが、レヴィ会長次第で動かせる可能性があるとのこと。少なくとも、イタリアとの契約を2026年まで延長したロベルト・マンチーニよりはハードルは低そうです。セヴィージャのフレン・ロペテギは、2024年まで。アヤックスのエリック・テン・ハフは、断られたわけではありません。プレミアリーグの現場に戻りたいヌーノ・エスピーリト・サントとエディ・ハウは、即決できそうです。

渾身のレポートは、「現在のスパーズの問題は、指揮官の決定プロセスに長期的な視座と一貫性がないことと、コロナウイルスによるパンデミックがもたらした経済的なダメージがシビアであること」と指摘しています。10億ポンド(約1520億円)を投資した新スタジアム完成という最悪のタイミングでサポーターを失ったため、2億ポンド(約305億円)という回収不能な規模の損失を出したクラブは、「高いサラリーは払えないし、補強もできないけど、プレミアリーグでTOP4に入ってくれ」としかいえない状況に陥っているのです。

サイモンさんのレポートで興味深かったのは、「スパーズの関係者は、外から見るほど混乱していないと主張している」というクダリです。フットボール界のしきたりでいえば、「誰にもオファーしてないし、誰にも断られてないけど、何か?」といえるというわけです。なるほど、確かに。「プレミアリーグ開幕まで2ヵ月あるので、熟考しているだけ」ですね。レヴィ会長は、厳しい経営状況のなかでいかに出費を抑えて最適解を出すかを、なりふり構わず真剣に考えているのだと思います。やっちまったのは、ガットゥーゾに飛びつこうとしたパラティチさんだけと心得ておきましょう。

ここからは、私の妄想です。当座のキャッシュを捻出するために、そして数年後の巻き返しを実現させるために、こんなプランはいかがでしょうか。ハリー・ケインを売って、タミー・アブラハムを買う。デル・アリを売って、移籍金が暴落したウィルフリード・ザハを買う。ロ・チェルソを売って、シェルダン・シャキリを買う。ルーカス・モウラを売って、ジェス・リンガードを買う。現在のクラブで不遇をかこつ選手たちを爆発させるのは、コロナウイルスの感染拡大が始まった頃、プレミアリーグで初のサラリー大幅カットを申し入れたエディ・ハウ…!

こんなチームが、昨季のハマーズのようにプレミアリーグの上位を快走したら、手に汗握って応援してしまいそうです。ロリス、アルデルヴァイレルト、ホイビュルク、エンドンベレといった背骨を大事にしつつ、過小評価連合軍で戦い、アカデミー出身の若手を引き上げるというアイデアでした。いえ、かなりまじめに考えました。トッテナム・ホットスパー・サポーターズトラストのみなさんに反対されたら、すぐに取り下げますけど…。


おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


コメントを残す