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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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放送禁止用語連発で処分を受けたモウリーニョ監督…チェルシー復活のために必要なことは?

8月はWBA、9月はアーセナル、10月はアストン・ヴィラ。プレミアリーグでは完全に「月1勝ペース」が定着してしまったチェルシーの「今月の1勝」は21日のノリッジでしょうか。月末のロンドンダービー、トッテナムとの一戦に勝てれば勢いに乗れそうですが、今の状態では難しいかもしれません。私が気にしているのは、選手の調子よりも、監督の精神状態です。10月24日のウェストハム戦では、オフサイドとレッドカード絡みの微妙な判定に激高したモウリーニョ監督が、ハーフタイムに退席処分となり、後半はスタンドで観戦。前半終了間際に10人となったチームは、1度は追いついたものの、終盤にアンディ・キャロルに勝ち越しゴールを許して2-1と敗れました。

ハーフタイムに指揮官がレフェリーに対して暴言を吐いたと聞いたとき、私は「勢いでひとこと、ポロッとやってしまったんだろうな」と思っていたのですが、実際にはそれ以上のことが起こっていたようです。FA(イングランドサッカー協会)が、当日の主審だったジョナサン・モス氏のレポートを書面で公表したのですが、それによると、指揮官の行動は「職場放棄」「自爆」ととられても仕方のないものでした。

「ハーフタイムに同僚と一緒にピッチを出てトンネルに入り、ドレッシングルームに戻ろうとすると、そこにはチェルシーのモウリーニョ監督が待ち構えていた。彼は明らかに取り乱しており、判定について攻撃的に詰め寄ってきた。人目のあるオフィシャルな場で話すよりもと、私は彼にドレッシングルームに入るように依頼した。ウェストハムのセキュリティ・マネージャーであるサイモン・サットン氏が、私たちをエスコートしてくれた。モウリーニョ氏はタックル、オフサイド、(ゴールラインテクノロジーによりノーゴールとなった)ゴールライン上のクリアの判定について問いただしてきた。私は簡単な言葉で彼の質問に答え、退室するように依頼したら彼は拒否した。再度の要求も拒否されたので、私はサットン氏に彼を部屋の外に連れていくよう頼んだ。この時点で、モウリーニョ氏はさらにアグレッシブになっており、勢いがついていた」
「He shouted that you ×××× referees are weak.(Arsenal manager Arsene) Wenger is right about you… you are ×××× weak.(彼は叫んでいた。お前ら××××なレフェリーは弱い。ヴェンゲルが正しい。お前は××××弱い、と)」
「これらの行動を見て取った私は、モウリーニョ氏に後半、テクニカルエリアに入らないよう伝えた」
(英字部分は「PA SPORTS」記事より引用。××××は、いわゆる放送禁止用語。翻訳は筆者による)

ハーフタイムに指揮官が最優先でやらなければならなかったことは、1-0とリードされてロッカールームに戻ってきた10人の選手たちを落ち着かせ、後半の戦い方を指示することです。モウリーニョさんは、それよりも絶対に覆らないジャッジへのクレームを優先させ、退席となってしまうことは誰にでもわかるレベルの行動を取ったわけです。うーん、残念。もったいない。私は、10人で1-1に追いついたこの試合と、モウリーニョさんがスタジアムに入れず1-0で敗れたストーク戦は、監督の冷静な采配でそれぞれ勝ち点1には持っていけた試合だったと思います。

ウェストハム戦の後半頭にセスクをミケルに代えたのは、1人少ない状態で追加点を奪われないために必要だったと思うものの、勝ち越されて10分以上経ってからの「ラミレスをファルカオ」は疑問でした。チェルシーは、ジエゴ・コスタとファルカオの2トップでは1ゴールしか奪えていません。もっと早い時間にオスカルを投入し、最後の最後、スクランブルでファルカオなら納得がいったでしょう。事実、次戦のリヴァプール戦で負けた際には、ファルカオ投入は3枚めです。ウェストハム戦は、カードの切り方、切る順番とも疑問の残る一戦でした。ストーク戦も含めて、機能していないジエゴ・コスタへのこだわりにも釈然としないものがあります。「彼は売るべき」というイアン・ライト氏の発言はさすがに過激でしょうと思いつつも、この言葉には納得感があります。

「最初のシーズンの彼(=ジエゴ・コスタ)は本当に素晴らしかった。チェルシーに加入した当初は、ゴールを奪うことに集中し、ペナルティーボックス内で仕事をしていた。今はそのときとは何もかもが違う。彼はボックスの外に陣取って、他の選手と一緒に動いている。これはチェルシーに求められるCFの動きとは一番かけ離れているものだ」(イアン・ライト)

「売る」「外す」までやるかはともかく、少なくとも調子が上がらないときは、チャンスをもらいやすいスペースに入れるロイク・レミーに後を託し、何度やっても成果が芳しくない2トップにこだわらないほうがいいと思います。モウリーニョさんに平常心があれば、中堅クラブ相手の2試合を勝ち点ゼロというショッキングな結果は回避できたかもしれず、難しいアウェイの2試合をドローなら、チームのメンタルコンディションを下げずに済んだでしょう。

チェルシー復活のために最も必要なのは、監督がよかった頃の自身を思い出すことではないでしょうか。以前は、チャンピオンズリーグのバルセロナ戦で判定に激高して処分を受けていたペジェグリーニ監督も、今はこういっています。「レフェリーのミスは常に起こり得る。しかし、不利なジャッジと失点は別の話だ」。マンチェスター・シティの指揮官は、言い換えるとこういうことをいっているのだと思われます。「0-0で相手にPKが与えられようとも、止めろ。止められなければひっくり返せ。何としても勝とう」。チームのトップが、敗戦や失点をレフェリーのせいにするという「他責」を排除し、自分たちの力で勝とうといっているチームには、トラブルをはね返す力があります。チェルシーOBのルート・フリット氏が、「スカイスポーツ」でこんなことをいっていました。

「かつては、チームが勝ったときはモウリーニョの勝利で、チームが負けたときはモウリーニョの敗北を意味していた。しかし今年になって、突然、彼は選手を批判し始めた。今は勝てばモウリーニョ、負ければ選手のせいという状況だ。以前は選手を擁護していたのにね」(ルート・フリット)

監督が、選手に心から慕われていた頃の自分を思い出し、選手批判やレフェリーへのクレームといった「他責発言」をやめない限り、チェルシーは監督、スタッフ、選手間の一体感・信頼関係を創れず、プレミアリーグ王者だった頃の強いチームには戻れないのではないかと思います。状況を打開するための特効薬として、アブラモヴィッチさんが自らの肉声で「私は、世界一の監督であるモウリーニョ氏を信頼している。解任はない」と宣言するというのはいかがでしょうか。解任されたリヴァプールのロジャース監督にも出ていたクラブの公式声明レベルでは、全然響かないでしょう。ポジティブな話こそメディアを活用すべしで、オーナーがプレミアリーグ全体に宣言したら、モウリーニョさんの不安は減り、選手は引き締まり、マスコミは静かになるはずです。今季、マンチェスター・シティがロケットスタートに成功した最大の要因は、プレミアリーグ開幕直前にペジェグリーニさんの契約延長が発表され、グアルディオラさん招聘云々というモヤモヤしたムードを一掃して監督と選手に一体感が醸成されたことだと思います。異例なのは重々承知ながら、オーナー、いかがでしょうか。もちろん、続投前提のお話ですが。

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“放送禁止用語連発で処分を受けたモウリーニョ監督…チェルシー復活のために必要なことは?” への2件のフィードバック

  1. パチ より:

    正直ピッチ外で問題を起こさなかったぺジェと違って、チームスタッフを退任に追い込んだり選手批判をするようになってしまったモウをアブラモビッチがかばう宣言したとしても、一体感が生まれるかどうかはちょっと微妙かなって感じです…。マドリーでペレスもかばう発言とかしてたけど結局モウが変わらなかったのでやっぱり選手はついてこなかったですもんね…。
    なのでポジティブな話だったらまずはエヴァ医師の件についての解決ってのが一番じゃないですかね。モウが謝罪して和解とか。選手の中にも心中ではこの件に納得いってないってのいそうだし。

    まず自らを改める。そしてそれをチーム内外に示す。その結果アブラモビッチが信頼を宣言、ってのが一番いいのかなと…。まあモウが非を認める姿が思い浮かばないってのが難点ですが…。

  2. makoto より:

    パチさん>
    「実際に、選手との信頼関係をどのくらい毀損しているのか」にもよるでしょうね。おっしゃるとおり、エヴァさんの件をうまく着地させられれば、選手やスタッフのみなさんの納得感は大きそうです。

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