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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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リーグの戦術レベルが上がる!?プレミアリーグと相性がいいイタリア人監督が来季は4人!

ある国籍の選手や監督の際立った活躍が、次なる有望なタレントを連れてくる現象が時折起こります。ブンデスリーガに日本人選手が増えた背景として、EU外の選手を獲得しやすいレギュレーションやトーマス・クロート氏という敏腕代理人の存在があったのは確かですが、2000年代中頃に海を渡った高原直泰のフランクフルトでの11ゴールや、長谷部誠の成功、その後の香川真司のブレイクがなければ、今ほど大量の選手がドイツのクラブに在籍する状況にはならなかったでしょう。

プレミアリーグの指揮官にも、同じようなことがいえるのかもしれません。ラニエリ監督が起こしたレスター旋風が、1月にグイドリンをスウォンジーに呼び、新シーズンの指揮官としてチェルシーはコンテ監督、ワトフォードはマッツァーリ監督を招聘しました。プレミアリーグ2016-17シーズンは、イタリア人監督が4人。ボーンマスのエディ・ハウ、サンダーランドのサム・アラダイス、クリスタル・パレスのアラン・パーデューと、残留争いに巻き込まれるクラブにしかいないイングランド人監督を人数で抜いてしまいました。昇格してくるバーンリーがショーン・ダイチェ監督を代えず、スティーブ・ブルースのハル・シティがチャンピオンシップのプレーオフを勝てば再度、逆転しますが、セリエAのトップクラブを率いた監督が複数いるという現象は、今までになかったことです。

ラニエリ監督はあくまでも火付け役で、背景としてあるのは、近年の欧州戦線におけるプレミアリーグ勢の凋落とセリエAの復活傾向や、両国のクラブの経済的格差でしょう。セリエAにいるよりイングランドに渡ったほうがギャラがいいために、ユーヴェ、インテルなどごく一部のおいしいポジションが塞がると、監督たちはより海外に目を向けるようになっているのだと思われます。過去、プレミアリーグで指揮を執ったイタリア人監督といえば、チェルシーを率いたヴィアリ、ラニエリ、アンチェロッティ、ディ・マッティオや、ウェストハムのゾーラ、マンチェスター・シティのマンチーニさんが主だったところでしょう。このなかで、セリエAのトップクラブを率いた経験があったのは、インテルから来たマンチーニさんとミランのアンチェロッティさん、チェルシー時代にはなかったものの、その後ユーヴェやローマ、インテルを率いてからレスター監督となったラニエリさんのみ。ワトフォードがイタリア人オーナーだとはいえ、コンテ監督とマッツァーリ監督の同時襲来は衝撃的です。

過去、プレミアリーグに来たイタリア人監督は、当代のトップクラスではなかったものの、軒並み結果を出しています。ヴィアリのプレミアリーグ3位、ラニエリの2位&チャンピオンズリーグ4強は、まだトップクラブとはいえなかったチェルシーとしては満足すべき着地でしょう。ディ・マッテオはチェルシーをチャンピオンズリーグ制覇に導き、マンチーニとアンチェロッティはプレミアリーグで優勝。2012-13シーズンにチャンピオンシップでワトフォードを率いたゾーラ監督も、前後の年が2ケタ順位だったことを考えれば、3位はまずまずです。なぜか去り際がよくなかった監督が多いのですが、それぞれクラブの目標に対するコミットメントが高く、簡単に負けないチームを作って最低限の数字を残しています。

さて、4人のイタリア監督は、来季成功するでしょうか。かつての名GKディノ・ゾフ氏が、「イタリア人は考えすぎて物事を複雑にする傾向がある。サッカーをチェスになぞらえるんだ」と語っておりましたが、彼らはイングランドの監督たちよりも概ね戦術的に緻密です。プレミアリーグを戦った経験のある選手が、イタリア人監督について語った2つの証言を紹介しましょう。

「(ラニエリ監督は)相手のたったひとりの選手について、60もの映像を夜通しでチェックしてからミーティングにやってくる。そして、49のケースではこう対応して残りの11ではこうしろと、正確に説明するんだ」(ジェイミー・ヴァーディ)
「ローマに留まることになれば、今よりもさらに成長し、改善できるだろう。逆にアーセナルに戻るとしたら、ローマでの経験を活かすことになる。僕はスパレッティの下で過ごした4ヵ月で、アーセナルにいた10年よりも多くのことを学んだ。スパレッティは細部にとてもこだわる監督で、多くの大切なことを教えてくれた。彼はGKに対しても正確なボールコントロールを求めるんだ」(ヴォイチェフ・シュチェスニー)

プレミアリーグ10位に沈み、最終ラインが高齢化しているチェルシーが、1季でチャンピオンズリーグ出場圏内にV字復活するかどうかは微妙ですが、他の3クラブは期待できるのではないでしょうか。スウォンジーは、ストライカーと後ろにいい選手を獲得できれば今季のウェストハムのような躍進が期待でき、資金に余裕ができるレスターがボトム10に落ちることはないでしょう。昇格初年度を守備の堅さで耐え抜いたワトフォードは、守りをベースにチームを作ることが多いイタリア人監督にとってはやりやすいクラブなのではないかと思います。スペイン人、オランダ人が主流だったプレミアリーグに、来季は違う風が吹き抜けます。グアルディオラ監督も含め、新指揮官たちが見せる新しい戦術によってリーグのレベルが上がるのではないかと期待しています。(ワルテル・マッツァーリ 写真著作者/Anders Henrikson)

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“リーグの戦術レベルが上がる!?プレミアリーグと相性がいいイタリア人監督が来季は4人!” への3件のフィードバック

  1. すぱさぽぽ より:

    はじめまして、いつも楽しく読まさせてもらっています。
    来期のグイドリンのスウォンジーなんかは中々楽しみです!マッツァーリもプレミアでも3バック主体でやっていくのかと考えるとわくわくします。
    ただ1つ気になるのが記事でアンチェロッティが完全にスルーされてしまっていることです笑

  2. makoto より:

    すぱさぽぽさん>
    すみません、誰か抜けてるぞ、プレミアリーグ勝った監督のような…と思いながら書いていたのですが、想像以上に大物で腰が抜けました。論旨を変えるものではなかったため、訂正させていただきました。ご指摘ありがとうございました。

  3. makoto より:

    ペップですらバルセロナ監督時代にインタビューで
    僕の戦術は全てセリエ(イタリア)で学んだと言ってました。0トップや守備など細かくイタリアで学んだと言ってました。
    勿論シメオネやジダンも同じく。

    ベニテスやエンリケ監督もセリエで先制点与えるサッカーをやったら下位チームになればなる程勝ち点3はほぼ不可能と言ってました。
    エンリケをセリエに監督として行かせたのもペップでした。
    モウリーニョもレアルでリーグ優勝した時のインタビューで、
    一番厳しく難しかったリーグはセリエと言ってました。

    ペジェクリーニもナポリ育ちのイタリア系チリ人だし近年CLベスト4監督はイタリア人かセリエ経験した監督ばかりだから来期以降もプレミアリーグはさらに厳しいリーグになりますよ。

    —–
    あ さん>
    プレミアリーグが「さらに厳しいリーグになる」のは、欧州で勝てないという意味なのか、競争が激化するという意味なのか、どちらですかね?イタリア人監督、セリエAでもまれた監督の比率が高まっているので、後者ならわかります。

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