2024.01.19 監督トピックス
信じ続けたサポーターの歓声は止まず…ローマがジョゼ・モウリーニョを解任した理由。
フルヴィオ・ベルナルディーニと呼ばれるトリゴリアのトレーニング施設に、多くのサポーターが集まっていました。駐車場からゆっくり出口に向かったレクサスがセキュリティゲートを超えようとすると、彼らは周囲を取り囲み、スマートフォンで写真を撮りながら口々に叫んでいます。
「グラッツィエ、ジョゼ。愛してる」
男たちのなかには、泣いている者もいます。助手席にいた主役…ジョゼ・モウリーニョの目が赤かったのは、感動したからなのか、悔しかったからか。「ラララララーラ、ジョゼモリーニョ!」。通りに出たレクサスが右折しても、愛するボスの背中に送るチャントは鳴りやみませんでした。
ジョゼ・モウリーニョ、解任。カルト、信者といった言葉で表現される熱狂的なサポーターを味方につけた指揮官は、夏に終わる契約の延長を求めていたといいます。しかしオーナーのダン・フリードキンが久しぶりにセットした25分の会談は、ローマに居場所はなくなったと告げるだけのシンプルな場でした。
サードシーズン・シンドローム。彼が10年を過ごしたイングランドで、記者たちが囁いている言葉です。最初の2年でタイトルを手にすると、勝利への渇望が飽和状態になり、バーンアウト。2013年に復帰したチェルシーで2年めにプレミアリーグを制し、マンチェスター・ユナイテッドではELとEFLカップで優勝したものの、3年めにチームはクラッシュしてしまいました。
「モウリーニョは4つのクラブから連続して解任されているが、理由はすべて成績不振である。解任された時点の順位は、16位(チェルシー)、6位(マンチェスター・ユナイテッド)、7位(トッテナム・ホットスパー)、9位(ローマ)。4つのうち3つでトロフィーを獲得したが、結局、輝く銀器は燃えさかる瓦礫の山に置き去りにされた」(「アスレティック」ニック・ミラー記者)
プレミアリーグで失敗を繰り返した監督と知っていたファンやジャーナリストでも、ローマでは長く続くと思っていたのではないでしょうか。初年度の2021-22シーズンに、ヨーロッパカンファレンスリーグを制覇。欧州で3番めの大会だとしても、ローマにとっては14年ぶりとなる戴冠は、その瞬間を待ち焦がれていたサポーターたちを歓喜させました。
セリエAでは2シーズン連続で6位ながらも、2年めもELでファイナル進出。セヴィージャをPK戦で下していれば、3年めの足跡は変わっていたのでしょうか。開幕からの3試合を2分1敗と出遅れたローマは、14節のサッスオーロ戦に勝って4位にジャンプアップしたものの、次節からの6試合を1勝2分3敗として9位に転落してしまいました。
「アスレティック」のジェームズ・ホーンキャッスル記者は、モウリーニョ解任の背景として、「イタリア政府が、年明けに優秀な監督や選手を獲得するための減税措置を廃止した」「モウリーニョがビッグネームをほしがったため、人件費が高騰した」という2つの事象を挙げています。指揮官とティアゴ・ピントGMは、見ているものが違ったのです。
ルカクをレンタル、ディバラをフリーで獲得した補強について、「われわれより移籍市場で出費が少ないのは、フロジノーネとヴェローナだけ」と自慢する指揮官に対して、GMはサラリーの上昇を懸念していました。高額のフィーが必要な指揮官、ユーヴェとインテルに次ぐ高い人件費、しかし順位は直近20年で最悪の9位…オーナーは投資を続けるべきではないと判断したようです。
60歳になったモウリーニョの次のチャレンジとして、「エディ・ハウの下で不振に陥ったニューカッスルが興味を示している」という報道があります。経営ボードが昨シーズンのエディ・ハウをポジティブに評価しているのなら、フランスやイタリアでも「オールドファッション」「ローマの遺物」と揶揄されている指揮官へのモデルチェンジは避けるべきでしょう。
プレミアリーグのクラブで、モウリーニョ降臨がまっすぐ強化につながりそうなのは、カウンターからの6発がリーグ2位のウェストハムです。彼好みの長身・屈強なCBと、攻守のバランスがいいアンカーを揃えたチームは、若いCFと守備力があるSBを加えれば相当強くなりそうです。TOP4は無理でも、クラブも指揮官も得意なELルートでCL出場権を奪取できるかもしれません。
「ローマから解任されたという報を聞いて、ジョゼ・モウリーニョはトップレベルの監督としての仕事を終えたと考えたくなる誘惑に駆られる」。ニック・ミラー記者の言葉に触れて、代表チームの仕事が最後のステージになるという未来を想像しました。ユーロ2024からワールドカップまで2年なら、サードシーズン・シンドロームを気にする必要はありません。
プレミアリーグ復帰は、おそらくないでしょう。ジョゼ・モウリーニョという名前を記す機会は、あの頃のチェルシーを懐かしむ時だけになるのかもしれません。彼は最強でした。マドリードから戻ってくるまでは。スペインが何かを変えてしまったのでしょうか。マンチェスター・ユナイテッドのアナウンスを見たときの悔しさ、せつなさは、今もなお鮮明に残っています。
歓声を受けたレクサスの後ろ姿が見えなくなり、イタリアの首都のクラブは新しい時代を迎えようとしています。彼はまた、志半ばで去っていきました。ずっと信じてくれた多くのサポーターと、強い言葉によるストレスから解放された選手たちと、最後のボタンを押すしかなかったオーナーを残して。
「グラッツィエ、ジョゼ。愛してる」
男たちのなかには、泣いている者もいます。助手席にいた主役…ジョゼ・モウリーニョの目が赤かったのは、感動したからなのか、悔しかったからか。「ラララララーラ、ジョゼモリーニョ!」。通りに出たレクサスが右折しても、愛するボスの背中に送るチャントは鳴りやみませんでした。
ジョゼ・モウリーニョ、解任。カルト、信者といった言葉で表現される熱狂的なサポーターを味方につけた指揮官は、夏に終わる契約の延長を求めていたといいます。しかしオーナーのダン・フリードキンが久しぶりにセットした25分の会談は、ローマに居場所はなくなったと告げるだけのシンプルな場でした。
サードシーズン・シンドローム。彼が10年を過ごしたイングランドで、記者たちが囁いている言葉です。最初の2年でタイトルを手にすると、勝利への渇望が飽和状態になり、バーンアウト。2013年に復帰したチェルシーで2年めにプレミアリーグを制し、マンチェスター・ユナイテッドではELとEFLカップで優勝したものの、3年めにチームはクラッシュしてしまいました。
「モウリーニョは4つのクラブから連続して解任されているが、理由はすべて成績不振である。解任された時点の順位は、16位(チェルシー)、6位(マンチェスター・ユナイテッド)、7位(トッテナム・ホットスパー)、9位(ローマ)。4つのうち3つでトロフィーを獲得したが、結局、輝く銀器は燃えさかる瓦礫の山に置き去りにされた」(「アスレティック」ニック・ミラー記者)
プレミアリーグで失敗を繰り返した監督と知っていたファンやジャーナリストでも、ローマでは長く続くと思っていたのではないでしょうか。初年度の2021-22シーズンに、ヨーロッパカンファレンスリーグを制覇。欧州で3番めの大会だとしても、ローマにとっては14年ぶりとなる戴冠は、その瞬間を待ち焦がれていたサポーターたちを歓喜させました。
セリエAでは2シーズン連続で6位ながらも、2年めもELでファイナル進出。セヴィージャをPK戦で下していれば、3年めの足跡は変わっていたのでしょうか。開幕からの3試合を2分1敗と出遅れたローマは、14節のサッスオーロ戦に勝って4位にジャンプアップしたものの、次節からの6試合を1勝2分3敗として9位に転落してしまいました。
「アスレティック」のジェームズ・ホーンキャッスル記者は、モウリーニョ解任の背景として、「イタリア政府が、年明けに優秀な監督や選手を獲得するための減税措置を廃止した」「モウリーニョがビッグネームをほしがったため、人件費が高騰した」という2つの事象を挙げています。指揮官とティアゴ・ピントGMは、見ているものが違ったのです。
ルカクをレンタル、ディバラをフリーで獲得した補強について、「われわれより移籍市場で出費が少ないのは、フロジノーネとヴェローナだけ」と自慢する指揮官に対して、GMはサラリーの上昇を懸念していました。高額のフィーが必要な指揮官、ユーヴェとインテルに次ぐ高い人件費、しかし順位は直近20年で最悪の9位…オーナーは投資を続けるべきではないと判断したようです。
60歳になったモウリーニョの次のチャレンジとして、「エディ・ハウの下で不振に陥ったニューカッスルが興味を示している」という報道があります。経営ボードが昨シーズンのエディ・ハウをポジティブに評価しているのなら、フランスやイタリアでも「オールドファッション」「ローマの遺物」と揶揄されている指揮官へのモデルチェンジは避けるべきでしょう。
プレミアリーグのクラブで、モウリーニョ降臨がまっすぐ強化につながりそうなのは、カウンターからの6発がリーグ2位のウェストハムです。彼好みの長身・屈強なCBと、攻守のバランスがいいアンカーを揃えたチームは、若いCFと守備力があるSBを加えれば相当強くなりそうです。TOP4は無理でも、クラブも指揮官も得意なELルートでCL出場権を奪取できるかもしれません。
「ローマから解任されたという報を聞いて、ジョゼ・モウリーニョはトップレベルの監督としての仕事を終えたと考えたくなる誘惑に駆られる」。ニック・ミラー記者の言葉に触れて、代表チームの仕事が最後のステージになるという未来を想像しました。ユーロ2024からワールドカップまで2年なら、サードシーズン・シンドロームを気にする必要はありません。
プレミアリーグ復帰は、おそらくないでしょう。ジョゼ・モウリーニョという名前を記す機会は、あの頃のチェルシーを懐かしむ時だけになるのかもしれません。彼は最強でした。マドリードから戻ってくるまでは。スペインが何かを変えてしまったのでしょうか。マンチェスター・ユナイテッドのアナウンスを見たときの悔しさ、せつなさは、今もなお鮮明に残っています。
歓声を受けたレクサスの後ろ姿が見えなくなり、イタリアの首都のクラブは新しい時代を迎えようとしています。彼はまた、志半ばで去っていきました。ずっと信じてくれた多くのサポーターと、強い言葉によるストレスから解放された選手たちと、最後のボタンを押すしかなかったオーナーを残して。
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