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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

デ・ゼルビとモイーズのクセがスゴい!プレミアリーグ20クラブの交代策を現地メディアが徹底分析!

プレミアリーグの選手交代枠が3人から5人に拡大されたのは、2022-23シーズンから。ルール変更の議論では、選手層が厚いビッグクラブが有利という主張がありましたが、実際にはどうなっているのでしょうか。今季の運用をリサーチした「アスレティック」のトム・ハリス記者とアーメド・ワリド記者は、監督のスタイルが数字に反映されていると指摘しています。

Premier League substitutions: Brighton go early, Liverpool are productive, Guardiola abstains(プレミアリーグの交代策:ブライトンは早め、リヴァプールは効果的、グアルディオラは控えめ)」と題された記事が紹介している21節までのデータを見ると、1試合平均で3枚以内が4人います。モイーズ、ショーン・ダイク、ホジソン、ペップ。彼らはカードを切る時間も遅めです。

最少のウェストハムが2.7枚、マン・シティは2.8枚、クリスタル・パレスとエヴァートンは2.9枚。カードを切る時間の平均は、最も遅いクリスタル・パレスが78.3分、2位ハマーズは77.2分、3位マン・シティは75.4分です。「5枚あるからといって、使わなければならないわけではない」というペップは、8月のニューカッスル戦と1-1ドローのリヴァプール戦はゼロでした。

31分のフリアン・アルバレスの1発で勝ったマグパイズ戦の後、サポーターが交代を求めていたと聞いたペップは、「誰を代える?ここでやってみてよ」とバッサリ。21節までのリードされている時間が205分だった指揮官は、この間に4人しか投入しておらず、劣勢でも51分を経過しないと動かないという計算になります。

今季プレミアリーグで、最もレギュラー重視の監督はデヴィッド・モイーズです。現地記事を掘り下げるべく調べてみると、消化試合数の8割を超える18試合以上の先発が8人もおり、交代で5回以上投入されたのはクドゥス、ダニー・イングス、ムバマのみ。彼がメンバーを代えないのは、「頑固」「トラディショナル」だからではなく、ELとの両立を考えているからでしょう。

プレミアリーグのレギュラーはアレオラ、ズマ、ツォウファル、ルーカス・パケタ、エメルソン、ウォード=プラウズ、ソーチェク、ボーウェン。ヨーロッパリーグではファビアンスキ、マヴロパノス、ケーラー、フォルナルス、ベンラーマの出番を増やしていました。それぞれのミッションを明確にしながら、木曜日と週末のターンオーバーを行っているのだと思われます。

ホジソンがカードが少ないのは、エゼ、オリース、シェイク・ドゥクレなど主力の負傷が多く、ベンチが貧弱だったからでしょう。マテタとアハマダ以外はプレミアリーグの経験値が低く、勝負のカードというよりは、余裕があるときのお試しカードです。エヴァートンのショーン・ダイクも同様の理由で主力依存度が高く、サブが充実していれば手を打ったはずです。

彼らとは逆に、最も動く監督はブライトンのデ・ゼルビです。1試合あたり4.7枚、21節までの16試合で5枚をフル活用。平均交代時間66.9分は最速で、ハーフタイムの交代15回もリーグTOPです。「選手交代=戦術変更で先手必勝」と考える監督であるとともに、「ガマンが苦手、せっかち」「負傷者が続出するなかで若手の経験値を上げたかった」といった理由もありそうです。

ブライトンに次ぐ4.5枚のバーンリーとフラムは、レギュラー固定をよしとしないコンパニとマルコ・シウヴァだからでしょう。チェルシーは3.9枚で7位、アーセナルとマンチェスター・ユナイテッドは4.0枚で10位。ポステコグルーは4.2枚、クロップは4.3枚と多めです。おもしろいのは、クロップとアルテタのコントラスト。まずは前提となる数字を紹介しましょう。

今季プレミアリーグにおけるサブの選手のゴール&アシストを見ると、1位はアーセナルで16、2位はリヴァプールとブライトンの15。サブの選手によってプラスした勝ち点は、1位リヴァプールが11、2位ウルヴスは9、3位はアーセナルとアストン・ヴィラの8ポイントです。つまりリヴァプールとアーセナルは、サブの選手のゴール、アシスト、ポイントゲットの2強というわけです。

彼らの平均交代時間は、リヴァプールが70.2分でブライトンに次ぐ2位。アーセナルは75.1分で下から4番めです。前線と中盤をローテーションさせ、ダルウィン・ヌニェス、ガクポ、フラーフェンベルフ、ジョッタらを早い時間に送り出すクロップと、エンケティア、トロサール、カイ・ハヴェルツらを勝負どころで入れるアルテタの違いが数字に表れているといえるでしょう。

両者の共通項は、選手を代えてもさほど布陣を変えず、「いつものヤツ」として投入されるので、後釜がフィットしやすいこと。クロップは前半が低調だと中盤を1枚減らし、4-2-4に近い布陣で押しつぶす策を多用しています。アルテタの16ゴールは、「ゲームチェンジャー」というポジティブな表現によって士気を高めた結果でしょうか。

交代策がゴールやポイントにつながっていないワーストは、1ゴール・1アシスト・1ポイントのウェストハム。カードが最少であるうえに、全体の17%が追加タイムの時間稼ぎで使われているからでしょう。ビッグ6の最低はチェルシーの3ゴール&2ポイント。戦い方が定着していないため、交代策の空回りが多いのに加えて、こちらも10枚がリードしている試合の90分以降です。

「代えなかったプラス」の数字が取れないので、交代策の是非は語れないのですが、「カード活用名人2023-24」はクロップ監督でよろしいでしょうか?ちなみにペップは、少数精鋭主義で交代カードは少ないものの、ターンオーバーとプレーエリアやポジションのチューニングは名人芸です。変化を好まない監督になったわけではないことを付言しておきます。念のため。


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