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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

コンテ、モウリーニョ、クロップ。同業者たちが語る「優勝監督が解任されるということ」

思い起こせば、プレミアリーグは5季連続で「優勝監督が1年半以内に任を離れることを発表される」という事態が続いています。2011-12シーズンにマンチェスター・シティを優勝に導いたロベルト・マンチーニは、翌シーズンはコミュニティシールドしか勝てず、FAカップ決勝でウィガンに足元をすくわれた直後に解任。2012-13シーズンを制したサー・アレックス・ファーガソンは、13回めのリーグ優勝を花道に勇退。翌シーズンにキャピタルワンカップとの2冠に輝いたマヌエル・ペジェグリーニ監督は、1年半後の2016年2月にペップ・グアルディオラ就任が発表され、選手のモチベーションが上がらないなかでプレミアリーグ4位を死守する苦しい戦いを強いられました。

2015-16シーズンにチェルシーを勝たせたジョゼ・モウリーニョは、次のシーズンのクリスマスを迎える前に低迷の責任を取らされています。そして、クラウディオ・ラニエリ。テレビ放映権料とスタジアムの盛況が生み出す潤沢な資金を背景に、スター選手と名将が集まり競争が激化したプレミアリーグは、世界で最も監督が報われないリーグになってしまった感があります。

現在、指揮を執っているワールドクラスの指揮官たちにとって、ラニエリ解任は簡単に容認できない事件でしょう。週末のプレミアリーグとEFLカップ決勝の前に、プレスカンファレンスに臨んだ監督たちは、一様にこの件についてコメントを求められました。これを予想し、最も積極的にコメントしたのは1年前の「優勝直後の解任監督」、マンチェスター・ユナイテッドのジョゼ・モウリーニョでした。黒いシャツのアディダスロゴの下に飾られた「CR」の2文字は、もちろんクリスティアーノ・ロナウドではなくクラウディオ・ラニエリです。「これは、プレミアリーグ史上最も美しいストーリーを綴った人へのちょっとしたオマージュだ」。ポルトガル人指揮官の言葉は、自らの苦い体験を反芻しているようでもありました。

「私がチャンピオンとして解任されたときは、最悪な出来事だったが、今は取るに足りないことといえる。クラウディオが成し遂げたことは誰にも消せない。(不満があると伝えられた)選手に関する話が事実…あるいは少しでも事実だとすれば、正当化することはできない。おそらく、新契約や多額の金ばかり考え、誰のおかげでそこに到達できたのかを忘れた典型的な利己主義者たちとともに、シーズンは始まったのだろう」
「レスターは2年連続で歴史を創った。最も美しいストーリーと、サッカーに関わる者すべてを納得させるのが非常に難しい決定だ。重要なことは、これがサッカーであると認識し、適応することだ」

レスターの本拠地は「the Claudio Ranieri Stadium」と名付けられるべきと語ったモウリーニョ監督は、友人の偉業を忘れてはいけないと主張するとともに、サッカー界の現状とレスターの決断についても理解を示しました。これに対して、シェイクスピア暫定監督のレスターと最初に戦うことになったリヴァプールのユルゲン・クロップ監督のなかにあるのは、ひたすら驚きと困惑のようです。

「私に何がいえる?2016-17シーズンは、私にとっては奇妙に感じるいくつかの決定が続いている。ブレグジット、トランプ、ラニエリ。これらをすべて理解しなくてはいけないのか?そんなことはないだろう。レスターがなぜこんな決断をしたのか、私にはまったくわからないね。みんな、プレミアリーグやわれわれがいないチャンピオンズリーグの状況を見ることができただろう」
「彼は、この業界におけるスペシャルな人物。とてもナイスガイだ。ドルトムントに来てくれた彼と素敵な会話を楽しんだことがある。素晴らしいね。なぜ彼を解任したのかは、レスターに行って聞くといいよ」

同郷の友人について、最小限のコメントに留めたのはコンテ監督です。「この手の話につき合うのは好きじゃない。ラニエリに対する敬意を欠いていると思う」「彼は友人で、人間的にも素晴らしく、優れた監督だから、がっかりしている。たった1シーズン前にタイトルを獲ったのに」。次のプレミアリーグ優勝に最も近い指揮官が、唯一熱をもって語ったのは、選手に不満が充満していたという報道に対してでした。

「選手たちが監督が解任されるかどうかを決めるべきではない。そんなことが起こるクラブは、貧しくなり、パワーを失う。選手たちがマネージャーの運命や未来を決めるなどと考えると、イライラする。こういった話は好まない」

セヴィージャと戦うチャンピオンズリーグのセカンドレグを残しながら解任という決定がなされたことについて、「レスターにとって(2-1敗戦は)いい結果、大きな成果だったので驚いた」とコメントしたコンテ監督は、つい先ごろまでともに戦った仲間であるラニエリ監督の心情をひたすら心配していました。

モウリーニョ監督はプレスカンファレンスの映像と「ESPN」、クロップ監督は「ガーディアン」、コンテ監督は「メトロ」の記事より訳させていただきました。ラニエリ監督に関するトピックスを3日続けて書かせていただいたのは、私にとって、この数年のプレミアリーグで最も衝撃的なニュースだったからです。いちばん心を動かされたのは、「テレグラフ」の「The inside story of Claudio Ranieri’s Leicester City sacking nine months after his fairytale title win(タイトル獲得というおとぎ話から9ヵ月後にレスターに解任された、クラウディオ・ラニエリのインサイドストーリー)」と題された記事です。アシスタントマネージャーのクレイグ・シェイクスピアとの確執、選手たちの困惑と混乱、スタッフの落胆などの生々しい話が語られており、ジョン・パーシー記者は「昨季のモウリーニョ監督の退任劇を思い出させる」「この変更がなければ降格は不可避だった」と明快にいい切っています。

どこまでが客観的な事実で、記者の主観がどれだけ入っているのかはわかりませんが、周辺情報を膨らませただけではこれほど具体的な記事は書けないでしょう。2014-15シーズン終盤の最下位脱出からプレミアリーグ優勝までがあまりにハイスピードで、流れてきた多額のお金や誘惑に対処する方法を準備していなかったクラブが呑まれてしまったという面もあったのではないでしょうか。最高のチームを創り上げるのは時間がかかるのに、壊れるのはあっという間だなと、悔し涙を禁じ得ませんでした。グッバイ、ラニエリ。素晴らしい季節でした。しかしそのうえで、「レスターは2年連続で歴史を創った」というモウリーニョ監督の言葉が、今はただ重く胸にのしかかってくるような感覚があります。

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