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チェルシーを優勝に導けるのか?無冠の名将マウリツィオ・サッリの雑草キャリアを振り返る。

レッチェでプロデビューした元ユーヴェのキャプテンから、ナポリ出身の元銀行マンへ。コンテ監督の退任を発表したばかりのチェルシーが、すかさずマウリツィオ・サッリ監督と契約したとアナウンスしました。ナポリをチャンピオンズリーグの常連にした戦術家は、プレミアリーグ初体験。機能的なゾーンディフェンスと攻守の切り替えの速さが魅力の個性的なサッカーは、イタリアでは最も美しいといわれており、プレミアリーグでサッリを見てみたいと思っていたファンも多いのではないでしょうか。選手としても監督としても華やかなキャリアを積み上げてきた前任者に対して、サッリが歩いてきたのは茨の道でした。28年前にタイムスリップして、異色の指揮官の履歴を振り返ってみましょう。

1990年に31歳だったサッリは、最も歴史がある銀行として知られるモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナで働きながら、スティアで指導者としてのキャリアをスタート。二足のわらじを10年続けた後、2000-01シーズンに6部のサンソヴィーノを率いることになり、金融業界に別れを告げています。2006‐07シーズンにアレッツォの監督に就任するも、成績不振で辞任させられ、クラブはセリエC1に降格。翌シーズンに率いたアヴェッリーノは、2年も経たないうちに財政難で破綻しています。2008-09シーズンには、以前に中田英寿が所属していたペルージャをセリエBに復帰させるというミッションを果たせず、ウンブリア州の名門も1年後に経営破綻してしまいました。既に50歳になっていた戦術家は、思うように結果を出せず、下部リーグのワケありクラブを渡り歩く監督となっていました。

2010-11シーズンには、アレッサンドリアを4部に転落させてしまいます。この頃の彼を見て、いずれプレミアリーグから声がかかるとは誰も思わなかったでしょう。2011-12シーズンに率いた3部のソレントは惜しくも4位に終わり、セリエB昇格のチャンスを逃しましたが、2012年から指揮を執ったエンポリで、ようやく彼の戦術が注目されるようになりました。2013-14シーズンのセリエB2位でプロヴィンチアを昇格させ、初めてトップリーグのクラブを率いることになったサッリ監督は、2014-15シーズンのセリエAで8勝18分12敗と粘って15位フィニッシュ。攻撃的な戦術を高く評価された指揮官に声をかけたのは、レアル・マドリードに呼ばれたラファエル・ベニテスの後任を探していたナポリでした。

当時の記事を読むと、トップクラブでの経験のなさを不安視する声が挙がっています。昇格クラブを残留させただけの監督を連れてくるのは、やはりギャンブル。プレミアリーグでいえば、マンチェスター勢がハル・シティの頃のマルコ・シウヴァやボーンマスのエディ・ハウを抜擢するようなものです。チャンピオンズリーグを制覇した経験がある監督の後釜として、56歳の叩き上げに白羽の矢を立てたナポリの慧眼には、頭が下がります。

ユヴェントスでセリエA3連覇、プレミアリーグ初年度優勝と国内リーグで4回勝ったアントニオ・コンテの後を継いだ無冠のマネージャーは、監督に厳しいオーナーの下で成功することができるでしょうか。アブラモヴィッチ氏が連れてきた3人のイタリア人は、プレミアリーグかチャンピオンズリーグを制覇したうえで、FAカップ優勝も果たしています。前季のプレミアリーグで5位に沈んだうえに、トランスファーマーケットで出遅れたピットスタートのクラブで、策士はどんなアクセルを踏むのでしょうか。初めての国外で迎えるサッリ監督の初陣は、3週間後に迫ったコミュニティシールドです。

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“チェルシーを優勝に導けるのか?無冠の名将マウリツィオ・サッリの雑草キャリアを振り返る。” への2件のフィードバック

  1. nor より:

    plも近づいてきましたね。中盤に誰をチョイスするのか、CFはやってくるのか、そしてクルトワ・アザール・ウィリアン・カンテ、、、
    個人的には、レンタルバックを活用した若い構成で試行錯誤してもらい、来季のCLで結果を残せるようなチーム力と、新しいスター誕生を見たいです。
    少なくとも1/4は入れ替わりそうなサッリ版新生チェルシーにまずは期待を持って開幕を待ちたいと思います。ちなみにゾラがスタッフに入るとしたら保険ですかね、、

  2. タムコップ より:

    ここまでサッリに関する丁寧懇切な記事を書いてくださったmakotoさんに感謝です。
    ピッチ上での主役はもちろん選手ですが、采配者のバックボーンを知った上でフットボールを観戦出来たらなおさら面白いですし!
    楽しませてもらいました!

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