狂った歯車は戻らず…マルコ・シウヴァがエヴァートンでうまくいかなかった理由。
2017-18シーズンにはワトフォードの監督に就任。開幕からの8試合は絶好調で、アウェイでの3勝1分を含む4勝3分1敗という戦績を残し、TOP4に食い込んでいました。アーセナルに残り20分からの2発で逆転勝利を収めた勇敢なチームは、コレクティブという言葉とともに高く評価され、彼はそのうちビッグクラブにステップアップするといわれました。順調だったマルコ・シウヴァ監督に、暗雲が垂れ込めたのは11月。トリガーは、エヴァートンのロナルド・クーマンの解任でした。流動性の高いモダンな戦術に惚れたマージーサイドと交渉中というゴシップが流れ、ワトフォードのフットボールは求心力と集中力を同時に失ったように見えました。
11月末のマンチェスター・ユナイテッド戦を2-4で落とすと、その後の10試合を1勝2分7敗とスランプに陥り、24節のレスター戦に完敗した直後の1月21日に解任の憂き目に遭いました。ひとたび歯車が狂うと、チューニングに時間がかかるデリケートな戦術を目撃した後も、エヴァートンの評価は変わらなかったようです。2018年5月31日、サム・アラダイス監督の後を受けてグディソン・パークへ。クラブの期待がいかに高かったかは、リシャルリソン、ベルナルジ、ディーニュ、ミナに8000万ポンド超という気前のいい補強に表れていました。
ここでも当初は順調に勝利を重ね、11月までのプレミアリーグ13試合を6勝4分3敗で6位。突如崩れたのは12月で、マージーサイドダービーでピックフォードのミスをオリギに突かれて敗れると、2月中旬までの13試合で3勝2分8敗と別のチームになってしまいました。ビル・ケンライト会長と筆頭株主のファルハド・モシリ氏は、8位という最終着地に納得できなかったでしょう。それでも彼らは、ワトフォードで見せた素晴らしい戦術を信じ続けて大型補強に打って出ます。アンドレ・ゴメス、グバミン、イオビ、デルフ、モイーズ・キーンは締めて1億ポンドオーバー。モイーズ退任以来、ビッグ6の一角崩しを目論んだ経営ボードは、最も期待したマネージャーが最も低い勝率しか残せないとは想像できなかったのではないでしょうか。
ロナルド・クーマンは勝率40.4%、ロベルト・マルティネスは38.1%、サム・アラダイスは37.5%。プレミアリーグ53試合で19勝11分23敗のマルコ・シウヴァは、唯一敗戦数が勝利を上回っており、勝率は35.9%に留まっています。彼は、何が足りなかったのでしょうか。最大の誤算は、グイェの後釜として期待していたグバミンの長期離脱でしょう。マン・シティから来たデルフはパスワークを身上とするセントラルMFで、アンドレ・ゴメスとポジションを争うタイプ。シュナイデルランは、セインツ時代の凄みをどこかに置き忘れたまま、つなぎ役として中盤をさまよっています。
チェルシーにレンタルバックとなったズマの代わりを獲れなかったのは、経営ボードのエラー。マイケル・キーンとミナは明らかに連携不足で、サブがホルゲートひとりでは競争原理が働きません。イオビはいい補強ですが、モイーズ・キーンを即戦力として計算するのはリスキーでした。3年後は主力として活躍してくれるかもしれませんが、現在は鳴かず飛ばずで、遅刻を咎められてスタンド観戦といったニュースばかりが目立ちます。ハマーズに移籍したセバスチャン・アレや、セインツのダニー・イングス、ボーンマスのカラム・ウィルソンのような点取り屋がいれば、「ジェンク・トスンを売りさばく」「リシャルリソンの負担を減らす」といった手を打てていたはずです。
プレスの約束ごとが複雑で、サイドの選手に細かいポジション修正を強いるマルコ・シウヴァのフットボールは、はまればビッグクラブを絶望させる破壊力を発揮する一方で、何かが少しでも狂えば全体がおかしくなるリスクを内包し続けているのだと思います。シェフィールド・ユナイテッドやボーンマス、ウルヴスのように、少数精鋭でオリジナリティの高いサッカーを続けるチームなら成功するのではないでしょうか。トータルで2億ポンド近い新戦力への投資は、彼を成功から遠ざける劇薬として作用してしまったのかもしれません。あまりにも苦しい1年半でした。「おつかれさまでした、いずれまたプレミアリーグで…」という月並みな言葉しか浮かびません。
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監督は辛い仕事なのですね。
もちろんこんな下の順位にいて戦力でもないけど、やっぱりウォルコット、イウォビ、シュナイデルランなどはじめビッククラブの準レギュラーをかき集めた感があるんですよねぇ。
金かけてるけど一貫性も感じられないし、監督としては結構やり辛いチームなんじゃないかなぁ。
モチベータータイプの監督のもと自由にやらせるのがベストなのかもしれませんが、それじゃあ上位に食い込むほどにはなれませんしね…。