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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

マンチェスター・ダービー展望~実は苦しいマンチェスター・シティ。早く埋めたい2つの穴

先週末、ゲームがなかったのは、マンチェスター・シティにとって慈雨のような「恵まれた日程」だったことでしょう。8月末にコンパニが全治1ヵ月の負傷。キャプテンの代わりに入った31歳のレスコットは峠を越えた感があり、不安定。ナスタシッチはケガ明けで、本調子まで時間が必要です。昇格チームにジャイアント・キリングを許したカーディフ戦がクローズアップされがちですが、スコア上は2-0で勝って順当にみえるハル・シティ戦もまた、ヒヤヒヤなゲームでした。前半5分にレスコットの軽いプレイからGKと1対1になったアルコが、あわててシュートを右に外さなければ、どうなっていたかわかりません。後ろに不安を抱えているからか、SBサバレタやコラロフの思い切りのいい上がりも見られず、攻撃に厚みを欠き、個人担保になりがちです。

さらについてないことに、獲得したばかりのデミチェリスが練習中にひざの靭帯を痛め、6週間の離脱です。アーセナルやマンチェスター・ユナイテッドが補強に苦しむ姿が目立っていたため、あまり話題になりませんでしたが、実はマンチェスター・シティも補強に失敗しているのです。コンパニが負傷した前後から、ペジェグリーニ監督は「DFを1~2枚補強する」といっておりましたが、狙っていたのはマラガでポジションを追われた32歳ではなかったはずです。

さあ、そんな状態でも「恵みの2週間」が明ければプレミアリーグの過酷なスケジュールは容赦してくれません。これからの4試合、マンチェスター・シティはやっかいな相手続きです。4節はホームで強いストーク、5節がマンチェスター・ダービー、そこから好調アストン・ヴィラ、曲者エヴァートンと続きます。とりわけ重要なのが、いわゆる「シックス・ポインツ(=勝者が勝ち点3を加え、敗者が獲るべき勝ち点3を落とすと実質6ポイントの影響があるのでそういわれます)」、マンチェスター・ダービーです。

マンチェスター・ユナイテッドは、リヴァプールに負けたものの、基本的にはさほど悪くはありません。リオ・ファーディナンドとヴィディッチのベテランCBコンビは好調。2週間あれば、ルーニーの額の傷も癒えるでしょう。香川真司やチチャリートはフレッシュで、ウェルベックは好調維持。ナニが使える算段もつき、ここにフェライニが加わります。マンチェスター・シティは、前述のとおりDFラインにコンパニ不在という大きな穴があり、ダービーにキャプテン・コンパニがベストコンディションで戻ってくるのはまず無理でしょう。そして彼らにはもうひとつ、気になる「穴」があるのです。そう、右サイドの穴。

今季、マン・シティの攻撃陣は、テベスがユヴェントスに去り、ヘスス・ナバスが加入しました。これ自体はいい補強です。純粋なウインガータイプのスペイン代表MFは、スピードがあり、ロングクロスも正確で、プレミアリーグでは多くのゲームで右サイドで優位に立つでしょう。ただしひとつ、問題があります。テベスに合って、ナバスにないもの。それは、「斜めへの斬り込み」です。

テベスはオールラウンダーで、パスも供給でき、自ら裏へ走り込んでシュートを放つプレイも得意で、ポジション取りは自由自在です。昨季までのマンチェスター・シティが怖かったのは、「サイドを狭く使う攻撃」でした。テベスが斜めに入り、ペナルティエリアのすぐ外から執拗にグラウンダーを出してくる連続攻撃。中央まで距離がないので、正確で速いボールが中に飛び込んできます。ジェコやアグエロは、これに合わせればいいだけ。左サイドでは、同じ動きをアグエロやナスリもやってきます。MFが中に入れば、SBのサバレタやコラロフが空いた外に構え、外に逃げれば今度はSBが斜めに走ってペナルティエリアに侵入してきます。昨季何度か、サバレタがペナルティエリア右外からミドルシュートを決めたシーンをご記憶の方も多いでしょう。斜めに来られると、ゾーンで守る相手SBにはCBやセンターMFとの受け渡しが発生し、捕まえにくいのです。

しかし今季は、ヘスス・ナバスが中に入るシーンはあまりありません。基本は縦。そして、そこからロングクロスが出ても、中にはジェコあるいはネグレドしかいない場面も多いのです。これでは相手に簡単に対応されてしまいます。マンチェスター・ユナイテッドのサイド攻撃は、サイドMFが縦に抜けたとき、ニアサイド、ファーサイド、中央に3人入ることが徹底されています(元日本代表監督のオシムさんも同様の戦術を語ってましたね)。中央に厚みを作ることで、クロスの選択肢が増え、相手の注意が分散し、こぼれ球への対応がしやすくなるわけです。ここまでの話をまとめると、こうなります。

「ヘスス・ナバスにテベスのような動きとSBとのコンビネーションを求めるか、さもなくばロング・クロスへの対応人数を増やさないと、彼は機能しない」。これが、現状の弱点。ゴールはネグレドのヘディングセンスまかせ。右サイド、ペナルティエリア外に空いた、2つめの穴。

マンチェスター・ダービーまでに、ペジェグリーニ監督がどこまで中央の守りと攻撃の厚みを修正できるのかが見ものです。みなさん、ヘスス・ナバスにパスが出たときの、周囲の動きを見ててください。新監督が修正できなかったら、マンチェスター・ユナイテッドと私の勝ち。見事に対応してきたら「違うじゃないか、いい加減なこと書くな」と私が叱られます。…この賭けは、悪くない賭けですね。間違いなく、私が有利です。(写真著作者/Gabrielcorbachobermejo)

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