イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

モイーズ監督に問う!「マンチェスター・ユナイテッドは欧州を見てるか?」

トッテナムがベイル資金で代表クラスの選手を大量に獲得し、チェルシーはドイツやオランダから若手を補強。さらに移籍市場終盤には、ウィリアンとサミュエル・エトーを獲得するという念の入れようです。マンチェスター・シティは弱点ポジションへの即戦力採用。層が薄かったCFと右サイドにスペイン代表を入れ、中盤の底をフェルナンジーニョで固めると、リヴァプールはコンセプチュアルにロジャース・スタイルの足場固めを淡々と進めます。移籍市場で苦戦したアーセナルでさえ、ケガ人続出のセンターMFに、勝手知ったるフラミニをあてがい、最後にメスト・エジル獲得の大ニュース。今季は、900億円の大商い。市場の活気は史上最高でした。プレミアリーグの上位クラブは、それぞれに昨季よりも大きく戦力強化がなされているようにみえます。

では、マンチェスター・ユナイテッドは?果たして、彼らは王者から転落するのでしょうか。それとも…?

デイヴィッド・ギルCEOとサー・アレックス・ファーガソンのダブル退任で、移籍市場でのスカウティングのノウハウと交渉力が弱体化したのは確かで、今季ほど、あちこちで「彼らのオファーを断った」という話が出回ったことはありませんでした。獲得までは秘密主義を守り、獲るとなれば電光石火で契約をまとめ、他クラブに先駆けて選手を抑え、8月上旬には「もう要らない」と宣言していた昨年までのファーガソンの姿を思い出せば、最終日まで大苦戦した今季のマンチェスター・ユナイテッドのバックオフィスが混乱していたのは間違いありません。とはいえ、ひとつだけ、このクラブには大きなアドバンテージがあります。それは「昨季、ぶっちぎり優勝を果たした主力メンバーが全員残留した」という事実です。言い換えれば、「目線を今季のプレミアリーグにだけ置くのならば、補強は1~2人でよかった」ということ。そしてそれは、9月2日に成就しました。エヴァートンのマルアン・フェライニの獲得です。

昨季のマン・ユナイテッド優勝の最大のポイントは、「他チームが苦戦して星を落とした中堅クラブとのゲームをことごとく勝ちきった」ことであり、トッテナムからは勝ち点1しか奪えず、年が明けてからはチェルシーやマンチェスター・シティに劣勢を強いられるなど、上位同士の対戦では大きなアドバンテージを得ていません。今季、一昨年の秋に見せた神がかり的な連勝を再現できるかどうかはわかりませんが、少なくとも下位チーム相手に取りこぼし続けるようなことは起こらないでしょう。そして実は、昨季よりも戦力的にも確実にUPしています。

・昨年の秋、入れ替わりで負傷離脱していたルーニーと香川が、今季はふたりとも健在
・ヴィディッチ復帰、リオ・ファーディナンドはコンディション良好
・ザハ、リンガード、ヤヌザイなど若手の成長
・マルアン・フェライニ加入

香川真司が加入した昨季は、新しいサッカースタイルを模索しましたが、日本代表MFはケガで不在となり、ファン・ペルシのゴールゲットぶりが凄すぎたためにその完成を見ぬまま、サー・アレックス・ファーガソンが引退しました。優勝チームの戦力をそのまま預かったモイーズ監督が、マンチェスター・ユナイテッドらしいサイド攻撃を踏襲し、舵取りを間違えなければ最後まで優勝争いに絡むところまではいけると思われます。

ライバルチームは、強化したとはいえ、テベスを出したマン・シティやベイルを失ったトッテナム、現状ではマタが機能していないチェルシーなど、マイナス要因もあります。サッカーは11人でやるものなので、いくらチームの人数が増えても、「結局ピッチの上でのプラスマイナスはどうなのか」で見なければいけません。今後はアーセナルでエジルが奇跡を起こしたり、ヨヴェティッチがその才能を爆発させるなど、さまざまなプラスアルファの可能性はありますが、現段階で明らかに強くなったチームはリヴァプールくらいでしょう。何しろ移籍市場が派手だったので、マンチェスター・ユナイテッドのダッチロールぶりを自虐的に嘆いておりましたが、まだまだ昨季チャンピオンにアドバンテージはありそうです。

むしろ気になっているのは、「あのクラシックなスタイルで欧州を勝てるか」です。プレミアリーグで独走中だった当時のファーガソン監督が、レアル・マドリードとのチャンピオンズリーグを戦った際、敵地で香川真司とルーニーを使ってドローに持ち込んだにも関わらず、ホームでふたりを外し、従来のサッカーに戻したのは衝撃的でした。マンチェスター・ユナイテッドの「欧州で勝つためのサッカー構築」が頓挫した瞬間です。そして、ここまで見る限りは、モイーズ監督は前任者よりもさらに古典が好きなようです。しかし、レアル・マドリードにあれだけ一方的に押されたのに、何も変えずにどうやってバイエルンやバルセロナに勝とうというのか…。

私の嘆きのほんとうの理由はここにあります。「ああ、若手監督と新体制のフロントは、ヨーロッパを勝つ気がないんだな」と。セスクやチアゴを熱望し、SBを獲るべきといっていたのは、あくまでもヨーロッパで勝ってほしいから。ヴェンゲルはとにかくタイトル、ペジェグリーニとモイーズはプレミアリーグしか視界に入ってなさそうです。今、いちばん遠くまで目を向けている監督は間違いなくジョゼ・モウリーニョでしょう。今季、イングランドのクラブはどこまでいけますかね。プレミアリーグは盛り上がりそうですが、欧州では枕を並べて討ち死にしてもおかしくありません。2年連続で、2月の寒さに震えるのは勘弁願いたいものですが…。

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


コメントを残す