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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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衝撃の惨敗、進まぬ補強…「プレミアリーグに適応するのに時間がかかる」のはファン・ハール監督!?

掲載紙が、イギリスで高級紙に分類される「インディペンデント」というところで少し立ち止まりかけますが、あくまでもゴシップのひとつとして紹介されているのでしょう。マンチェスター・ユナイテッドは、ビダル獲得を諦めておらず「香川真司とのトレード+移籍金」という形にして、支払い額の軽減を図っているとのこと。うーん、これは、マンチェスター・ユナイテッド側の下心みえみえの「一石二鳥プラン」。ユヴェントス側にメリットがなさそうですね。

3バック、3センター、2トップのユヴェントスには、「走って守れるチェントロカンピスタ」ポグバとマルキジオに加えて絶対的司令塔ピルロがおり、香川真司のようなトップ下のニーズはないのではないでしょうか。香川にとっても、ファン・ハール監督に「トップ下の控え」と明言されている現在と、環境の厳しさはさほど変わらないと思います。おそらく、ビダルは無理でしょう。ダレイ・ブリント、グアリンらの名前も時折見かけますが、キャピタルワンカップで衝撃のジャイアントキリングの主役となったマンチェスター・ユナイテッドの補強は、遅々として進んでいないように見えます。

それにしても、一昨日のゲームは衝撃的でした。ジョニー・エヴァンスの致命的なミスパスで先制されたのはいただけませんが、前半はまだ1-0。リーグ1(3部相当)所属のミルトン・キーンズ・ドンズ相手なら、慣れた4バックに切り替えて、落ち着いて攻撃すれば勝てたと思われます。しかし、ファン・ハール監督は、ビハインドを背負ったゲームにも関わらず、ハーフタイムにDFの一角を代えてまで守備の安定に固執します。ところが、これが完全に裏目。マンチェスター・ユナイテッドは後半に入ると、何かに魅入られたようにパスミスを重ね、MKドンズのカウンターの餌食になってしまいました。

2点めのシーンでは、サイドからの突破にエヴァンスが中央から引っ張られると、中央にいたアンデルソンとマイケル・キーンは、コースも切らずマークにもいかない中途半端なポジションでフリーのシュートを許します。自陣でボールを失った3点めは、ベルギー人DFフェルミールとマイケル・キーンが棒立ちになり、FWふたりがノーマーク。フェルミールがイージーな縦パスを後逸した4点めは、ゴール前でペレイラが完全にかわされてしまいました。先発だった香川真司の貴重なアピールチャンスは、前半20分の脳震盪による不運な交代で幕を閉じました。

シュートわずか4本、言い訳無用の4-0惨敗に、ファン・ハール監督の敗戦の弁は支離滅裂。「チームづくりには時間がかかる」といっておりましたが、「チームづくりのためのスタメンじゃなくて、若手でも勝てるとナメてただけじゃないですか」とツッコミを入れたくなりました。おそらく彼は、イングランドでは「寄せ集めメンバーでバラバラなプレミアリーグ所属クラブより、まとまりのある3部チームのほうが強いことがある」とは想像もしなかったのでしょう。

昨日は、言葉が出てこないぐらいのショックでしたが、「プレミアリーグのゲームじゃなくてよかった!」と、明るく考えることにしました。若手の成長の場や、控え選手のアピールの機会にもなりえるキャピタルワンカップを失うのはしんどいですが、今季はとにかく「プレミアリーグに完全集中」ですから。

これまでのコメントを読むと、ファン・ハール監督のチームづくりの進め方にも問題があるように思います。8月上旬に「放出候補に話をして、自分で移籍先をあたってもらう」と語ってましたが、これによってモチベーションの下がった選手が、新しい職場が見つからないまま残留すれば、チームには悪い影響しか残りません。昨日の試合でも、GKデヘアと若手以外は「自分は戦力外だからこの試合に出ている」と思っていたかもしれません。

モウリーニョ監督の構想からはみ出ていたであろうダヴィド・ルイスを、早々と好条件でパリに売り抜けたチェルシーや、SBマンキージョ獲得決定から1週間もしないうちにマーティン・ケリーを放出したリヴァプールのように、「まずは早期補強と構想外の選手売却→補強成功後、不要な選手放出」としていれば、プレミアリーグが始まってから人材不足に苦しむことはなかったはずです。新監督が着任してから2~3週間あった「現有戦力の見極め期間」は、放出候補がいると明言してしまったために、マスコミを騒がせてチームに不安を蔓延させ、適材補強のタイミングを先送りしただけだったのではないでしょうか。

昨季のモイーズ監督のときもそうでしたが、どん底に落ちても、チームがよい方向に向かっている限りは監督を信じたいと思っています。とはいえ、プレミアリーグに適応するのに時間がかかるのは、ディ・マリアやロホよりも、ファン・ハール新監督かもしれません。「1ヵ月や1年でチームを創るのは無理」と、ネガティブな発言をしておりましたが、プレミアリーグ4位奪取が絶対命題のマンチェスター・ユナイテッドには、シーズンが始まってなお、チームづくりにのみじっくり専念する時間はありません。

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“衝撃の惨敗、進まぬ補強…「プレミアリーグに適応するのに時間がかかる」のはファン・ハール監督!?” への7件のフィードバック

  1. ASAP より:

    チームとしての成熟度(練度)も、常勝の重要なファクターですよね。
    しかも即効性がないので、ある程度時間がかからざるえない。

    昨シーズンのSpursはそれに苦しみ、
    今シーズンのLiverpoolも懸念材料になっています。
    Arsenalの万年4位も主力が断続的に流出していたところにありますし
    (選手の移籍願望はチームの状態と関わっているので裏表の話ではあるのですが)。

    いまさらこんな話を蒸し返してもしようがないのですが、
    昨シーズンのManchesterUnitedの停滞は、
    Moyes監督の手腕もさることながら、
    前任者のFerguson御大が、
    チームの端境期にバトンタッチしたところに原因があり、
    それが今も尾を引いているという印象があります
    (Sirが自身の「有終の美」に固執したのでしょうか?)。

    それにしても「プレミアリーグのゲームじゃなくてよかった!」という
    姿勢はサポーターの鏡ですね(笑)

  2. makoto より:

    ASAPさん>
    おっしゃるとおり、サー・アレックスのバトンタッチのタイミングは厳しかったですね。香川真司とルーニーは、新しいスタイルを固めないまま御大が去って、2季連続で全く違うサッカーと付き合っているので、完全に振り回されています。

    もうひとつ、気になっているのは、両サイドに2人ずついて、サイドからスピーディに攻めてくるクラブが多いプレミアリーグでは、サイドに2枚ずついる3-4-3ならともかく、3-4-1-2はきついんじゃないか、ということです。
    左はディ・マリアとルーク・ショー、右はルーニーあるいはマタとバレンシアが入る3-4-3ならおもしろそうですね。

    ホントに、プレミアリーグじゃなくてよかったです。プレミアリーグの4位に入ることを約束してもらえるなら、FAカップも早々に3部のクラブに負けてもいいとすら思います(笑)

  3. Uボマー より:

    ブレンダン・ロジャースの言った通りになっちゃってますね。
    makotoさんがしばしば言及しているように下位と上位に大きな差が無いイングランドフットボールに監督が戸惑っている感じがします。

    W杯があったので出遅れはやむなし、ではあるものの、補強方針が迷走しているのも気になります。ショーとロホを獲ったものの、経験のあるバックスと中盤が足りないのは明白。それなのに監督が理想とするロッベンタイプの選手を獲りに行ったあたり、監督はまだプレミアを舐めているんじゃないかと思われても致し方ないところでしょう。

  4. makoto より:

    Uボマーさん>
    DFの弱さ、余裕のなさは深刻ですね。ディ・マリアに100億使うのは、経営的に問題ないならそれはそれでいいのですが、ベナティアに投資するなど、後ろの選手で「金満」と揶揄されるぐらいのことをしてほしかったです。バイエルンが払った36億ならその上でオファーを出せたはずですが、断られたんですかね?

  5. だしまる より:

    ちょっと記事には関係ないですが、先日ユナイテッドの収支について伺ったので自分なりに考えてみました。この一年間でCL圏に戻れないと収入は減り、借金の返済とFFPが本格稼働するという3重苦が待ち受けています。負のループの入り口が見え始めます。この一年間は猶予期間として、いよいよ経営戦略が立ち行かなくなるかどうかなのは来シーズンの結果次第ということですね。(オーナーが変わるというのも選択肢の一つですが…強欲なグレイザーが手放したがるかどうか)
    長くなりましたが、この一年間は土台作りに精をだしたほうがいいのかなあと思います。というか、3バック続けるのなら3CB経験者で若手の手本となれる選手とったほうがいいかと。

    —–
    私はオードソックスな4-2-3-1にした方が良いと思ってるのですがファンガールはあくまで3-4-1-2に拘るんですかね。
    そして、ディフェンスリーダーの補強をこの時期になっても行われていないってのはキツイですね。

    —–
    完璧主義者ファンハールの未来はどうなるのか?
    かつて、彼は、「プロフットボールは観客のためにあるべきものだ。だから勝利するために自分の攻撃フットボールの信念を捨てようなどと考えたこともない。私は自分を裏切るつもりはない」と語っています。
    さてさて、どこまで、自分の信念を貫けるでしょうか。

    財力に支配されつつあるサッカー界で、愚直なまでに自分自身への誠を進む姿を見てみたいとも思います。

  6. makoto より:

    リバサポさん 本城さん だしまるさん>
    本城さんのおっしゃるとおり、私はサイドの人数が少ない3-4-1-2は、サイドに人数をかける攻撃が基本のクラブが多いプレミアリーグでは難しいのではないかと思っています。3バックにするなら、3トップですね。リバサポさんやだしまるさんのご意見で重要なのは、今季を土台作りとするにしても、今季からアクセルを踏んで勝負するにしても、「信念をもって長期的な視点でチームづくりをする」ことだという認識です。最悪なのは、「ファン・ハール3バックがダメだったから、次は別な監督で4バック」などとして、行き当たりばったりの補強・育成に終始してしまうことでしょう。

    3バック経験者は少ないので難しいのですが、獲るとすれば代表で経験のあるフラールや、ユーヴェのCBあたりですね。

  7. ASAP より:

    レスが遅くなってしまって申し訳ありません…

    makotoさんの仰るとおりで、3-「4」-1-2は、例えば「4」-「4」-1-1(3列表記:4-4-2)を敷くチームと相対した場合、1対2のシチュエーションを恒常的に作られるために火ダルマになるケースが少なくありません。

    Van Gaal監督が、Manchester Unitedで3バックを選択したのは、選手層からの逆算(「このチームだと、4バック、キツイかも…」)だと思いますが、だとしても、センターがEvans、Phil Jones、そしてSmalling(!)のいずれかというのは、率直に言って心許ないですよね(これは穿った見方ですが、3バック採用には、直近のW杯の手応えが少なからず影響しているのかもしれません)。

    もし今シーズンは3バックでフィックスならば、Vlaarを獲りにいくのはなるほど。現状、最適解になりそうですね。PLの水も知ってるし、下手をするとRojoの半分くらい(?)でコストパフォーマンスもいい(今だと足元見られちゃいそうですが…)。

    前線に目を移してみても、Manchester Unitedは、新規加入選手以外にも、そもそもフランクで生きそうな選手を抱えている(いた)ように見える(例えばWelbeckやZaha)。にもかかわらず、彼らがくすぶるようなシステムになっているのも、気になるところなんですよね。

    今後想定される最悪のシナリオは、これからの試合でVan Persie無双、Rooney無双が発動し、なまじ勝ちを拾ってしまうことで、こちらのコメント欄で上げられたような問題の根本的解決のないまま、気づいた時には手遅れになっていることでしょうか(負けっぱなしは勿論アウトなので、本当にセンシティブな問題ですが…)。

    それもこれも、makotoさんが再三やんわりと指摘している、強化部の右往左往に帰結するのかもしれません…

    以上、軒先をお借りしてまとまりのない乱文失礼いたしました。老婆心からの追記ですが、本件に関するレス等はご不要です。

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