2023.12.23 マンチェスター・ユナイテッドの話題
右往左往、朝令暮改、交渉下手…FDが元凶だったマンチェスター・ユナイテッドの補強失敗事例集!
プレミアリーグ2023-24シーズンにおけるマンチェスター・ユナイテッドの不振について語るとき、真っ先に挙げられるのは大量の負傷者でしょう。最終ラインはリサンドロ・マルティネス、マラシア、リンデロフ、マグワイア。中盤はカゼミーロ、メイソン・マウント、エリクセンが不在で、指揮官と揉めたサンチョを失った前線はアマド・ディアロを欠いています。
では、彼らが復帰すれば、3位でシーズンを終えた昨シーズンのクオリティを取り戻せるのか。あるいはさらに、上をめざせるのか。事はそう簡単ではないようです。最終ラインと中盤の主軸が復帰すれば、オールド・トラフォードでボーンマスに3つも喰らって敗れるような試合は減りそうですが、前線の顔ぶれは変わりません。
シュートが枠にいかないラシュフォードや、ゴール前でボールをもらえないホイルンドの悩みを解決するためには、彼らと中盤を連携させる策が必要です。あらためてスカッドを見渡すと、アントニーは空回りし続けており、メイソン・マウントがフィットするイメージも未だなし。この1年半の補強を振り返ってみると、文句なしといえるディールはほとんどありません。
マンチェスター・ユナイテッドのOBやサポーターの多くは、グレイザーファミリーがクラブを手離さない限りは、長期的な強化は進まないと考えているようです。クラブの強化より自らの儲けを優先するオーナーが最大のネックという声には賛同するものの、そこまで辿り着くには相応の時間がかかるでしょう。サー・ラトクリフの参入ですら、未だに決まっていないのです。
クラブが低迷するなかで、11月にリチャード・アーノルドCEOが退任を発表しました。年末までは移行期間としてサポートすると語った彼の後釜選びは、年明けまでかかりそうです。節目となるこのタイミングでもうひとり、責任の所在を明らかにしたい人物がいます。フットボールディレクターのジョン・マータフ。現状の不振の一端は、彼が仕切った補強の失敗にあるからです。
「アスレティック」のローリー・ウィットウェル記者が、2013年12月にデヴィッド・モイーズの紹介で加わったマータフの足跡を辿っています。エド・ウッドワードに重用され、サー・アレックス・ファーガソンの影響力の排除に腐心してきたビジネスマンは、少なくともフットボールディレクターをまかせるべき人材ではないでしょう。
あらためて、テン・ハフ就任後のディールを振り返ってみたいと思います。アヤックスでの実績を評価して招聘した指揮官の最初のオーダーは、中盤を統括するフレンキー・デ・ヨンク、左利きのCB、そして実績があるストライカー。マータフFDがうまくやったといえるのは、アーセナルとの争奪戦を制したリサンドロ・マルティネスとフリーで獲ったエリクセンだけです。
一時はバルセロナと9300万ポンドで合意していたデ・ヨンクは、本人を口説けず。セカンドチョイスのカゼミーロは、初年度のCL出場権獲得に貢献してくれたものの、30歳に移籍金総額7000万ポンドと週給35万ポンドを支払うパワープレーでした。指揮官の言いなりだったマラシアは、妥当な補強だったのか。そして最大のモヤモヤは、8600万ポンドを投じたアントニーです。
マータフFDの動きを追った前述の記事は、アヤックスにいたブラジル人FWはスールシャールの頃からのターゲットだったといっています。当初の評価は2500万ポンド。昨夏の最初のオファーは6000万ポンド。さらに2600万を上乗せしたディールについて、ファン・デル・サールCEOは、「アーノルドとマータフに、可能な限り高く売れるようにチャレンジした」と述懐しています。
大幅な予算オーバーで、FFPを気にしなくてはいけなくなったマン・ユナイテッドは、冬のマーケットでも失敗しています。退団したクリスティアーノ・ロナウドの後任として、獲得に迫っていたコーディー・ガクポは、PSVも前向きだったそうです。ところが年末になって、完全移籍は無理と見てレンタルに切り替えるという過ちを犯し、リヴァプールにさらわれてしまいました。
第二希望のヴァウト・ヴェグホルストは、プレミアリーグ17試合ノーゴール。エリクセンの負傷を受けて獲りにいったライアン・フラーフェンベルフはバイエルンに難色を示され、代案として提示されたザビッツァーに飛びつきました。交渉スタートから3時間でディール成立と聞いて、計画性のある補強だと思う人はいないでしょう。
「テン・ハフの2回めの夏も、緩いプラン、価格の高騰、予算の破綻という同じパターンをなぞった」(ウィットウェル記者)。4000万ポンドと見積もっていたメイソン・マウントは総額6000万ポンドまで上がり、ホイルンドに5000万ポンドで退団できると伝えたアタランタは、7200万ポンドまで吊り上げました。
ここで並べた評価額と実額のギャップは6000万ポンドを超えています。アントニーのオープニングオファーに6000万ポンドを足すと1億2000万ポンド。バイエルンがハリー・ケイン獲得で費やした額です。かくして「プランニング、ターゲティング、評価、スカウティング、交渉がすべて得意とはいえないFDが仕切るとこうなります」とプレゼンするための貴重な事例が完成しました。
以上、今回はマイケル・エドワーズ、チキ・ベギリスタイン、エドゥがいかに素晴らしいディレクターであるかを紹介させていただきました。負傷者続出という不運があったとはいえ、過去2年で期待以上に活躍した新戦力はジョニー・エヴァンスのみというチームが、優勝争いに参加できるはずがありません。
夏の放出候補だったマクトミネイとマグワイアの奮闘で何とか7位という現状も、ディレクターの失敗を雄弁に物語っています。冬の予算はレンタル2人だそうです。サンチョ、カゼミーロ、マルシアルの売り先を探しているFDの後継者こそが、最高の新戦力なのではないでしょうか。最近は、久保建英を獲るためにアントニーをレンタルというゴシップもありましたね…(泣)。
では、彼らが復帰すれば、3位でシーズンを終えた昨シーズンのクオリティを取り戻せるのか。あるいはさらに、上をめざせるのか。事はそう簡単ではないようです。最終ラインと中盤の主軸が復帰すれば、オールド・トラフォードでボーンマスに3つも喰らって敗れるような試合は減りそうですが、前線の顔ぶれは変わりません。
シュートが枠にいかないラシュフォードや、ゴール前でボールをもらえないホイルンドの悩みを解決するためには、彼らと中盤を連携させる策が必要です。あらためてスカッドを見渡すと、アントニーは空回りし続けており、メイソン・マウントがフィットするイメージも未だなし。この1年半の補強を振り返ってみると、文句なしといえるディールはほとんどありません。
マンチェスター・ユナイテッドのOBやサポーターの多くは、グレイザーファミリーがクラブを手離さない限りは、長期的な強化は進まないと考えているようです。クラブの強化より自らの儲けを優先するオーナーが最大のネックという声には賛同するものの、そこまで辿り着くには相応の時間がかかるでしょう。サー・ラトクリフの参入ですら、未だに決まっていないのです。
クラブが低迷するなかで、11月にリチャード・アーノルドCEOが退任を発表しました。年末までは移行期間としてサポートすると語った彼の後釜選びは、年明けまでかかりそうです。節目となるこのタイミングでもうひとり、責任の所在を明らかにしたい人物がいます。フットボールディレクターのジョン・マータフ。現状の不振の一端は、彼が仕切った補強の失敗にあるからです。
「アスレティック」のローリー・ウィットウェル記者が、2013年12月にデヴィッド・モイーズの紹介で加わったマータフの足跡を辿っています。エド・ウッドワードに重用され、サー・アレックス・ファーガソンの影響力の排除に腐心してきたビジネスマンは、少なくともフットボールディレクターをまかせるべき人材ではないでしょう。
あらためて、テン・ハフ就任後のディールを振り返ってみたいと思います。アヤックスでの実績を評価して招聘した指揮官の最初のオーダーは、中盤を統括するフレンキー・デ・ヨンク、左利きのCB、そして実績があるストライカー。マータフFDがうまくやったといえるのは、アーセナルとの争奪戦を制したリサンドロ・マルティネスとフリーで獲ったエリクセンだけです。
一時はバルセロナと9300万ポンドで合意していたデ・ヨンクは、本人を口説けず。セカンドチョイスのカゼミーロは、初年度のCL出場権獲得に貢献してくれたものの、30歳に移籍金総額7000万ポンドと週給35万ポンドを支払うパワープレーでした。指揮官の言いなりだったマラシアは、妥当な補強だったのか。そして最大のモヤモヤは、8600万ポンドを投じたアントニーです。
マータフFDの動きを追った前述の記事は、アヤックスにいたブラジル人FWはスールシャールの頃からのターゲットだったといっています。当初の評価は2500万ポンド。昨夏の最初のオファーは6000万ポンド。さらに2600万を上乗せしたディールについて、ファン・デル・サールCEOは、「アーノルドとマータフに、可能な限り高く売れるようにチャレンジした」と述懐しています。
大幅な予算オーバーで、FFPを気にしなくてはいけなくなったマン・ユナイテッドは、冬のマーケットでも失敗しています。退団したクリスティアーノ・ロナウドの後任として、獲得に迫っていたコーディー・ガクポは、PSVも前向きだったそうです。ところが年末になって、完全移籍は無理と見てレンタルに切り替えるという過ちを犯し、リヴァプールにさらわれてしまいました。
第二希望のヴァウト・ヴェグホルストは、プレミアリーグ17試合ノーゴール。エリクセンの負傷を受けて獲りにいったライアン・フラーフェンベルフはバイエルンに難色を示され、代案として提示されたザビッツァーに飛びつきました。交渉スタートから3時間でディール成立と聞いて、計画性のある補強だと思う人はいないでしょう。
「テン・ハフの2回めの夏も、緩いプラン、価格の高騰、予算の破綻という同じパターンをなぞった」(ウィットウェル記者)。4000万ポンドと見積もっていたメイソン・マウントは総額6000万ポンドまで上がり、ホイルンドに5000万ポンドで退団できると伝えたアタランタは、7200万ポンドまで吊り上げました。
ここで並べた評価額と実額のギャップは6000万ポンドを超えています。アントニーのオープニングオファーに6000万ポンドを足すと1億2000万ポンド。バイエルンがハリー・ケイン獲得で費やした額です。かくして「プランニング、ターゲティング、評価、スカウティング、交渉がすべて得意とはいえないFDが仕切るとこうなります」とプレゼンするための貴重な事例が完成しました。
以上、今回はマイケル・エドワーズ、チキ・ベギリスタイン、エドゥがいかに素晴らしいディレクターであるかを紹介させていただきました。負傷者続出という不運があったとはいえ、過去2年で期待以上に活躍した新戦力はジョニー・エヴァンスのみというチームが、優勝争いに参加できるはずがありません。
夏の放出候補だったマクトミネイとマグワイアの奮闘で何とか7位という現状も、ディレクターの失敗を雄弁に物語っています。冬の予算はレンタル2人だそうです。サンチョ、カゼミーロ、マルシアルの売り先を探しているFDの後継者こそが、最高の新戦力なのではないでしょうか。最近は、久保建英を獲るためにアントニーをレンタルというゴシップもありましたね…(泣)。
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