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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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ガナーズに選ばれしレフティと、叶わなかったドリブラー。ニコラ・ペペとザハ、3年めの明暗。

「(ニコラ・)ペペはいい選手だけど、もう少し時間が必要だと思っていた。本音をいえば、リーグを知っている選手に来てほしかった。フィットするための時間を必要としないからね。クリスタル・パレスのザハと会った。彼は自らの力で勝利を引き寄せられる。私は獲得を望んでいた」

2020年5月、「デイリー・メール」のインタビューに応じたウナイ・エメリは、リールで頭角を現した新鋭よりもプレミアリーグ屈指のドリブラーがほしかったと述懐しています。結果論ではありますが、クラブレコードの7200万ポンドを費やして獲ったニコラ・ペペより、クリスタル・パレスが8000万ポンドを主張したザハを引き入れたほうがよかったのかもしれません。

その後、2人のコートジボワール代表が辿った足跡を振り返ってみましょう。2019-20シーズンのザハは、移籍騒動によって調子を崩してしまい、リーグ戦38試合4ゴール5アシストという不本意な数字に終わっています。プレミアリーグ初年度だったニコラ・ペペは、エメリの懸念通りフィットに時間がかかり、31試合5ゴール6アシスト。気持ちを切り替えたドリブラーと、ノースロンドンに慣れたレフティは、2020-21シーズンにはそれぞれ持ち味を発揮しました。

この年のザハは、プレミアリーグ30試合11ゴール2アシスト。ニコラ・ペペは29試合10ゴール1アシストで、ヨーロッパリーグでは13試合6ゴール4アシストという数字を残してチームの準決勝進出に貢献しました。そして、3年め。10試合4ゴール1アシストのザハに対して、ガナーズの右ウイングは7試合ノーゴールと苦しんでいます。

ドリブルランキングを見ると、23回でリーグ8位のザハに対して、13回のニコラ・ペペは39位。右サイドから強引に突破しようとするシーンが目立つニコラ・ペペはボールロストが多く、冨安健洋を困らせています。一方、ザハのプレス209回は、プレミアリーグのFWでNo.1。守備のクオリティは、ヴィエラとアルテタの違いという言葉だけでは説明できない差があります。

私がニコラ・ペペとザハについて書こうと思ったのは、「フットボールロンドン」が「ユヴェントスのクルゼフスキを獲得するために、ニコラ・ペペを売却する可能性がある」という記事を配信していたからです。この話は、成立しないでしょう。両者とも左利きの右ウイングですが、ユーヴェで11試合ノーゴールに3150万ポンドを投資して、昨季プレミアリーグで2ケタゴールを2500万ポンドで売るというのはあまりにもリスキーです。

2年前のガナーズのジャッジを、今になって咎めようとは思いません。ザハに8000万は払えなかったのでしょう。とはいえ、現在の経営ボードが半額以下の売却を検討しているのだとすれば、ペペの7200万ポンドもギャンブルだったのだなと思います。いや、まだ終わったわけではありません。アルテタ監督が、最近になって採用している4-4-2で、2トップの右をまかせてみたらおもしろいのではないでしょうか。

明暗分かれる3年めを過ごしている2人は、2021-22シーズンが終わったとき、どんな評価を得ているのでしょうか。豪快なドリブルと強烈なミドルを持つニコラ・ペペは、ひとたび無双状態になれば、スタンドのテンションが爆上がりになるエンターテイナーです。昨季プレミアリーグの後半戦で、17試合8ゴールと結果を出したレフティの巻き返しを期待しています。


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