偏愛的プレミアリーグ見聞録

「TAKI MARRIAGE OR SHIRT?　YNWA」。2022年3月24日、敵地でオーストラリアを0-2で下した日本代表が、FIFAワールドカップカタール大会に出場決定。試合後のスタンドに「タキ、私と結婚するか、シャツをちょうだい」というボードを見つけたときは、びっくりしました。

「タキ」「YNWA」ということは、レッズサポーターの方ですね。日本代表のユニフォームを纏った彼女の前にいた赤いシャツの男性は、連れなのかもしれません。その視線は、ずっとタキを追いかけていました。話題の主は、「ピッチでは見ていない。後でみんなに教えてもらった」とおっしゃってましたが、いやいや、気づいていたはずです。決定機に2本もクロスバーに当てたのは、結婚の是非を検討していたからでしょう。

この日のアコー・スタジアムの映像には、レッズのシャツとミナミノのプラカードがちらほら映っていました。われわれ日本人にとっては、ロード・トゥ・カタール2022の大詰めですが、彼らにとっては「クラブのスターがシドニーに来たぞ！」と盛り上がる貴重な機会だったのでしょう。凄いですね。今季は、南野拓実が世界じゅうのサポーターの心を動かしたシーズンだったともいえるのではないでしょうか。

2015-16シーズンにレスターで奇跡的な優勝を遂げた岡崎慎司は、プレミアリーグのみの6ゴール。イングランドでの最多ゴールは、2017-18シーズンの7発です。2012-13シーズンにマンチェスター・ユナイテッドでプレミアリーグを制した香川真司は、20試合6ゴール4アシスト。チャンピオンリーグと国内カップではノーゴールでした。

今季の南野拓実は、彼らのスタッツを上回る23試合9ゴール1アシスト。カラバオカップで5戦4発、FAカップで4戦3発のカップ戦マイスターです。プレミアリーグは10戦2ゴールに留まっていますが、出場時間が86分なら「少ないチャンスで爪痕を残した」といっていいでしょう。サラー、マネ、フィルミーノ、ジョッタ、オリギにルイス・ディアスまで加わったチームで、これほどの数字を残すのは並大抵のことではありません。

「彼は素晴らしい男だ。なんてヤツ、なんて選手なんだろう！何しろ辛抱強い。他の選手たちと、フィールドの全面で競争しているということはいうまでもないだろう。でも彼は、いつも準備ができており、結果を残している。すごくいいヤツ。ゴールするたびに、うれしくなるね」
「彼はひたすら継続している。毎日、このレベルだ。トレーニングでも素晴らしいし、何があっても冷静で頼りになる」（ジェームズ・ミルナー）

FAカップ5回戦のノリッジ戦で2発決めた後、彼を称えたのはチームの副キャプテンだけではありませんでした。地元メディア「リヴァプールエコー」は、サポーターの反応をレポート。「理想的なチームプレーヤー。期待通りの仕事をしてインパクトを与え、しかも文句をいわない」「国内カップのモー・サラー」といった声を紹介しています。

目の肥えたサポーターたちの信頼を得たレッズの18番は、来季もアンフィールドに残るのでしょうか。サラー、ナビ・ケイタ、オリギらの去就次第という面もありそうですが、願わくばもうしばらく、プレミアリーグでプレイする姿を見続けたいと思います。いや、その前に、まずはシーズン2ケタゴール。チャンピオンズリーグで決めればレッズで出場した全大会ゴール、FAカップのMVP…残り2ヵ月も見どころ満載ですね！