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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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始まりは4億5000万ポンドのビッグサマー。リヴァプールがアルネ・スロットを解任した理由。

まさに急転直下、サプライズ。リヴァプールがアルネ・スロット監督の解任を発表しました。就任からわずか2シーズン。ユルゲン・クロップの後を継いだ初年度に、プレミアリーグ制覇という輝かしい戦績を残した指揮官は、なぜ職を失うことになったのか。公式サイトのステートメントの「前進し続けるために、変化が必要」は、フットボールクラブが監督を切るときの常套句です。

アストン・ヴィラ戦の直前のプレスカンファレンスで、「辞任なんて考えたこともない」とコメントしたスロット監督は、「経営ボードとの関係は良好」「来季も指揮を執る」と強調していました。プレミアリーグで5位を確保し、チャンピオンズリーグの出場権を獲得したことは、「最低限の結果を残した」ともいえるでしょう。

5月の上旬には、クラブOBのディディ・ハマンが「来季も続けると聞いている」といっていました。チェルシーがシャビ・アロンソにアプローチしたときも、リヴァプールは全く動いておらず、スロット残留は既定路線と見做されていました。「経営ボードは既に解任を決断」という「スカイ」のレポートを、よくあるゴシップとスルーした人が多かったのではないでしょうか。

「フェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)は、マイケル・エドワーズCEOとリチャード・ヒューズSDを通じて、スロット監督への揺るぎない支持を示してきた」。決定に至るプロセスを伝えた「テレグラフ」のジェイソン・バート記者、サム・ウォレス記者、ドミニク・キング記者は、「この2人は、オランダ人監督の解任においても中心的な役割を果たした」といっています。

彼らのレポートによると、最終的な決定を委ねられたヒューズSDが、土曜日にスロット監督に電話したようです。金曜日の午後に「スロット監督で新シーズンに臨むだろう」と語っていた関係者もおり、シーズンの振り返りから総合的な評価、最終ジャッジというフローは、ユルゲン・クロップもたじろぐようなスピーディーなショートカウンターでした。

2024年の夏に就任してから、公式戦トータルで66勝18分29敗。ただし2025-26シーズンは、28勝9分20敗という厳しい戦績でした。経営ボードは、サポーターの不満も考慮したのではないかと思われます。1-1のドローで終わったチェルシー戦でエングモアをイサクに代えると、アンフィールドは一斉にブーイング。アストン・ヴィラ戦の惨敗も、不信感を増幅させました。

スロット監督が解任に至った最大の理由は、何だったのでしょうか。「スカイスポーツ」のヴィニー・オコナー記者は「プレースタイル。フットボールの観点で下された決定」とレポート。「彼らは早いタイミングで弱体化していた」と指摘した「アスレティック」のリアム・サーム記者は、補強と戦術のミスマッチが本質的な問題と喝破しています。

エキティケ、イサク、ヴィルツ、フリンポン、ケルケズ、レオーニらに4億5000万ポンドを超えるビッグマネーを投じたリヴァプールは、彼らがフィットする布陣を探り当てるのに時間がかかり、攻守のバランスが崩れてしまいました。10月のカラバオカップのクリスタル・パレス戦と、CLのパリ戦で5バックを採用したのは、守備を改善したかったからです。

リアム・サーム記者は、刺激的な表現で指揮官の困惑を伝えています。「スロットの後任にとって、サラーの退団は好都合でもある。サラー、イサク、エキティケ、ヴィルツを組み込むとなると、選手の強みに沿わない役割に無理やり押し込むか、守備陣を手薄にする以外に明確な方法がないからだ」。試行錯誤の影響を受けなかったのは、エキティケだけともいえるでしょう。

最初のシーズンにクロップのレガシーを活用した監督は、4-2-3-1、2人の10番を配する4-4-2、ダイヤモンド型の4-4-2、サイド強化の5-4-1を導入したものの、納得できるシステムを構築できませんでした。適材適所で戦力を活かそうとした「必死のリアリスト」は、ハイプレス、ハイライン、ダイレクトアタックなどの強みを失い、「コンセプトの破壊者」になってしまったのです。

クロップのような人気者がコンセプトを貫き、エキサイティングなフットボールを続けていれば、サポーターは待ってくれたのではないでしょうか。リップサービスもキャッチ―なフレーズもないオランダ人指揮官は、これまでとは違う戦い方に足を踏み入れたからには、勝つしかありませんでした。2分2敗だった最後の4戦で勝てていれば、空気を変えられたのかもしれません。

フラーフェンベルフ、マック・アリスター、サラー、コナテ、ガクポといった昨シーズンの主軸が軒並み停滞し、輝いたのはショボスライのみ。アレクサンダー=アーノルドの後継者の不在も、サラーが絶不調に陥った理由のひとつです。客観的に見ると、2025-26シーズンの失敗における最大の原因は監督ではなく、スカッドの編成を誤ったスポーツディレクターでしょう。

大型補強に端を発したチームの混乱には、フリンポンの度重なる負傷やイサクの出遅れなど、誤算も含まれていました。指揮官を信頼しているなら、冬のマーケットでリカバーという選択肢もあったはずです。マン・シティに持っていかれたセメンヨとマーク・グエイは、足し合わせても8400万ポンドというお買い得案件でした。

「監督をクビにするならSDも」「リチャード・ヒューズが責任を取るべき」などという感情的な主張は、部分的には正しいのかもしれませんが、チームの改善にはつながりません。とはいえ、スロット監督には同情します。既存の戦力を活かして初年度に優勝を遂げたのに、たった1度のトランスファーマーケットが(短期的には)大失敗となり、その責任をひとりで取らされるのですから。

シャビ・アロンソを押さえにいかなかったのは、クロップからスロットと受け継いだ方向性とは異質の戦略家だからでしょう。ハイプレス、ハイターンオーバー、ダイレクトアタックをベースとするアンドニ・イラオラのほうが低リスクです。夏のトランスファーマーケットで、彼が必要とするタレントを揃えられれば、今季よりも戦えるチームになるでしょう。

このうえ、「スロットにもう1年やらせるべき」とはいいません。チームが不振に陥ったとき、フロントに立つ監督が責任を取るのが、この業界の慣わしです。ただし、「スロットを過小評価するべきでない」とは思います。初年度は優勝、2年めは苦しみながらCL出場権獲得。自らの引き出しをすべて開いて、戦い抜いたリアリストを称えたいと思います。


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