偏愛的プレミアリーグ見聞録

「ここ数年で彼が披露しているパフォーマンスは、トップ中のトップレベル。チームや最終ラインにおけるインパクトについていうなら、彼自身よりも他の選手に与える影響や全体を堅固にしていることを称えたい。以前のリヴァプールとは、まったく違うチームになった。プレミアリーグ最高のCBだ」（ヴァンサン・コンパニ）

「ピッチを離れても偉大だ。彼の人となりや性格について、うまく話せないんだけど…信じられないほどの人物、ドレッシングルームの素晴らしいリーダー。チームに加わった最初の瞬間から、みんなを押し上げてくれた。 毎日、彼の周りにいるのは楽しい。いつも笑顔で、素晴らしい心構えがあり、いてくれるとピッチとドレッシングルームに大きなインパクトをもたらすんだ。物事を適切に行い、模範を示してくれる。一緒にいるといい気分になれる。彼がプレーしていて、すべてのアワードを手に入れるのは当然だろう。彼にはその価値がある」（ジョーダン・ヘンダーソン）

マン・シティの前キャプテンと、リヴァプールの現キャプテンが、揃って影響力の大きさをリスペクトしています。リヴァプールの最終ラインに革命的な変化をもたらした世界最高のCB、ヴィルジル・ファン・ダイク。ジョー・ゴメスを落ち着かせ、ロバートソンの思い切りのいいオーバーラップを支え、アレクサンダー＝アーノルドが絶好の位置からクロスを狙えるロングフィードを事もなげに通す最終ラインの司令塔です。CKからのつまらない失点が減ったのも、ラインがずるずる下がるシーンがなくなったのも、絶え間なく指示を出し続け、自ら体を張ってストライカーを止める彼の存在感が成し遂げた進化でしょう。

コンパニとヘンダーソンの言葉に共感しつつ、オランダ代表キャプテンの称賛すべきポイントをもうひとつ付け加えたいと思います。ひとことでいえば、「いつもいること」。昨季のプレミアリーグは全試合先発で、6節のサウサンプトン戦の55分に肋骨を痛めて下がった以外にいなかった時間はなし。今季のプレミアリーグは29節までフルタイム出場です。2018-19シーズンはストライカーに1度も抜かれることなく、公式戦50試合6ゴール4アシスト。欧州を制覇したCLでは、2ゴール2アシストという数字を残しています。2019-20シーズンは41試合4ゴール2アシストで、イエローカードは1枚しかありません。

大事な試合でチームメイトを落ち着かせてきたCBは、最終ラインを統率するだけでなく、自身も進化を遂げています。昨季プレミアリーグでは、ジョルジーニョに次ぐリーグ2位となる3037本のパスを通しましたが、今季は2位のロドリを480本も引き離す2478本でぶっちぎりのTOP。逆サイドや前線に通すロングフィードの精度は、現在のほうが高いのではないでしょうか。空中戦の勝率は74.1％から75.2％に上がっています。スタッツをチェックしていて驚かされるのは、ファールの少なさです。昨季は38試合でたったの12回、今季は29試合で10回。フィジカルに長けたハードマーカーに常に先回りされたら、ストライカーがストレスを溜めるのも無理はありません。

「マネージャーは私に多くのことを要求して、今日のようなプレーヤーになるのを助けてくれた。その多くは戦術的なワークであり、考えることだった。われわれはディフェンダーとして、明確にハイラインをキープしようとしており、相手にプレッシャーをかけ続けている。背後に広大なスペースがあるので、それにも対処しなければならない。しかし、私は間違いなく楽しんでいる。このクラブに加わる前から、取り組む必要があったんだ。そう、確かに楽しんでいるし、今のところはうまくいっている」（ファン・ダイク）

彼にまつわる記事をチェックしていると、「あの素晴らしいディフェンスとビルドアップを早く観たい！」とむやみにテンションが上がります。リヴァプールがプレミアリーグ初制覇に近づいている今季は、アンフィールドに集うサポーターの前でトロフィーを掲げている姿を目撃したかったのですが…。選手としてピークを迎えているであろう稀代のCBと仲間たちに、一刻も早く活躍の場が戻ってくることを願ってやみません。