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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

【MAN.UTD×MAN.CITY】 (2)「変化」と「徹底」がもたらす2強のマッチレース

前半を2-0で折り返したユナイテッド。これなら楽勝、と思っていましたが、そもそもこの試合、開始当初はシティが圧倒的に押していたのですから、そんなにたやすく勝てるわけがないのです。人間、都合のいいことが起こると、あっけなく過去の苦労を忘れてしまうんですね。ああ…。

前半いっぱいとハーフタイムまで使って、コンパニ負傷による守備の乱れを修正したホームチームは、後半アタマからテべスを投入。これによってチームは息を吹き返し、ふたたびシティが一方的に攻める展開となり、60分にはヤヤ・トゥレがゴール。テべスの強いシュートをデヘアが一度はセーブしたものの、こぼれ球をつながれてフリーで打たれては失点やむなし。そして86分、コーナーキックからサバレタが決め、ついに2-2に追いつかれたのです。

マンチェスター・シティの最大の強みをキーワードでいえば、「変化」ではないでしょうか。相手にリードされたり、試合中に何らかの問題を抱えた時に、選手交代を活用しながら、チームに明確な変化を起こすことによって課題解決できる力。それを支えているのは、ワンタッチゴールを決めるのがうまいCFタイプのジェコ、技術とスピードがありカウンターアタックが得意なアグエロ、運動量が多くどこからでもシュートが打てるテべス、懐が深くボールキープ力があり意外性があるバロテッリといった個性が強い前線の選手を多く抱えていることです。これは、トーレス、スアレス、カソルラなどレギュラーが1枚抜けただけでクオリティが下がってしまうチェルシー、リヴァプール、アーセナルには絶対に真似できないこと。それぞれのFWのクオリティの高さはもちろん、彼らにパスを供給するダビド・シルバ、ナスリ、ヤヤ・トゥレらのパス精度が高いこともポイントです。よってピンチになれば前の選手を入れ替え、スタートは守備的なポジションをとっているヤヤ・トゥレをトップ下に上げたり、ナスリ、ミルナー、バリーなど中盤にも課題解決に有効な選手を投入するなど、さまざまな「変化」をわかりやすくダイナミックに演出して試合をひっくり返しにいくのです。これは、かなり怖い。

マンチーニ監督は、守備の戦術、規律は細かく作り込んでいる一方で、攻撃に関しては選手の自由にまかせる領域を多くとっているように見えます。それが、わがまま、気分屋な選手が多いこのチームをうまく切り盛りできているひとつの理由なのでしょう。戦略家としては一流ではないが、秀逸なモチベーターではある、といったところ。ただし、個人力に担保したこのサッカーで欧州を勝てるか、といえば微妙ですが…。

これに対してマンチェスター・ユナイテッドの強みは「徹底」。サー・アレックス・ファーガソンがタクトを振るそのスタイルは明確で、相手にリードされると前線からのプレッシャーを強め、早く長いボールを両サイドに通し、数的優位を作りながらいい形でクロスを上げ、それを中で待つ複数の選手が決めるという自分たちの形をひたすら繰り返します。まずはチャンスの絶対数を増やし、数が質を上げ、質が相手の体力と集中力を奪い、その連続性のなかでやがて相手が音をあげ、ほころび、沈んでいく。ルーニー、チチャリート、ファン・ペルシー、ウェルベック、香川と前線の顔ぶれはシティに負けず劣らず豊富ですが、それぞれの選手の個性に預けるというよりは、ある一定の約束事を大事にしながら、そのなかで個性を発揮するといったほうが当たっているでしょう。その徹底度の高さ、チームとしての気持ちの強さがこの夜も奇跡を起こしたのです。

後半追加タイム2分過ぎ、FKからファン・ペルシー決勝ゴール!信じられなかったのは、勝ち越したことよりも、あれだけ追い込まれて同点にされたにも関わらず、その後攻めに転じたこと。ふつうはそのままドローか、さらに押されて逆転を許すところ。そこをチームとして踏みとどまり、泥臭くFKを獲得し、いちばん気持ちが強い選手が決めました。ユナイテッドもシティも試合終了間際の得点が多いチームですが、最後の最後は、勝ちたい気持ちをしっかりプレーとして表現した者が祝福されるのだ、とあらためて思った結末でした。

今年は昨年の借りを返す。と決意を新たにしつつ、無失点で終われないディフェンスの弱さ、何とかならないかなぁ、とため息。まあ、アウェイで勝ったから、いいか。こんな夜は素直に喜ぼう、とビールを空けた次第。

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