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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

【MAN.UTD×Brentford】ラスト3分からの連発…チームを救ったマクトミネイの10分を振り返る。

テン・ハフ監督が、アムラバトをマクトミネイに代えたのは87分。ブレントフォードに0-1でリードされたマンチェスター・ユナイテッドは、モペイとノアゴーアが連発したきわどいシュートをオナナのセーブで切り抜けたばかりでした。このまま終われば、オールド・トラフォードで屈辱の3連敗。現地メディアの見出しに「sack」の4文字が躍るのは避けられません。

エリクセン、ガルナチョ、アントニー、マルシアルを次々に入れた指揮官が最後に39番を投入したのは、遠めから放り込んだ際に競り勝てる選手を足したかったからでしょうか。必死に攻めるホームチーム。89分に左からニアを狙ったブルーノ・フェルナンデスのFKはGKストラコシャが外に弾き出し、ガルナチョの折り返しから決まったシーンはマルシアルがオフサイドでした。

追加タイムは6分。今季プレミアリーグでは、ファーギーズタイムとはいえない長さです。91分、マグワイアのクロスが逆サイドに流れ、足元に収めたガルナチョが脇にいたアントニーに流すと、左足のフィニッシュはキックミス。DV疑惑で長らくピッチから離れていたウインガーは、ベストからはほど遠い状態です。

ブルーノのサイドチェンジを受けたガルナチョが、左サイドで突破を図ったのは93分。ゴールライン際でルアスレウをかわしてグラウンダーを送ると、戻りながら左足で打ったダロトのダイレクトショットはストラコシャがセーブしました。こぼれたボールをとっさにクリアしたネイサン・コリンズは、真横に蹴り出さなかったことを今でも後悔しているのではないでしょうか。

DFが前に出したボールを、つま先で引っかけたのはマクトミネイ。何もせずに敗戦を迎えようとしていたセントラルMFは、ボールが足元に落ちるや否や、完璧なハーフボレーを左隅に突き刺しました。淀みないアクションを見て、26歳のスコットランド代表がユーロ予選で5戦6発という数字を残し、ホイルンドと並んでゴールランキングTOPに立っていることを思い出しました。

テン・ハフは、好調のストライカーとしてピッチに送り出したのか…?

左手で小さくガッツポーズを取りながら、自陣に戻っていくマクトミネイに笑顔はなし。そう、スコアはまだ1-1。オールド・トラフォードで許される結末ではありません。なおも攻めるマンチェスター・ユナイテッド、このままでOKのブレントフォード。右サイドのハーフラインを越えたあたりで、ブルーノがFKを蹴ろうとしたとき、既に96分を過ぎていました。

おそらくこれがラストプレー。ボックス左に上がったボールにマグワイアが競り勝つと、ニアに走り込んで先着したのはまたもマクトミネイです。渾身のヘッドにストラコシャが右手を伸ばして触ると、ボールは左ポストの内側を叩いてネットに届きました。両手を広げてダッシュするMFは、満面の笑顔。90分まで静かだったオールド・トラフォードに歓声が沸き起こっています。

ヒーローに駆け寄って喜びを爆発させる選手たちを見ながら、1999年5月26日のミラクルが脳裏に蘇っていました。デヴィッド・ベッカムの2本のCKから、シェリンガムとスールシャールが立て続けに決めてトレブルを達成したCLファイナルです。当たり前に3ポイントをゲットすべき試合を、こんなドラマティックな展開で何とか勝って喜んでいる場合じゃないと思いながら。

スロースタートの一戦は、あまりにも苦しい展開でした。26分のアウェイチームの先制ゴールは、チームの弱点と個々の迷いをすべてさらけだしたような失点。自陣でエンベウモにパスをカットされたカゼミーロは、直後の無謀なスライディングをかわしてもらったのを感謝するべきでしょう。足が引っかかっていたら、ガラタサライ戦に続くレッドをもらっていたかもしれません。

左からドリブルで上がったウィサは、ボックスに侵入したタイミングで右足アウトのパスを中央へ。エンベウモと息が合わず、リンデロフの足元に入ったボールは、前に蹴り出すだけでOKでした。クリアか、一旦トラップか…無邪気に蹴ったCBのキックは、エンベウモに追いついたカゼミーロに当たって、イェンセンの前にこぼれました。

左足のダイレクトショットはコースが甘く、オナナがセーブして終わりかと思いきや、右手でがっつり触ったボールは後ろに流れてしまいました。ボールがネットを揺らしたとき、かつてプレミアリーグNo.1と称された前任のショットストッパーの顔を思い浮かべた人もいたはずです。バイエルン戦でレロイ・サネのシュートをキャッチミス、ガラタサライ戦ではメルテンスに悠々とさらわれるパスミス。自信を失ったGKの処方箋は、クリーンシートの勝利のみでしょう。

判断力を欠いたプレイの連鎖による失点は、不振の選手たちから平常心を奪ったはずです。ハーフタイムでエリクセンに代えられたカゼミーロ、相変わらず決められないラシュフォード、機能しなかったメイソン・マウント、意外性のあるパスワークを見せられないブルーノ、前が詰まってバックパスを繰り返すアントニー、ちょっとしたミスでも糾弾されるマグワイア…。

シュートが決まらず、焦りを募らせるだけだったチームにとって、マクトミネイの2発はターニングポイントになるかもしれません。今、苦しんでいる選手たちの多くが、昨季プレミアリーグでTOP4フィニッシュを果たす原動力だったことを忘れず、信じ続けたいと思います。新戦力が本領を発揮し始め、勝利を重ねられるようになれば、あれがきっかけだったと振り返ることができる素晴らしい勝利になるのではないでしょうか。

最後に。レディ・キャシー・ファーガソンさんの訃報に際し、心より哀悼の意を表します。そう遠くない未来に、サー・アレックス・ファーガソンとともにマンチェスター・ユナイテッドの復活を喜べる日が来ることを信じています。(スコット・マクトミネイ 写真著作者/Ardfern)


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