偏愛的プレミアリーグ見聞録

いきなりティモ・ヴェルナー！ソン・フンミン、パペ・マタル・サール、イヴ・ビスマ、クルゼフスキらを欠いたトッテナムに対して、マンチェスター・ユナイテッドはカゼミーロとリサンドロ・マルティネスが戻ってきています。両者合わせて欠場は22人。オールド・トラフォードのプレミアリーグ21節は、難しいやりくりを強いられている2チームが激突する予測不能の一戦です。

まずはテン・ハフの11人を紹介しましょう。GKオナナ、DFダロト、ヴァラン、ジョニー・エヴァンス、ワン＝ビサカ。中盤センターはメイヌーとエリクセン、2列めはラシュフォード、ブルーノ・フェルナンデス、ガルナチョ、最前線にホイルンド。ベンチにはアントニーやマクトミネイが控えており、指揮官は復帰したばかりの主力に無理はさせないはずです。

対するスパーズは、ようやくレギュラーCBを揃えて戦えるようになりました。ヴィカーリオ、ペドロ・ポロ、ロメロ、ファン・デ・フェン、ウドジェ、オリヴァー・スキップ、ベンタンクール、ホイビュルク、ブレナン・ジョンソン、リシャルリソン、ヴェルナー。ジェノアから加わったドラグシンは、ベンチで戦況を見つめています。

両者ともに厳しいプレスを仕掛けながら攻め合った3分、いきなりマンチェスター・ユナイテッドのカウンターが炸裂します。ブルーノ・フェルナンデスのスルーパスが左のラシュフォードへ。中央に持ち込んで打とうとした10番をウドジェが止めると、こぼれ球に先着したホイルンドが強烈な一撃をゴール左上に叩き込みました。

エリクセンのサイドチェンジが右のガルナチョにつながった7分のカウンターは、外からオーバーラップしたダロトのクロスをウドジェがカット。右からのCKがファーのラシュフォードに通るも、右足のボレーは外に流れていきました。11分、右からのクロスをファーで受けたヴェルナーが頭で右隅を狙うと、ジョニー・エヴァンスがバックヘッドでCKに逃れました。

直後のCKで競り勝ったベンタンクールのヘディングは、ゴールライン上のダロトがクリア。スパーズが追いついたのは19分、CKをヘッドで右隅に流したのは、直近のプレミアリーグ6試合で6発めとなる好調のリシャルリソンです。22分に左からカットインしたヴェルナーのミドルは、大きく右にアウト。チェルシーで振るわなかったドイツ代表は、早く結果を出したいでしょう。

自陣でパスを奪われるシーンが目立つマン・ユナイテッドは、プレスの枚数も足りず、スパーズに押され続けています。30分に右に展開したのはリシャルリソン。ブレナン・ジョンソンのシュートはオナナの正面です。36分、敵陣でファン・デ・フェンから奪ったホイルンドがゴール前に走ったブルーノに流すと、カバーしたベンタンクールがさらって事なきを得ています。

38分、左から上がったラシュフォードのクロスがホイルンドの頭上を越え、外のウドジェがクリアして終わりかと思いきや、ヘッドはポストを直撃。拾ったホイルンドが打ち切れず、決定機を逃した1分後、マン・ユナイテッドは勝ち越しゴールをゲットします。ブルーノのパスを左で受けたラシュフォードがホイルンドをポストに使い、美しいフィニッシュを右隅に流し込みました。

45分、オリヴァー・スキップのロングフィードがヴェルナーに渡ってカウンター発動。左からカットインしたニューフェイスが左足を振り抜くと、ボールは右に切れていきました。追加タイム2分、CKで競り勝ったロメロのヘディングはクロスバーにヒット。二次攻撃から左隅を狙ったホイビュルクのミドルは、枠にいきません。

前半のポゼッションは37%対63%、シュート数は6対10、オンターゲット2対4。セットピースでやられまくっているマン・ユナイテッドは、守備を修正しなければあっさりひっくり返されそうです。後半開始から1分も経たないうちに、オリヴァー・スキップのパスを受けたヴェルナーがボックスの左脇に持ち込み、ニアに走り込んだベンタンクールにラストパスを転がしました。

ジョニー・エヴァンスは無力で、オナナの左の肩越しに打ったシュートがネットを揺らして2-2。速いパスワークでサイドを制するスパーズに対して、マン・ユナイテッドは前線へのボールがつながらなくなっています。58分のCKからヴェルナーが放ったボレーはバーの上。テン・ハフ監督は58分にエリクセンを下げ、マクトミネイを投入しました。

62分に中央に攻め上がったワン＝ビサカはドリブルをカットされ、こぼれ球を拾ったマクトミネイが左に外しました。直後、ジョニー・エヴァンスに代わってリサンドロ・マルティネス。ホイルンドが左に展開したボールをゴール前に持ち込んだラシュフォードは、ロメロに潰されました。残り20分、動かないポステコグルー。手元の攻撃のカードはブライアン・ヒルのみです。

スパーズの陣形が間延びし、オープンな展開。79分に必死に走って左サイドで奪い、高速クロスを入れたブルーノに胸が熱くなりました。ヴェルナーがブライアン・ヒルに後を譲ったのは80分。カウンター一辺倒のホームチームは、ペースダウンされると苦しくなりそうです。85分にオリヴァー・スキップと代わったのは、プレミアリーグデビューのドラグシンです。

87分、ラシュフォードが下がってアントニー。足をつったファン・デ・フェンのポジションには、エメルソン・ロイヤルが入っています。追加タイムは5分。94分のガルナチョのクロスはマクトミネイにぴったりでしたが、フリーのヘッドはヴィカーリオの頭上を越えていきました。間もなく笛が鳴り、2-2ドロー。「強豪からホームで1ポイントを奪取」というべきでしょうか。

ポゼッションは36%対64%、シュート数は9対16、オンターゲット2対6。後半のクロスと縦パスはことごとくヴィカーリオに捕られており、枠内シュートゼロとなれば、この結果を甘受するしかありません。左からのシュートが7本、右はミドルのみで2本だったマン・ユナイテッドが何かを変えるなら、最後のカードは右から仕掛けられるペリストリだったのではないかと思います。

「BBC」の投票の途中経過を見ると、MVPはベンタンクールになりそうですが、心情的にはシュート5本＆1アシストのヴェルナーを選びたくなります。獰猛にゴールを狙う姿から、今度こそプレミアリーグで成功したいというハングリーさを感じました。冬のマーケットで的確な補強を進めているように見えるスパーズは、TOP4でシーズンを終えられるのではないでしょうか。

対してわれわれは、振り向けばチェルシーと1ポイント差。当面の目標は、ボーウェンとルーカス・パケタを失ったウェストハムをかわして6位に上がることです。ホイルンドとラシュフォードの評価は、引いて構えるブレントフォードやエヴァートンとのゲームを終えてからにしましょう。右サイドでガルナチョが孤立していた今日の戦い方で、上位をめざすのは難しそうです。