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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

【Liverpool×MAN.CITY】クロップとペップ…いつもより長いハグをかわした最後のアンフィールド。

誰もがいつか来るとわかっていたその日は、思いのほか早く訪れました。ユルゲン・クロップとペップ・グアルディオラがプレミアリーグで激突するのは、これが最後になるでしょう。2013-14シーズンからのドルトムントとバイエルンでは4勝4敗。プレミアリーグでの初対決は2016年12月のアンフィールドで、ワイナルドゥムが決めたリヴァプールが1-0で勝っています。

それから7年。プレミアリーグではペップが5勝6分4敗で、コミュニティシールドは1勝1敗。2017-18シーズンのCL準々決勝はクロップがダブルを決めており、2021-22シーズンのFAカップもレッズが3-2で勝っています。しかし、翌シーズンのカラバオカップは3-2でマン・シティ。イングランドでの通算成績は8勝6分7敗で、クロップが勝ち越しています。

2024年3月10日。アンフィールドで開催されるプレミアリーグ28節は、ペップがトータルの勝敗をイーブンに戻すのか。あるいはクロップが、リーグ戦の負け越しをゼロに戻すのか。「私の生涯で、最高の監督」と、指揮官としてのラストゲームかのように宿敵をリスペクトしたクロップに対して、「FAカップで会えるかもね。そのうち、わかるよ」とペップはドライでした。

キックオフは、現地時間の13時45分。ベストメンバーを見たかったのですが、リヴァプールは苦しい布陣です。GKケレハー、DFブラッドリー、クアンサー、ファン・ダイク、ジョー・ゴメス、MF遠藤航、マック・アリスター、ショボスライ、FWエリオット、ダルウィン・ヌニェス、ルイス・ディアス。サイドの攻防で敗れれば、一気に崩されてしまいそうです。

対するマン・シティは、納得の11人です。GKエデルソン、DFカイル・ウォーカー、アカンジ、ナタン・アケ。中盤センターにロドリとジョン・ストーンズ、2列めはフォーデン、デブライネ、フリアン・アルバレス、ベルナルド・シウヴァ、最前線にハーランド。開始2分にデブライネのラストパスを受けたフリアン・アルバレスは、打つ瞬間にカットされています。

5分過ぎからはレッズのペース。7分にフリアン・アルバレスが左から仕掛けたカウンターは、ボックス左に出たデブライネのクロスがファーに流れていきました。1分後、デブライネの左足ミドルはケレハーがセーブ。マン・シティがパスをまわしている間は、絶え間なくブーイングが鳴り響いています。レッズの布陣は、前線から最終ラインまで距離があるのが気になります。

13分、サイドチェンジを受けたブラッドリーがナタン・アケをかわして高速グラウンダー。ファーから詰めたダルウィン・ヌニェスのスライディングは、間に合いません。17分にデブライネの鋭いパスが右のフォーデンにつながり、中に持ち込んで強烈なシュート。危険なシーンでしたが、コースに入ったファン・ダイクがブロックしました。

ビルドアップのボールをルイス・ディアスが奪ったのは20分。中央に入った7番は打ち切れず、フォローしたマック・アリスターのミドルはナタン・アケがカットしています。マン・シティの先制は24分。デブライネがCKを蹴る瞬間、ナタン・アケがマック・アリスターに体を当て、コースを空けました。ニアポスト際で低いボールを押し込んだのは、ジョン・ストーンズです。

すかさず反撃を始めたリヴァプールはポゼッションを取るも、前線が打てる形を創れません。30分に右のエリオットがゴール前に浮かすと、ショボスライのヘッドはクロスバー越え。ルイス・ディアスが敵陣で奪った34分のショートカウンターは、ブラッドリーのシュートをナタン・アケがブロックしました。36分のデブライネの左足ミドルは、ブラッドリーに当たってCKです。

ハーランドとファン・ダイクが一騎打ちになったのは39分。フェイントで揺さぶりながらも、抜き切れなかったストライカーは、ケレハーの正面に打ってしまいました。遠藤航の奪取から、速攻が始まったのは42分。ショボスライのパスを受け、カットインしたルイス・ディアスは、左隅を狙った一撃を枠に収められませんでした。

ハーランドがファン・ダイクの背後からさらったのは44分。ボックス左手前のフリアン・アルバレスは、ブラッドリーをかわして放ったコントロールショットをうまく落とせません。追加タイム3分、ショボスライのFKをエデルソンが懐に収めると、ハーフタイムを告げる笛。前半は0-1、ポゼッションは53%対47%。シュートは7対7で互角ですが、オンターゲットは1対4です。

後半が始まって47分、ナタン・アケのバックパスをダルウィン・ヌニェスが狙っていました。飛び出したエデルソンが足を引っかけ、PK。マック・アリスターは強いキックを左隅に決めました。湧き上がるアンフィールド。53分にクアンサーの浮き球で、ラインの裏に出たダルウィン・ヌニェスはオフサイド。キャッチしたエデルソンは立ち上がれず、オルテガに後を譲りました。

クアンサーが右サイドで奪われたのは58分。クロスをファン・ダイクがクリアすると、デブライネにボールが渡り、ボックス右のフォーデンに絶妙なラストパスが通りました。右足のシュートは、足元に飛び込んだケレハーがセーブ。直後、ドリブルで上がったルイス・ディアスがダルウィン・ヌニェスとのワンツーでオルテガの前に出るも、トラップミスでチャンスを逃しました。

61分、ショボスライとブラッドリーが下がり、サラーとロバートソン。1分後、右サイドから斜めに出したサラーの素晴らしいスルーパスで、ルイス・ディアスが独走となりました。しかしオルテガと向き合った7番は、ラストタッチをミス。ダルウィン・ヌニェスのグラウンダーをフリーで収めた64分の決定機も、GKの前で打とうとした瞬間、カイル・ウォーカーにクリアされました。

65分に右隅を狙ったマック・アリスターのミドルは、オルテガがダイブしてセーブ。ペップが動いたのは、69分です。デブライネとフリアン・アルバレスが下がり、ジェレミー・ドクとコヴァチッチ。71分にロバートソンの決定的なクロスがゴール前に入ると、ダルウィン・ヌニェスのボレーはオルテガが腿に当てるビッグセーブでしのいでいます。

73分、ドクの縦パスが左サイドに通り、ナタン・アケがアーリークロス。ケレハーが弾いたボールがフォーデンにヒットし、バーを叩きました。76分、ダルウィン・ヌニェスに代わってガクポ。ブーイングのボリュームUPは、マン・シティのポゼッションが増えたことを意味します。80分にドクを抜いて放ったクアンサーのミドルは、右に反応したオルテガが外に弾き出しました。

83分から、レッズの波状攻撃。エリオットがボックス左に浮かしたボールをロバートソンが頭で折り返すと、マック・アリスターの左足ボレーはミートしませんでした。フォーデン、ハーランド、ジェレミー・ドクとつながった89分の速攻は、快足ウインガーの左足シュートがポストに阻まれています。追加タイムは8分。攻めているのはホームチームです。

エリオットの浮き球が、右に上がった遠藤航に届いたのは96分。バックヘッドが中央に入り、ガクポが一瞬空いたのですが、ダイレクトで叩けなかったストライカーはサラーに預けようとして、ボールを右に逸らしました。ロバートソンのCKがクリアされた瞬間、タイムアップ。ペップとクロップは、今までよりも長いハグをかわしました。

1-1のドローがより悔しいのは、シュート数19対10、ビッグチャンス3対2と押したリヴァプールのほうでしょう。「リヴァプールエコー」のイアン・ドイル、「BBC」のフィル・マクナルティ。激戦をレポートした2人のチーフライターが、ほぼ同じ表現でルイス・ディアスのパフォーマンスを評しています。

「当たり外れが大きすぎたコロンビア人。信じられないほどハードワークし、素晴らしいプレスをかけて、隙を突いて絶好のチャンスを得たが、すべてムダにしてしまった」(イアン・ドイル)
「ディアスは終始、エネルギーとペースに満ち溢れていたが、肝心な場面でムダが多かった」(フィル・マクナルティ)

サラーのスルーパスで抜け出したビッグチャンスを決めていれば、運動量で劣るマン・シティを封じて3ポイントをゲットできたのではないでしょうか。ここぞという状況でサラーとロバートソンを入れて勝ちにいったクロップも、右にまわったジョー・ゴメスのサイドが攻めやすいとみてドクを投入したペップも、決定機を活かせないままアーセナルに首位を譲る結果となりました。

最も重要な一戦で先発した遠藤航は、パス成功率96%、チャンスクリエイト1回、インターセプト2回、デュエル5勝1敗と素晴らしい出来でした。「BBC」のファンによる両チーム全員の採点は7.55で、ルイス・ディアスとケレハーに次ぐ3位。「テレグラフ」のジェイソン・バート記者は、「傑出したパフォーマー」として、ジョン・ストーンズとともに彼の名を挙げています。

「リヴァプールにとっては、MFの遠藤航だった。シティが、相手より少ないポゼッションしか楽しめなかったのは1年以上ぶりだ。日本代表は多大なる貢献を果たし、間違いなくロドリの影を薄くした。そんなことを自慢できる選手など、ほとんどいないだろう」

リヴァプールが、ユルゲン・クロップの下で戦うプレミアリーグは、残り10試合となりました。今しばらくは、エキサイティングだったゲームの余韻に浸っていたいと思います。2人の名将がアンフィールドで激突するラストマッチを満喫した喜びと、終わってしまった寂しさをかみしめながら。


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“【Liverpool×MAN.CITY】クロップとペップ…いつもより長いハグをかわした最後のアンフィールド。” への3件のフィードバック

  1. yamamoto より:

    遠藤渉は素晴らしかったですね。
    ここ数年のこの2チームの激突には毎試合心を揺さぶられますが、そこに遠藤がいることがいまだに信じられない思いとともに突出したパフォーマンスに賞賛を送りたいです。

  2. アイク より:

    今日も最速の更新ありがとうございます。最後までどちらに転ぶか分からないナイスゲームでしたね。
    三冠王者を前にして、数年前のベストメンバーからファンダイク以外を総入れ替えしたようなスタメンに衝撃を受けましたが、新戦力と若手選手が躍動し、攻めても守っても見応えたっぷりでした。守備が良かったですね。
    遠藤は鬼神のようで、シティ自慢の中盤も彼の接近を嫌がっているように感じました。
    ヌニェスもルイスディアスも獲って良かったと思える働きぶりでしたが、点を取るためにはサラーの理不尽なプレーがもっと必要なのかなと思いました。(ガクポの使い方はまだよく分かりません)

    自分はこういう試合が観たくてプレミアを追いかけてるんだと再確認しました。両チーム、2人の名将に心から拍手です。

  3. アイク より:

    おお遠藤、クラブ公式MOMですか
    中2日とは信じられないプレーでしたし、シーズン序盤の逆境からこの天王山まで…本当に強い男ですね

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