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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

ファイナンスの専門家がレポート!「スパーズの経営状況が急激に悪化した理由」

ウルヴス戦でウーゴ・ブエノと絡んで転倒したシャビ・シモンズは、右膝の前十字靭帯断裂という重傷だったそうです。2026-27シーズンは、リハビリに明け暮れる1年になるでしょう。負傷者が減らないスパーズは、ウェストハムとの2ポイント差を埋められるのか。アストン・ヴィラ戦で敗れ、ライバルがブレントフォードに勝ったら、残り3試合で2勝が必須となります。

「アスレティック」のクリス・ウェザースプーン記者は、フットボールファイナンスのスペシャリストで、スパーズが降格となった際の財務分析を行っています。「2024-25シーズンの総売上は、クラブのギネスとなる5億6530万ポンド」「マッチデー収入とコマーシャル収入は、チェルシーの2億9000万ポンドを大きく上回る4億ポンド超」と聞くと、うらやましくなります。

新スタジアムは大きな収益源となっており、2024-25シーズンのマッチデー収入は、CLに出場していたリヴァプールを超える1億2650万ポンド。ラグビーやボクシング、コンサートなどイベントの収益が3250万ポンドもあるそうです。ヨーロッパリーグ制覇で得た3470万ポンドは、プレミアリーグ17位でダウンしたTV放映権料の損失を埋めています。

コマーシャル収入は2億7670万ポンドで、対前年で13%UP。1億6000万ポンドのスポンサー収入は、8年連続でアーセナルより上です。2018年の決算でリーグ2位の1億3890万ポンドの黒字を計上したクラブは、その後の7年で売上が1億8460万ポンドも伸びています。さぞかし儲かっているかと思いきや、クラブ史上最悪の1億2060万ポンドの赤字に転落してしまったそうです。

スタジアム建設に伴う減価償却費や税金などを除くEBITDを見ると、過去9年は黒字でした。身の丈に合った経営を評価されていたクラブは、なぜPLが悪化したのでしょうか。答えはシンプルで、新戦力の獲得費用が膨らんだからです。選手のサラリーなど人件費は、昨季の売上に対する比率が45%とリーグで最も低い数字なのですが、補強の失敗が収益の悪化につながっています。

スパーズの補強と売却に関する数字は、チャンピオンズリーグでファイナルに進んだ2018-19シーズンの前後で別世界となっています。いや、「ポチェッティーノ前後」といったほうが妥当なのかもしれません。2013-14シーズンから2018-19シーズンまでの6年は、新戦力への支出は4億1230万ポンドでしたが、収支はマイナス6840万ポンドにすぎませんでした。

ところが2019-20シーズンから2024-25シーズンまでの6年は、獲得費用が9億7970万ポンドに跳ね上がり、累積の損失は7億2140万ポンドという厳しい数字になっています。CLのファイナルに進出するまでの損益が良好だった最大の理由は、ルカ・モドリッチ、ガレス・ベイル、カイル・ウォーカーの売却で巨額の利益を得たからです。

そしてもうひとつ、ワールドクラスを格安で獲得できたという幸運もありました。2010年にプロ契約を交わしたハリー・ケインはアカデミー出身で、もちろん移籍金はゼロ。9年連続でシーズン20ゴール以上のストライカーを擁するチームは、最前線に高額の移籍金を用意する必要がなかったのです。2013年にアヤックスから来たエリクセンは、1150万ポンドというバーゲン価格です。

2015年に入団したソン・フンミンの2200万ポンドも、今となっては格安でしょう。2015-16シーズンにブレイクしたデル・アリのために、ミルトン・キーンズ・ドンズに支払った移籍金は800万ポンドでした。プレミアリーグ史上最強のストライカー、最高のコンビとなったアタッカー、リーグ屈指のプレーメイカーと新進気鋭のヤングスターを足しても4200万ポンドとは…!

彼らをうまく動かしたポチェッティーノは、補強が足りなくても愚痴をこぼすぐらいで働いてくれる監督でした。欧州の頂点が見える高みに駆け上がるまでの6年を、3人の監督でつないだクラブは、功労者に別れを告げてからは解任・交代を9回も繰り返しています。2020年1月、エリクセンがインテルに移籍。スランプに陥ったデル・アリは、2022年にチームを去っています。

ハリー・ケインのバイエルン移籍は2023年。アドオンを含む1億ポンドは、安か評するべきでしょう。エースがいなくなったシーズンに得点王となったソン・フンミンは、昨年の夏にロサンゼルスに向かいました。彼らの後継者になるはずだったリシャルリソン、クルゼフスキ、ジェームズ・マディソンは期待に応えられず、ブレナン・ジョンソンは1月に移籍してしまいました。

2019-20シーズンから投資額を増やし始めたスパーズは、7シーズンで8億8030万ポンドを費やしており、リヴァプールとマンチェスター・シティに2億ポンド以上の差をつけています。上にいるのは10億ポンドを超えているアーセナル、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシーのみ。ELを制したとはいえ、プレミアリーグで17位、18位では失敗というしかないでしょう。

2018-19シーズンの移籍金の減価償却費は4750万ポンドで、リーグのボトム10でした。しかし昨シーズンは1億4120万ポンドとなり、5位に浮上しています。今季のCLで7400万ポンドを稼いだクラブは、降格となっても売上を伸ばすかもしれません。しかし来季の居場所がチャンピオンシップとなれば、CLのボーナスはゼロで、マッチデー収入も大幅にダウンするはずです。

1シーズンでプレミアリーグに復帰できれば、複数年契約のスポンサー収入は減らないといわれていますが、「契約を更新できるか」「新規を獲得できるか」は別な話です。リーグのボトム10が定位置となると、大口の出資を失うことになるでしょう。降格によって増えそうな売上は、少なくとも半分は出ていくといわれている主力選手の売却益ぐらいです。

スタジアム建設に巨額の投資を行ったスパーズは、8億5170万ポンドの借入金を抱えています。固定金利で長期返済なので、すぐに破綻するような状況ではありませんが、キャッシュフローが危うくなれば、エニックのサポートを頼らざるを得なくなります。かつてイングランドで最も収益性が高く、財政的に自走していたクラブは、レスターと同じルートを突き進むのでしょうか。

あらためて、あの頃の数字を見ると、ダニエル・レヴィは優秀な経営者だったのだなと思います。しかしサポーターは株主ではないので、PLを見て納得するわけではなく、退任は不可避だったのでしょう。利益を創出できず、スポーツとしても結果が出ていない今こそ、コンセプトを見直す必要があるのではないかと思われます。最初に着手すべきは…いや、まずは残留ですね。


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