2026.10.14 プレミアリーグ観戦記2026-27プレミアリーグ観戦記
バナナバルーン、ポズナン、オアシス…アンフィールドのスタンドを見ながら考えたこと。
マン・シティが不正の容疑者となっていると知りながら、契約書にサインした選手たちは、経営ボードの説明を信じていたのでしょうか。あるいはリスクを承知しながら、ペップ・グアルディオラとともに戦える喜びや、欧州の頂点をめざせる興奮に浸っていたのでしょうか。「What will be, will be(なるようになる)」と腹をくくっていた選手もいるのかもしれません。
114件に及ぶプレミアリーグの財政規則違反が認定された後、最初の舞台となったアンフィールドは、両者にとって悪くない場だったのではないでしょうか。偽装資金提供スキームが発動したとされる2008-09シーズン以降、リーグの優勝争いでマン・シティに3回敗れたリヴァプールは、最大の被害者と目されています。ブーイングを浴びせる一番手という役割は望むところでしょう。
アンフィールドは、マン・シティのバスの窓が割られるトラブルがあった場所としても知られています。レッズサポーターもシティズンも、さほど騒ぐことなく各々のシートに辿り着いたのは、度を越したバトルはNGという空気が漂っていたからでしょう。アウェイチームのバスを待ち構えていたレッズサポーターたちは、罵声を浴びせただけで切り上げたと報じられています。
プレミアリーグのアンセムが鳴り響いてから、キックオフに至るまでのスタンドを何度も見返しました。アンセムにブーイングをかましたシティズンは、1987-88シーズンにイムレ・ヴァラディをいじるために持ち込まれた定番のバナナバルーンと、スカイブルーのバルーンを掲げています。得意のポズナンダンスも、混乱を笑い飛ばそうという思いの現れでしょう。
ストリートに並ぶ出店では、オアシスのロゴをもじった「Cheats(不正行為)」のバナーが売られていたのですが、サポーターたちはスカイブルーに抵抗があったようです。クラブのエンブレムのフラッグとシャツで赤く染まったスタンドには、「114」を咎めるバナーとともに、オアシスの「Stop crying your heart out」の歌詞が記された巨大な横断幕が掲げられていました。
「all of your stars are fading away(オマエらのスターは、すべて消え去っていく)」。アンフィールドを飾ったさまざまなフラッグと盛大なチャントは、「Cheats」「robbed」といったワードが盛り込まれながらも、これまで培ってきた自らのカルチャーをぎりぎりで守りながら、事件に対する怒りや痛みを主張しているように感じられました。
「1976年からトロフィーを獲得していない」と煽るチャントは、「偽りにまみれたタイトル」への抗議です。その光景を見ながら、さまざまなことを考えました。最大のジレンマは、「彼らが真っ黒でも、膨大な偽装ゆえに裁定に時間がかかり、ピッチではずっと強者でいられること」です。今季中に決着しなければ、新たなタイトルを手に入れる可能性があります。
独立委員会が違反を認定しても、マン・シティが虚偽は一切ないと主張し、陰謀論を唱えている間は、2026-27シーズンの優勝候補です。ペナルティが確定するまでは、ポイント剥奪によってコースアウトするペースメーカーではありません。スカイブルーの選手たちもシティズンも、今までと同じように戦い、叫び、勝利に歓喜するのみです。
しかし現状を俯瞰すると、トロフィーを争うバトルを無心に愉しめない状況であることも、認めざるを得ません。ジェイミー・キャラガーの「こんな試合に意味があるのか」という発言は、早期の処分確定を求めるゆえの言葉と理解しているものの、巨悪に呑まれてネガティブな空気が充満すると、情熱を失うファンが増えてしまうでしょう。
プレミアリーグを楽しむためにできることは、ただひたすら「スポーツのリアルを見続ける」のみです。この日のマン・シティは強かった。首位をキープする3ポイントは、数ヵ月後にプレミアリーグに残留するために必要な3ポイントに変わるかもしれません。ジェレミー・ドクは素晴らしかった。ファン・ダイクはアーリング・ハーランドを止められなかった…。
そして、こうも思います。厳しい処分がなければ、マン・シティは未来永劫リスペクトされないクラブになってしまうでしょう。百年後にリーグを制しても、不正をベースにレベルを上げたダーティーなチームと見做されてしまうかもしれません。マン・シティに厳罰を求めます。愚行を断ち切るリセットが必要です。未来のプレミアリーグファンと、シティズンのためにも。
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