偏愛的プレミアリーグ見聞録

2021年5月11日、オールド・トラフォードに乗り込んだレスターは、ソユンチュの決勝ゴールで1-2のアウェイ勝利。2位のマンチェスター・ユナイテッドを倒し、3位をキープしていました。その4日後に開催されたFAカップファイナルは、ユーリ・ティーレマンスの素晴らしいミドルでチェルシーに1-0。37節のブルーズとの再戦に勝てば、TOP4フィニッシュが決まるというポジションにいました。

ブレンダン・ロジャースとレスターが最も輝いていた瞬間。あのとき、CL出場権を獲得していたら、今も彼らは上位をキープしていたかもしれません。スタンフォード・ブリッジのシックスポインターを2-1で落とし、3位チェルシー、4位リヴァプール、5位レスター。それでも最終節のスパーズ戦で勝ち、上位のどちらかがドロー以下なら、4位以内に食い込めます。

3チームが2つの椅子を争う最後の日。リヴァプールはマネの2発でクリスタル・パレスを屠って3位確定。残り15分までは、レスターが2-1でスパーズに勝っており、チェルシーはヴィラに2-1でリードされていました。このまま終われば、4位はレスター。しかし彼らは、GKシュマイケルの痛恨のミスでアドバンテージを失い、ガレス・ベイルに2発喰らって5位に転落しました。

このシーズンのニューカッスルは、12勝9分17敗で12位でした。あれから、ちょうど2年。彼らのポジションは逆になっています。サウジアラビアの資本が入ったマグパイズは、エディ・ハウのコンセプチュアルなフットボールの完成度が高まり、5位リヴァプールに3ポイント差の3位をキープ。2021-22シーズンに9000万ポンドの赤字を計上したフォクシーズは、18位に沈んでいます。

エディ・ハウがCLへのチケットをゲットしたら、資金力があるクラブはワールドクラスを獲得するでしょう。ブレンダン・ロジャースが去ったクラブは、ソユンチュ、ジョニー・エヴァンス、アヨゼ・ペレス、ティーレマンスが退団濃厚で、降格となれば主力の流出を止められなくなるでしょう。「テレグラフ」は、そんな状況を先取りするような見出しを掲げています。

「Newcastle to reignite move for Leicester’s James Maddison」

ニューカッスルが、ジェームズ・マディソン獲得の取り組みを再発動…。ルーク・エドワーズ記者によると、エディ・ハウはコミットメントを重視しており、このクラブでプレイしたいという意志がある選手しか獲らないと決めているそうです。彼らがレスターのプレーメイカーにアプローチするのは、本人が移籍すると決断した時です。

レスターとジェームズ・マディソンの契約は2024年の夏まで。プレミアリーグに残れなければ、ますます財政が厳しくなるクラブは、5000万ポンドを拒否した1年前のような強気な姿勢は取れないでしょう。マディソンと同様に、相当な移籍金を請求したティーレマンスはアーセナルにスルーされ、契約満了を迎えようとしています。

次の夏にアーセナルが移籍金ゼロで獲得したら、レスターの経営陣は後悔するかもしれません。2人合わせて8000万ポンドはもらえたジェームズ・マディソンとティーレマンスをキープしたのに、クラブは降格危機。ひとりは1ポンドにもならず、もうひとりも退団志願する可能性が高く、移籍金は大幅に減額…。

レスターの財政難は、選手に対する高額なサラリーが最大の原因です。2年連続でCL出場権を逃したことが、守備陣を補強できない苦しい夏を招き、今日に至っています。移籍金が高騰している現状に、放映権バブルの崩壊が重なれば、強引な補強が祟って凋落するクラブが続出する可能性があります。

プレミアリーグ昇格後、一気に30人を獲得したノッティンガム・フォレストは大丈夫でしょうか。財政基盤が脆弱な中小クラブは、ひとたび失敗すれば、2年で世界が変わってしまいます。自前の選手を育てるか、スカウティングに力を入れて原石を調達するか。レスターとセインツの凋落に、スタッフを強化しなければ生き残れないのだと思い知らされた感があります。