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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

累積損失は4億3000万ポンド超…エヴァートンの売却先は政府とプレミアリーグがNG?

ファルハド・モシリがエヴァートンの筆頭株主になったのは2016年2月。当時の監督だったロベルト・マルティネスは、2年連続でプレミアリーグ11位という戦績を許されず、2015-16シーズンを終える前に解任の憂き目に遭いました。後任はサウサンプトンで指揮を執っていたロナルド・クーマン。2016-17シーズンは7位で、EL出場権を獲得しています。

あれから6年。エヴァートンのオーナーは、財政難のクラブを立て直す術を持たず、手離そうとしています。2017年の夏、ルカクの売却益を注ぎ込んだ大型補強は失敗。クーマンはたった9試合でクラブを追われました。その後、6年で7人の指揮官を招聘した展望なきクラブは、8位、8位、12位、10位、16位、17位とポジションを落とすばかりでした。

2018-19シーズンから5年連続の赤字計上で、累積損失は4億3000万ポンド(約792億円)を超えています。2020年から始まったコロナ禍は、経営不振の主たる理由ではなく、あくまでも後押しです。2022年3月には、ロシアのウクライナ侵攻に伴い、出資していたウスマノフ氏が橋渡ししたロシア企業3社のスポンサー契約を解除。これもまた、赤字を増やす要因となりました。

2022年3月にFFP違反の疑いで調査対象になったのは、経営に不正があったわけではなく、損失が膨れ上がってしまったからです。3年トータルで3億7200万ポンド(約685億円)の負債は、プレミアリーグが認めている1億700万ポンドの3倍以上。「ルールを遵守してきた」という彼らの主張は通らないでしょう。

6月には、デニス・バレット・バクセンデールCEO、グラント・イングレスCFO、非常勤取締役のグレアム・シャープ氏が揃って辞任。黒字に向かう策がないまま、ブラムリー・ムーア・ドックの新スタジアム建設が進んでいます。「BBC」は建設費用について、昨年の発表より2億6000万ポンドの増加となる7億6000万ポンド(約1399億円)に達する可能性があると伝えています。

サポーターから轟轟たる非難を浴び、継続は不可能と判断したファルハド・モシリオーナーは、今年になってから売却先を探していました。ニューヨークの投資グループ「MSPスポーツキャピタル」との交渉は、8月に破談。今回、有力候補として報じられたのは、アメリカの投資会社「777パートナーズ」です。

「テレグラフ」によると、ジェノア、ヴァスコ・ダ・ガマ、スタンダール・リエージュ、セヴィージャ、ヘルタ・ベルリンなどに出資しているこの会社は、違法融資、多額の請求未払い、詐欺疑惑などのブラックな噂が絶えず、イギリス政府とプレミアリーグは却下するかもしれません。合意寸前といわれていたスキームがNGとなれば、売却額を下げざるを得なくなりそうです。

10月25日には、FFP違反の告発に対して、潔白を証明する独立委員会への出廷が控えています。2016年以降、7億ポンド(約1118億円)を投じた戦力強化はことごとく失敗に終わり、現在のスカッドでそれなりの額で売れそうなのはオナナとマクニールぐらいです。

2023-24シーズンの序盤戦は、1分3敗で18位。ピッチにもオフィスにも火の手が上がっている絶体絶命のクラブは、プレミアリーグ創設以来初の降格を回避できるのでしょうか。「降格を食い止め、新スタジアムを完成させ、負債を借り換えられれば、魅力的な投資案件となる」という声があるようですが、それができれば…。


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