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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

プレミアリーグ2016-17前半戦総括~(1)多彩になった戦略・戦術

2年前までのプレミアリーグは、それがルールであるかのように、どのクラブも共通のフォーメーションで戦っていました。4バック+2センター。アーセナル、チェルシー、マンチェスター勢などトップクラブは4-2-3-1。唯一、ロジャース監督のリヴァプールが3バックを導入し、昨季の10月にやってきたクロップ監督は複数の布陣にトライしていましたが、リーグ全体に影響を及ぼすには至りませんでした。レスターを優勝させたラニエリ監督の4-4-2(実態的には4-4-1-1)も、中盤に守れるセントラルMFを2枚並べていたのは、他クラブと同様です。イタリアで3バックが流行ろうが、バルサがFWを3枚並べようが、ペップのバイエルンが自在にフォーメーションを変えようが、プレミアリーグは4+2。一時期は上位を独占していたチャンピオンズリーグで勝てなくなっても、新しい戦い方を取り入れる指揮官は現われませんでした。

かようにオールドファッションになりつつあった「プレミアリーグ村」に、この夏、複数の黒船がやってきました。4-2-4と3バックを操るコンテ監督と、試合中にもコロコロ布陣をスイッチするペップ・グアルディオラ。イングランドで初めてオフシーズンを過ごしたクロップ監督、試行錯誤の末に4-2-3-1を封印したモウリーニョ監督、元よりフレキシビリティの高かったポチェッティーノ監督も新しい潮流に加わります。戦い慣れた4-2-3-1で滑り出したチェルシーは、6節にアーセナルに3-0で惨敗すると、3-4-3にスイッチして13連勝。やはり4バック2センターで開幕3連勝の後、ポグバの活かし方と中盤の守備に悩んだマンチェスター・ユナイテッドは、4-3-3で復調。クロップ監督も3トップに舵を切り、マンチェスター・シティは3バック、4-2-3-1、4-3-3を自在に採用。トッテナムとウェストハムも、挑発に乗るかのように3バックを試みるようになりました。そんなプレミアリーグの前半戦について、トップクラブの戦いぶりを総括してみたいと思います。

最も成功したのがコンテ監督のチェルシーであることは、論を待たないでしょう。最強の3-4-3は、アザールの守備の負担を軽減し、マルコス・アロンソとヴィクター・モーゼスにウイングバックという最良の働き場所を与え、CB2枚だと攻めっ気の強さが弱点になりやすいダヴィド・ルイスを安定させるなど、複数の選手の課題を一発解決してしまいました。攻守の舵取り役は、マティッチとカンテです。タックルとインターセプトが得意な相棒を得たマティッチは、モウリーニョ時代にはなかなか見られなかった思い切りのいい攻め上がりを連発し、既にプレミアリーグ6アシスト。アザールの復活と、右ウイングという得意な持ち場を得たペドロによって、ジエゴ・コスタが爆発しました。前半戦で14ゴール、2試合連続ノーゴールがゼロ、6回あった1点差勝利のうち5回で決勝ゴール。チェルシーのエースストライカーは、年明けからのゲームをすべて休んでも年間MVPにノミネートされるのではないかと思われるほどの大活躍でした。

前半戦をプレミアリーグのシーズンタイ記録となる13連勝で締めたコンテ監督のチームが、大崩れするとは思えず、怖いのはキーマンの負傷ぐらいでしょう。完成度が高いだけに、ジエゴ・コスタ、アザール、カンテ、マティッチ、ダヴィド・ルイスを失うと、代わりを務める選手は弱点が気になります。夏の補強に満足していなかったと伝えられるコンテ監督は、1月に動くのでしょうか。CBと左サイド、そして前線を強化できれば盤石です。

チェルシーほどではありませんが、2位のリヴァプールも実り多き前半戦だったのではないでしょうか。46ゴールはプレミアリーグ最多。マネが8ゴール、ララナ7ゴール、フィルミーノが6ゴールでコウチーニョとミルナーは5ゴール、オリギ4ゴール。唯一の純正ストライカータイプであるスタリッジが1発しか決められなくても困らない、多彩な攻撃は圧巻でした。キーマンは、自在性が高いララナとアンカーとして中盤を仕切るヘンダーソンです。パス本数とタッチ数がプレミアリーグNo.1で、走行距離1位のチームの象徴だったヘンダーソンがいなければ、レッズは4位以内にいられなかったでしょう。ダークホース評価だったチームは、今では堂々の優勝候補です。

アンカーとインサイドMFのクオリティに左右されるのが4-3-3ですが、モウリーニョ監督のマンチェスター・ユナイテッドは、ベストフォーメーションを掘り当てるのに手間取りました。開幕時は、ポグバとフェライニの2センター。順調に走り出したかにみえたチームは、4節のマンチェスターダービーで完敗を喫し、次戦のワトフォードにも敗れて長いトンネルに入りました。レスターに4-3-3で快勝したにも関わらず、その後は4-2-3-1にこだわったモウリーニョ監督は、3試合連続ノーゴールがあり1勝もできなかった「暗黒の10月」に上位から脱落してしまいました。

「ファン・ハールやモイーズよりも勝ち点が少ない」と散々書かれた指揮官が再浮上するきっかけとなったのは、キャリックをアンカーとする4-3-3へのシフトでした。これによって元気になったのは、ポール・ポグバ。2センターではゴールが遠すぎ、攻め上がった後のスペースを使われてしまい、トップ下ではマークが厳しく結果を出せなかったフランス代表MFは、キャリックやSBのフォローを得られやすい左のインサイドMFで攻撃力を発揮。後方からのサポートが厚くなったイブラヒモヴィッチは、6試合連続ノーゴールという停滞から脱却し、11月以降の9試合で8ゴールとプレミアリーグを手の内に入れました。守備は決して悪くなかっただけに、ゴールへの道筋が見えたチームは後半戦で巻き返してくるのではないでしょうか。奇跡的な大逆転劇に向けて、ルーニー、ムヒタリアン、マルシアルの完全復活が待たれます。

この稿、長くなりましたので、「プレミアリーグ2016-17前半戦総括~(2)ペップ&ヴェンゲル、12月の苦闘」に続きます。

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“プレミアリーグ2016-17前半戦総括~(1)多彩になった戦略・戦術” への3件のフィードバック

  1. サディお より:

    細かいですがマネは9ゴールではないですか?

  2. のこ より:

    こうしてまとめていただくとあらためて前半を思い出し、楽しくなりました。ありがとうございます。
    マン・ユナイテッドには常に勝ってほしいとは思いつつも、振り返ってみるとチームが作られていく過程で今のメンバーへの思い入れがますます強くなった感があります。まだまだ伸び代も見えるチームの後半戦が楽しみです。

  3. makoto より:

    サディおさん>
    20節までで9ゴールですが、前半戦は8ですね。

    のこさん>
    私も、その感覚があります。ズラタンとポグバが明るくて、モウリーニョ監督に認められたマタが奮闘してくれていて、ムヒタリアンとマルシアルは一時の苦境から脱出しつつあり、キャリックはさすがで…と、今のチームはキャラがいいですよね。

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