予想外のプレミアリーグ7位…一見堅守、実はちょっと危険なバーンリーのデータがおもしろい!
片や放出リストを見ると、最終ラインを束ねていたマイケル・キーンとプレミアリーグ9ゴールのアンドレ・グレイの離脱は激痛で、戦力的な収支は一見マイナスです。私は、バーンリーは今季も降格争いに巻き込まれるはずと高をくくっておりました。開幕戦でスタンフォード・ブリッジでチェルシーに勝ったときも、昨季プレミアリーグ王者のほうに問題があったとしか考えませんでした。
今季の彼らがなかなかいいチームなのではないかと初めて思ったのは、トッテナムと1-1で引き分けた3節でしたが、次のクリスタル・パレス戦で守護神ヒートンがリタイアしてしまいます。代役のニック・ポープはプレミアリーグでの出場経験ゼロ。やはり厳しいか…とさしたる期待をせずに見ていると、アンフィールドのリヴァプール戦で1-1ドロー、エヴァートンに勝って、10節からは3試合連続のクリーンシートで3連勝です。苦手だったアウェイ戦を4勝2分2敗と克服。ダイク監督は、チームにどんな魔法をかけたのでしょうか。試合とスタッツをチェックすると、驚愕のデータが浮かび上がってきました。プレミアリーグで3番めに少ない12失点という数字は、守備力の向上を如実に表しているのですが、1試合あたりの被シュ―ト数16.9は何と1位。バーンリーは、「ボコボコにシュートを打たれながら守り切っているチーム」なのです。
守備の強化のポイントは、急激な成長でマイケル・キーンの穴を埋めきったCBタルコフスキーと、安定感が増したデフール&新戦力ジャック・コークのセントラルMFコンビです。タルコフスキーのシュートブロック数26はプレミアリーグ1位、2位はコンビを組むベン・ミーの24。シュートの瞬間に足元に入ることをさぼらず、経験の浅いGKポープに負担をかけないハードなチェックが1-0勝利4回という結果につながっています。タックル数14.9が下から4番めなのは、無理に当たりにいかずにスペースやシュートコースを消しにいっているからでしょう。1試合あたりのオフサイド獲得数3.3もリーグTOP。「的確なポジショニングによるシュートブロック」「統率されたライン」が実現しているのは、ロートン、タルコフスキー、ベン・ミー、ウォードの4人を完全に固して連携の精度を高めているからだと思います。開幕から13試合は同じ4人。直近の2試合は、ロートンの膝のケガでバーズリーが出ていますが、週末のワトフォード戦からは元の4人に戻るはずです。
一方、攻撃のほうは昨季が15試合15ゴール、今季は14ゴールで変化なし。アンドレ・グレイの後釜クリス・ウッドは11試合4ゴールとまずまずですが、アシュリー・バーンズとサム・ヴォークスは前年よりいいとはいえません。ロングボール1109本はプレミアリーグNo.1、ロビー・ブレイディのクロス123本も個人TOPといかにもイングランドサッカーらしい数字が目立ちますが、オンターゲット46本は15位。ドリブルでの仕掛けが1試合あたり6.1とエヴァートンの次に少なく、「自陣で奪ったらターゲットマンにめがけてロングボールを入れ、落としをブレイディにつないでクロスで勝負」というスタイルを徹底しています。
なるほど、178cmのアンドレ・グレイをワトフォードに売って、191cmのクリス・ウッズを獲ったのは戦術的補強だったわけですね。「できることだけ徹底してやりきる」弱者のサッカーがときに大きな成果を挙げることは一昨年のレスターが教えてくれたわけですが、バーンリーはどこまで粘ることができるでしょうか。野球でいえば「打たせてとる」。リアリティを追求するダイク監督のちょっと危険な堅守のサッカーに、引き続き注目してまいります。(ショーン・ダイク 写真著作者/Kelvin Stuttard)
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仰っている打たせて取る野球やレシーブの強いバレーチームみたいで「こういうのもアリだな」と思わされます。ボール・主導権・ゴールを奪うプレッシングも大好きですが、このように打てるけど点にならないというのは中々アタッカーにはストレスだと思います。これでGKが慣れてきたら…
グッチさん>
凄いですよね、CBコンビ。生え抜きなのもいいです。