イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

デ・ヘアだけではなかった。アーセナルをアウェイで下したモウリーニョ戦術、2つのリスペクト!

「ファンタスティックな試合だった。(ファンとして)スタンドや家で観ていたら、終わるのが残念に思えただろう。私は別だけどね。勝ちたかったから終わるのが待ち遠しかった」「世界じゅうを見渡しても、彼以上のショットストッパーはいない。試合後、世界でベストのGKを見せてもらったと伝えたよ」(ジョゼ・モウリーニョ)

今、思い返してもとにかく素晴らしい試合でした。プレミアリーグ15節、アーセナルVSマンチェスター・ユナイテッド。ラカゼットとアレクシス・サンチェスが絶好調だったホームチームの攻撃は凄まじく、シュート33本、オンターゲット15本。過去、何度もこのカードを観てきましたが、アーセナルに対してこの試合ほどの恐怖を感じたことはありません。2015年10月のエミレーツで、開始早々からエジルにやられて3-0で完敗したときでも、「やられた」とは思いながらも「何点獲られるかわからない」と震えるほどの感覚はありませんでした。モウリーニョ監督のいうとおりです。世界一の守護神が、プレミアリーグタイ記録となる1試合14本のショットストップを見せてくれなければ、守備陣の集中力が切れて、とんでもないスコアでアーセナルが勝っていたかもしれません。デ・ヘアの神のようなセービングに支えられた堤防が決壊する前に、待ち焦がれたタイムアップの笛に救われました。

「デ・ヘアは1億ポンドのGKである」とリスペクトしていた「デイリー・ミラー」は、「的確だったリンガード起用」「ポグバレッドカード」「超人的なデ・ヘア」「ホラーのような夜を過ごしたコシールニー」と、試合のターニングポイントを振り返っておりましたが、アーセナルの強力なアタックと守護神の超絶セービングの次に私が着目したのは「モウリーニョ監督のチームづくりと采配の素晴らしさ」です。

まずは、攻撃面から振り返りましょう。ジェシー・リンガードが先発と聞いて、私はあの試合を思い出しました。2017年10月14日、アンフィールドで行われたプレミアリーグ8節のリヴァプールVSマンチェスター・ユナイテッド。0-0で迎えた63分、ムヒタリアンをリンガードに代えた采配について、モウリーニョ監督はこう語っていました。「クロップ監督が、ホームで勝利を得るべく前がかりになるのを待っていた。リンガードには、そうなったときの攻め方を既に伝えていた」。指揮官は、ミッションに忠実で上下動を厭わない14番の動き出しの早さを買っているのだと思われます。レッズ戦を観ていたプレミアリーグファンからは、ゴール前にバスを停めているようにしか見えなかったのではないかと思われますが、モウリーニョ監督が虎視眈々と狙っていたのは「完璧だったワイナルドゥム、エムレ・ジャン、ヘンダーソンの連携が攻撃的な交代によって崩れること」。相手より先に選手を代えて反応を待つという高度な駆け引きは、おそらくその意図を読んだクロップ監督が前線の選手のみを代えたために空振りに終わりました。

それから1ヵ月半。モウリーニョ監督は、エミレーツでも攻め立てられることを覚悟していたのでしょう。レッズ戦で放ったリンガードという刺客は、リアクションから先にゴールを奪うためにゲームのスタートから前線にポジションをとっていました。今度は、大当たり。マルシアルの巧みな落としを左隅に蹴り込んだ2点め、ポグバとのコンビで文句なしのカウンターを決めた3点めは、指揮官の狙い通りだったはずです。相手のビルドアップを狙うショートカウンターと、奪ったらすかさずルカクに当てて縦に走るロングカウンター。33対8とシュート数では圧倒されながら、4本のオンターゲットのうち3つを決めたマンチェスター・ユナイテッドの攻撃戦術は明確でした。

次は、最後方に目を向けましょう。デ・ヘアがあまりに眩しかったために見逃されがちなのは、2人のレギュラーを欠いているCBの奮闘です。「デイリー・ミラー」は、15本も枠内に打たせた試合だったにも関わらず、リンデロフ、スモーリング、ロホの3バック全員に7点という高評価をつけています。「シュートコースを必ず切る」「シュート態勢に入られたら足元に飛び込む」という守備の基本の徹底度では、モウリーニョ監督のチームとショーン・ダイクのバーンリーが「2強」でしょう。CBの前のスペースを確実につぶし、クロスが入る際には最終ラインに下がって加勢するマティッチのプレイも安定しています。プレミアリーグ最少失点の堅守を相手にフリーでシュートを放つシーンをあれだけ作ったアーセナルの攻撃陣は、最強といっても大げさではないように思えました。3失点が1度もないマンチェスター・ユナイテッドは、これまでも引かされる試合はありましたが、ほとんどのシュートをコースを切るなり足に当てるなりでしのいできたのです。0-2とした後の70分は、心の底から震え続けた特別な時間でした。

こんなにやられるのかと「ショッキングな勝利」でした。しかし一方では、誰が出てもハードマークと的確なポジショニングで失点を最小限に抑えることができ、鋭いカウンターでゴールを奪えるチームを創ったモウリーニョ監督の底力をあらためて感じられた試合でもありました。週末戦うマンチェスター・シティは、やはりアーセナルよりも手強いのでしょうか。あれ以上の攻撃を喰らって初めての大量失点となるなら、「自分たち以上にライバルたちは強くなっているのだ」と認め、今季のプレミアリーグ優勝は(ほとんど)諦めます。あの日のアーセナルが凄かっただけだ。あんな劣勢は、もう観なくてすむ。今は、自分にそういい聞かせています。

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


“デ・ヘアだけではなかった。アーセナルをアウェイで下したモウリーニョ戦術、2つのリスペクト!” への3件のフィードバック

  1. プレミアリーグ大好き! より:

    モウリーニョのチームを退屈なベタ引きのチームと断じることは簡単ですが、管理人様のご慧眼通りチームコンセプトの徹底と試合中の駆け引きは観ていてとても楽しいです。
    如何せんペップのチームも絶好調ですが、モウならきっといつも通り相手の嫌がるサッカーで勝ってくれると信じてます!

  2. yuto より:

    先日の試合のマンオブザマッチは間違いなくデヘアでしょうが、2ゴールを決めたリンガードを称賛する声が少なかったので改めて紹介していただきうれしく感じています。
    リンガードは決してスピードやテクニックなど著しく突出した才能を持っている選手ではありませんが彼のハードワークする姿勢は非常に評価しています。
    アーセナル戦でもルカクが作ったスペースにどんどん入り込むオフザボールの動きがかなり効いていたように見えました。
    長けたものがないゆえに、できることをそぎ落としてボスの指示を忠実に遂行していると妄想すると活躍したときに少々熱いものがこみ上げてきます笑
    リンガードやフェライニのようにチームのために奮闘する選手はモウリーニョ監督と相性がいいですね。
    まずは目の前のCSKA戦をしっかりと戦って、良い雰囲気の中でマンチェスターダービーを迎えられることを願っています。

  3. makoto より:

    プレミアリーグ大好き!さん>
    現地で話題になる「バスを停める」というのは、これ自体はディスってるわけではないんですよね。ご本人もときどきいいますし。おもしろいですよね。アーセナル戦は疲れましたが。

    yutoさん>
    そうですそうです。味方の意図を汲んで動くシーンが多く、マメに上下動してますよね。プレミアリーグで最も走らないチームのなかでは、マティッチとともに良心のような存在です。

コメントを残す