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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

打開策が必要なサッリ、発展途上のエメリ。悩めるロンドン勢の新機軸に期待!

プレミアリーグ開幕から連敗のアーセナルと、5連勝で首位に立ったチェルシー。好対照のスタートを切ったロンドンの強豪たちが、勝ち点1差に接近しました。数字を冷静に見ると、ビッグ6との直接対決を既に4つこなし、1勝2分1敗と互角に戦っているチェルシーに対して、アーセナルは3試合で1分2敗。今週末のノースロンドンダービーと、オールド・トラフォードのマンチェスター・ユナイテッド戦に勝って初めて、エメリ監督のチームは「サッリにほぼ並んだ」と胸を張れる状況となります。

今季プレミアリーグが始まる前に書いた順位予想は、「アーセナル3位、チェルシー6位」としました。当時の記事から、その理由を引用すると、アーセナルのCL復帰は「伸びしろが大きいから」です。ルーカス・トレイラの獲得と、2年めのラカゼット、オーバメヤン、ムヒタリアンがプレミアリーグに慣れて持ち味を発揮できること。メスト・エジルがアーセナルに集中できるのも、大きなプラスと捉えました。チェルシーが厳しいとみたのは、「サッリ監督のスタイルが浸透するまでに時間がかかりそうだから」。6試合で基本布陣を固めた前任者のアントニオ・コンテと同じプロセスを踏むのは、簡単なことではないと案じたのでした。予想は、見事に外れました。サッリ監督は、ジョルジーニョを軸に短期間でチームを仕上げ、試行錯誤を続けたのはエメリ監督のほうでした。

両チームの変化を物語るスタッツを、いくつか挙げてみましょう。サッリチェルシーのポゼッション62.9%とパス成功率88.5%はいずれもマン・シティに次ぐ数字で、パス本数9255本とスルーパス47本、1試合あたりの被ファール数11.9はプレミアリーグNo.1。ジョルジーニョをコントロールタワーとして、敵陣で短いパスをつなぎ、空いたスペースにアタッカーが飛び出すスタイルには、切れ味勝負のコンテ時代には感じられなかった美しさがあります。一方のガナーズは、走行距離No.1、途中出場選手の7ゴール5アシストもリーグTOP。1度もリードしたことがない前半は7ゴールしか決めてないのに、後半は21ゴールもゲットしている追い込み型のチームです。チェルシーのストライカーが6ゴールに留まっているのに対して、オーバメヤンとラカゼットは13発。プレミアリーグ得点王争いのTOPに立つオーバメヤンは、風邪で体調を崩した後の途中出場2試合で4発という驚異的な数字を残しています。

ポゼッションを主張するサッリ監督と、速攻を武器とするエメリ監督は、チームづくりの手法も対照的でした。イタリア人監督は、GKケパと最終ラインを完全固定。全試合先発の選手が7人おり、アザールにケガがなければこの一員に入っていたでしょう。軸となる選手を明確にしたのが、早期に戦術をインストールできた理由のひとつだと思われます。スペイン人監督のほうは、全試合スタメンはベジェリン、ムスタフィ、ジャカの3人のみ。4-3-3、4-2-3-1、3-4-2-1とさまざまなフォーメーションを使い、何としてもゴールがほしいときは前に4枚並べるスクランブルも躊躇しません。自らのコンセプトを体現しようとしたサッリ監督と、相手や状況に合わせて布陣を変えるために多様な戦術を覚えさせようとしたエメリ監督は、前者のほうが早く結果が出たのは当然といえるのかもしれません。

しかし、ここに来てチェルシーに異変が生じました。エヴァートンとトッテナムのジョルジーニョ対策。マージ―サイドは5番へのパスコースを切る囲い込みを徹底し、ノースロンドンは5番にボールが入った瞬間に厳しくプレッシングを仕掛けました。サッリ監督は、どう対応するのでしょうか。ペップのチームがフェルナンジーニョを潰しに来られたら、最終ラインから直接前線に配球したり、ダヴィド・シルヴァやベルナルド・シウヴァが散らす役割にまわったりするでしょう。カンテとコヴァチッチがプレイメーカーとしての役割を果たしきれず、前線に飛び出すプレイが少ないことと、モラタがポストとして機能しないのは大きなネックです。アザールを最前線に置いてボールをさばかせる苦肉の策は、中央に守備の選手を集めてしまい、効果的とはいえませんでした。

ガナーズのほうも3位に迫ったとはいえ、守備が安定したとはいえず、ボーンマスの2トップ対策で採用した3バックも課題が目立つ出来でした。最後の完勝は1ヵ月前のレスター戦で、直近は接戦続き。これといった戦術が確立していないなかで、適材適所を優先させるなら、オーバメヤンをラカゼットの横に並べ、コラシナツとベジェリンがサイドを駆け上がる4-3-1-2もおもしろいのではないかと思います。ホールディングとイオビの成長著しく、エジルやミキがまだまだ本領を発揮していないチームは発展途上ですが、伸びしろが埋まれば、優勝争いに残れる可能性も(ペップの停滞待ちですが…)充分にあると思います。

打開策を求められているサッリ、課題の解決を急がされているエメリ。最後に上にいるのは、どちらでしょうか。1月にチェルシーがストライカーを獲ったり、アーセナルに強力なDFが加わったりすれば、さらに景色が変わります。2強に挑戦状を突きつけたいロンドン勢のせめぎ合いを、終盤戦まで楽しめればと期待しています。

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“打開策が必要なサッリ、発展途上のエメリ。悩めるロンドン勢の新機軸に期待!” への4件のフィードバック

  1. エミリー より:

    おっしゃる通り、アーセナルに即戦力のDF、SBが加入すれば。チェルシーにモラタより使えるストライカーが加入すれば、もっと面白くなるでしょうね。
    ベジェリン、コラシナツをSBに配した4-3-1-2はとても良いと思います。
    後半からコラシナツをダニーに変えて、などやれたら最高でしたが、怪我はどんな感じなのでしょうか?早く良くなって欲しい。
    中での適応が追いつかないアーセナルと、外に適応されてきてしまったチェルシーと、指揮官の采配も見所になりますね。
    我がアーセナルは難敵に加え、日程も厳しい12月に入ります。
    スパーズ、ユナイテッドの連戦を引き分けで乗り切り、格下にきっちり勝てれば御の字です。
    大金星を目指すより、食らいついていけー!

  2. パチ より:

    アーセナルはベンゲル長期政権の後ですから、今季は基盤作りが最優先で、チェルシーのような性急なチーム作りをすると、後で痛い目を見ることになります。
    1月も特に選手を獲得する必要はなく、必要な選手を見極めて、来夏に獲得すれば良いと思ってます。
    いまは、いろいろな選手を使って、20数名のラージグループとして成長を促しており、それが上手く行っているので、このまま同じやり方を続けて欲しいですね。
    ちなみに、エメリは、セビージャ時代のような守備戦術の構築には、まだほとんど着手していないので、選手を獲得しなくても伸びしろは十分にありますよ。
    ですから、4位以内の可能性は十分あると思っていますし、EL優勝もCLから回ってくるクラブ次第ではあり得ると思います。
    逆にチェルシーは、サッリなので今後は厳しいと思います。
    彼は、ナポリでも選手を固定させて戦ったので、シーズン終盤にパフォーマンスが落ち、何のタイトルも取れませんでした。
    日程の厳しいプレミアでも同じ事をやっているので、このままでは、シーズン終盤に痛い目を見るでしょう。

    —–
    アザールトップになってからの十数分見返しましたけど、個人的には問題はあるけど結構面白いと思いました。
    守備を集めるという事は引き付けられるということなので、例えば左サイドに流れて引き付けて空いたPA内のスペースにカンテが飛び込んでいったシーンなんか良かったなと。もう一つ裏でフリーになってたペドロも良かった。

    ただ問題は相手の注目をアザールが集めるように味方もアザールを見すぎていたこと、ですかね…。アザールが右によってきてその裏をバークリーが飛び出しているのに見てなかったり、ウィリアンも中に入りすぎてたり、ここ無理だろって所でもアスピやカンテがアザールにパス出してしまったりと、チームとしてはあんまりこれ練習してねーなって感じでした。
    アザールの動きとそれによって生じたスペース等をどう利用するかチームとして共通認識が出来てくれば、メッシゼロトップみたいに結構面白いかなと。
    メルテンスのトップ起用も確かこの時期ぐらいだったと思いますけどどうなりますかね…。

  3. プレミアリーグ大好き! より:

    すばさんも仰っていますが、サッリはナポリ時代と同じ轍を踏みそうですね…
    過密日程に怪我人が重なると大崩れもあるのではないでしょうか。

  4. プレミアリーグ大好き! より:

    ラカとオバメとエジル3人を適正ポジに並べた4-3-1-2が一番いいでしょ、っていう意見をこのブログに限らず時折見かけますが、そんな単純な者でもないと思うけどなぁと。
    攻守で可変が当たり前で、それぞれに制約と役割を与え、相手との兼ね合いも含めての戦術なわけで。そうやって考えていくと、トレスボランチなのかダイヤモンドなのかわからないけど、現代ではほとんど見かけなくなった4-3-1-2を無造作に主張する意見は絵空事好きな人なんやなぁぐらいにしか。

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