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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

敵も味方も否定したPK、406回観ても判断不能の微妙な接触…プレミアリーグのVAR事件簿!

先週末のプレミアリーグは、勝負を左右するVARチェックが目立ちました。フライデーナイトのサウサンプトンVSレスターは、12分の先制ゴールのシーンで、アヨゼ・ぺレスの脛をスパイクの裏で削ったバートランドが1発退場となりました。10人になったセインツは守備が完全に崩壊し、プレミアリーグ史上初のホーム9失点を記録。監督、スタッフ、選手ら27人が当日のサラリーをクラブが運営する財団に全額寄付するという「みそぎ」を強いられました。

土曜日のハイライトは、VARが逆転のトリガーとなったブライトンVSエヴァートンです。77分にボックス左でロングフィードを追ったコノリーが、マイケル・キーンと競り合いながら転倒。VARはCBが足を踏んだ瞬間をはっきり映し出しており、モペイが中央に蹴り込んで2-2の同点に追いつきました。今季導入の新しいシステムがなければ、おそらくPKにはならず、ホントに痛くてグレン・マレーに後を譲ったコノリーはイエローカードでダブルパンチとなっていたかもしれません。ブライトンは追加タイムにディーニュのオウンゴールで劇的な3ポイントをゲットし、プレミアリーグ14位に浮上しています。

この2試合のVARチェックは、映像を見れば誰もが納得するジャッジで、試合展開に影響はあれど、試合後の議論にはなりえませんでした。さて、問題の日曜日です。ノリッジVSマンチェスター・ユナイテッドとアーセナルVSクリスタル・パレスは同時刻開催。かつては常識だったホームタウンデシジョンなどなかったかのように、いずれの試合もアウェイチームに利する笛が鳴りまくりました。

キャロー・ロードの1発めは0-1の25分。マルシアルの縦パスを追ったダニエル・ジェームズとゴドフリーが絡んだシーンです。何度リプレイしても、ゴドフリーは「冤罪被害者」として映し出されています。マン・ユナイテッドのウインガーと接触した瞬間、背中を向けてスライディングし、相手のプレイに影響を及ぼさないようにしたCBに、間近で見ていたFIFA国際レフェリーのアットウェルさんは即座にセーフのジェスチャー。プレイは続けられ、スローインとなったタイミングでVARが入ったのは、「念のため」だとばかり思っていました。

ボールがタッチラインを割ってから1分50秒。アットウェルさんはPKを宣告し、ゴドフリーはイエローカードをもらってしまいました。ラシュフォードのPK失敗について、試合後に聞かれたスールシャール監督はこんなジョークで返しています。「I’d be unhappy to get the first one against me, but Marcus did the honourable thing and missed it.(最初の1回をもらうのは不幸なことだ。マーカスが名誉ある行い、すなわちミスってくれたね)」。ノリッジのファルケ監督は、「ウチがFKをもらうのが正しい」とコメント。フットボールの世界で正しいのは、常にレフェリーですが、2人の監督とPKキッカー(?)がジャッジを否定する珍しいシーンでした。

41分に、フレッジのシュートがキャントウェルの腕にヒットしてPKとなったのは妥当ですが、こちらはマルシアルが不名誉なミス。1-3でアウェイチームが勝ったゲームは、VARが関与しないファインゴールで勝負が決まりました。一方、2点リードを守り切れずにドローとなったアーセナルは、より微妙なジャッジに泣きました。チャンバースがザハを引っかける格好となった28分の失点は、「縦に抜けようとしているドリブラーに足を出して対応しようとしたSBが悪い」と納得することができるでしょう。難しい判断となったのは、86分にこぼれ球を叩き込んだパパスタソプーロスのゴールシーンです。こちらは、「チャンバースが、後ろからミリヴォイェヴィッチの足に接触した」という説明に折れないグーナーがいるのではないかと思われます。

「レフェリーとVARの対応について理解できない」と語ったエメリ監督は、レフェリングの基準がまちまちだと指摘。「VAR in Premier League: ‘Bar was too high, now it’s too low’(プレミアリーグのVAR~高すぎたバーは、今は低すぎる)」と題した記事を配信した「BBC」は、「クヤテとケーヒルのコンビがチャンバースを肘で突いたように見えた」「パレスが抗議しているようにも見えなかったのに(実際は、決まった瞬間に周辺にいた全員が挙手してアピール)、チャンバースがファールを犯したと見做した」「パパスタソプーロスのスコアリングからVARチェック終了まで2分以上かかった」と、ジャッジ自体と運用の両方を批判しています。

「VARはアドバイスはするが、最終的に決めるのはレフェリー」としているプレミアリーグで、プレイによっては2分以上のチェッキングタイムを要しているのは由々しきことですが、アーセナルの幻のゴールについて「406回見たけど、明確にどっちとはいえない」と困惑を隠さなかったピーター・クラウチに共感します。デジタルに判定できるオフサイドには非常に有効なVARも、接触の強さ、同時に複数個所が当たっているときの状況判断など、さまざまな「解釈」が入るPK絡みのシーンは満票で決議とはいきません。そして、もうひとつ。エメリ監督の次の指摘に深くうなずいてしまうのですが、いかがでしょうか。

「レフェリーがあのアクションをテレビで観れば、ファールとはいわなかったはずだ。そして、(VARの)テレビがあるオフィスで誰がジャッジしているのかを私は知らない」

ジャッジの責任者は、必要な材料をすべて直接チェックしておらず、ジャッジに必要な材料を得ている人間には権限がない…明確にジャッジできるのは、「VARを巡る議論はこれからも続く」ということだけです。

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“敵も味方も否定したPK、406回観ても判断不能の微妙な接触…プレミアリーグのVAR事件簿!” への4件のフィードバック

  1. じゃこ より:

    マンチェスター・ユナイテッドvsリバプールのアトキンソンのVAR判定も微妙でしたね。
    プレミアは「最終判断は主審」って強く言ってる割には、他のリーグみたいに主審が最終的にモニタ観てのチェックを行わないのが気になります。
    せっかくVAR導入したのに判断基準が曖昧で、逆の論争になってしまうのは本末転倒ではないかと思います。

  2. プレミアリーグ大好き! より:

    わたしも強く言いたい、主審が一度映像を確認すべき、と。
    流れの中で角度が悪かったり、見落としてしまったシーンをもう一度見て判断するのは主審であるべきでは?
    インカムの向こうの誰かが決定を覆すというのはどうなんだろう?
    判定の責任がどこにあるのかもうやむやになってしまうし、プレミアだけ頑なに映像確認しないというのは意味がわからない

  3. ルニキ より:

    主審がちゃんとVARを自分の目でチェックして、その上での判定が微妙なのは仕方ないと思っています。よく試合後に問題のシーンを取り上げて、元審判の人達がコメントしたりと昔からありましたが、そのコメントや判定だって人によって違います。
    VARはあくまでも、「主審がちゃんと見ることができなかったけど、ちゃんと見てれば判定は違ってた」場合に正すためにあると思ってます。微妙な判定のことまで言い出したら、ちょっとユニを引っ張っただけとか、腕が多少相手に当たっただけのも全部ファールをとらなければいけなくなります。
    とにかくまずは、VARを主審がちゃんと確認して、そこから先は主審の判断に委ねればいいと思います。

  4. プレミアリーグ大好き! より:

    var自体はいいシステムだと思いますが、使う基準が曖昧過ぎますね。
    テニスみたいにチャレンジ制度を導入するべきなんじゃないかと思います。

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