偏愛的プレミアリーグ見聞録

「ジェイドン・サンチョを取り逃したら、ウスマン・デンベレ、ルカ・ヨヴィッチ、イスマイラ・サール、エディソン・カバーニの4択」。プレミアリーグのビッグ6で、この夏の投資額が最も少ないマンチェスター・ユナイテッドは、ラスト4日で納得の布陣を揃えられるのでしょうか。「スカイスポーツ」が、ドルトムントのヤングスターを断念した際のターゲットについて、それぞれ獲得のハードルは低いとレポートしています。プレミアリーグのクラブからの目線で、彼らを引き入れるメリットとリスクを整理してみましょう。

バルセロナのウインガー、ウスマン・デンベレは、23歳という若さとポテンシャルの高さが魅力。ロナルド・クーマン監督が、「私は彼を頼りにしているけど、どうなるかはクラブと本人次第」と語っているのは、財政難のバルセロナがキャッシュを得たがっているのを理解しているからでしょう。新天地でブレイクする可能性はあるものの、2019-20シーズンのラ・リーガ5戦1ゴールというスタッツは不安材料です。

シーズンの大半を棒に振る原因となったハムストリング痛と筋肉の裂傷は、完全に癒えたのか。ゲーム中毒ゆえの遅刻癖が、チームメイトとの軋轢を生み出すのではないか。2015-16シーズンにレンヌで記録したリーグアン26試合12ゴール5アシストを再現できるなら魅力ですが、獲得はギャンブルといわざるをえません。

昨季のラ・リーガで17試合4ゴールと振るわなかったルカ・ヨヴィッチについて、「スカイスポーツ　ニュース」のダルメシュ・シェスさんは、「ジネディーヌ・ジダン監督が旅立ちを邪魔することはない」とコメントしています。彼のネックは、フランクフルトをヨーロッパリーグ準決勝に導いた2018-19シーズン以外の実績が乏しいことと、バルサのウインガーに負けず劣らずトラブルが多いことです。

デンベレがゲームオタクなら、ヨヴィッチはパーティーボーイ。コロナウイルスのパンデミックを気にすることなくパーティーに参加したり、ラ・リーガ再開時のプロトコルを無視して他クラブの友人とバーベキューに興じたりする姿を、現地メディアやサポーターに批難されました。負傷が気になるデンベレと、プレミアリーグに馴染めず終わるリスクがあるヨヴィッチは、獲得するとしても「サンチョ待ちの1年をつなぐローン」となるのではないでしょうか。

2018-19シーズンにリーグアン21試合18ゴールというスタッツを残しているカバーニは、実績は申し分ないものの、33歳という年齢が気になります。昨季の14試合4ゴールを衰えと見るか、一過性のスランプと笑い飛ばすか。ダルメシュ・シェスさんは、「キャリアの晩年というタイミングだけに、サラリーと契約の長さを考慮する必要がある」と警告しています。

トップクラブで過ごすのはこれが最後と腹を決めたストライカーが好待遇を要求してくれば、フリーエージェントだから安く収まるともいえなくなるというわけです。ラダメル・ファルカオやアレクシス・サンチェスで苦い経験を重ねてきたクラブが、同様のリスクを取るとは思えないのですが…。小さくないリスクがある3人のアタッカーの獲得を断念した場合のみ、イスマイラ・サールが所属するワトフォードにアプローチするのではないかと思われます。チャンピオンシップの選手の獲得は10月16日までとなっており、デッドラインデーを終えてから11日の猶予があります。

マンチェスター・ユナイテッドが補強を検討している他のポジションでは、メートランド＝ナイルズやアレックス・テレスの名前が挙がっていますが、「マンチェスター・イブニングニュース」は、「アーセナルはなし、ポルトはあってもぎりぎり」とレポート。前線が決まるまでは動かないようです。サンチョか否か。デンベレなら完全移籍か、ローンか。希望はサンチョ、予想は…やめておきましょう。（エディソン・カバーニ　写真著作者/Анна Нэсси）